5ー8 

 oneとのライブの件を、会社に話を進めてもらいつつ、デビュー3年目。


初めて、ライブツアーをすることができた。

何もかも初めての経験。

去年の武道館って、1つの会場でやるのと違って、セットを組み立て、終わったらバラす作業。

それを各会場に合わせて完璧に作り上げてくれる。

俺たちだけでRealは成り立っているんじゃない。

会社の各部門の人たちが総出でRealのツアーを作り上げてくれている。

全国15ヶ所を3ヶ月で廻るツアー。

俺は、国内を旅行したことも全然なかったから、初めて行く県ばかりで、ご当地グルメとかを食べさせてもらったりして、超楽しかった。

なんとなく、高校の時の修学旅行を思い出した。

龍聖は、親が転勤族でいっぱい引っ越ししてきたって言ってたけど、行くところ行くところで、同級生って人たちが顔を出してくれたりして、いつもより笑ってた。

とにかく、初めてのツアーはとても楽しかった。


 そのツアー中、移動の車の中で、木村さんが

「この間、佐島さん来てたじゃないですか。あ、音楽プロデューサーの佐島允彦さん。

コーラスはつけないのかって聞かれましたが」

誰に向かって言ってる訳でもなかったけど、俺は助手席に座っていたから、それに答えた。

「コーラスってやっぱ必要ですか?」

「あ、いえ、私は専門家ではないのでわからないんですが、今まで龍聖さんの歌声だけで十分だと思っていたんですが、佐島さんに言われると、あぁそうか~って思いまして」

「ライブとかでコーラスの人を外注して入れるってことですか?」

「いえ、そうではなくて。私は、桂吾さんがやられたらいいと思っています」

と、木村さんが言った。

「えっ?俺?ムリムリムリムリ」

「どうしてですか?いつも、桂吾さんの仮歌いいなぁと思ってましたよ。龍聖さんが歌うと、また別物になりますけど、アルバムに桂吾さんバージョンを入れるのもいいんじゃないかなって、個人的には思ってましたよ」

「は?ムリムリ!龍聖と比べられちゃ困るよ~!ひでー歌!!って言われちゃうよ」

びっくりして、早口で喋った。

「ほら!だから言ってんじゃん!桂吾の仮歌いいって!」

一番後ろの席で横になって、眠ってると思ってた龍聖が起き上がって言った。

「ってゆうかさ、外注は入れる必要ないと思う。桂吾もいいけどさ、悠弥はよくカラオケとかで俺のモノマネして歌ってくれるけど、俺と声質似てるから、今 CDの方で俺セルフコーラス入れてる部分なんて悠弥が歌ったらなんの違和感もなく聴けると思うし、大輝の声は低音が超シブくてかっこいいし、逆に瞬は高い声出んじゃん!俺の上のキーくらい出るもん。だから、それぞれのいいとこ出しながら、コーラス入れてみたらいいんじゃないかな~」

珍しく龍聖がすげー喋った。

「龍聖、おまえ前々からそう思ってたって感じだな!そんならもっと早く言えよ!」

大輝が笑って続けた。

「前にも、レコーディングの時に、別のプロデューサーの方にもコーラスのことは言われてました。その時は、龍聖のセルフコーラスの方がいいだろうって、瞬と話してそのままスルーしてましたが、今回は検討してみます。

木村さん、ありがとうございます」

と大輝が言った。


その日の夜、みんなで話して、早速次の日のライブで少しコーラスを試してみようということになった。

次の日、リハでやってみたら、意外にすんなりとみんな歌えた。

ライブ本番も、なんかすげー気持ち良かった。

コーラスだけでも、なんか歌ってる感があって、マジで気持ち良かった。

次に作る曲からは、コーラス部分も意識して作ろうと思った。

キレイ目にハモるだけじゃなくて、ラップ調にしてもいいな~。

俺ら、まだまだ成長の余地ありだな。



 


 






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る