5ー5 

 地下の駐車場で、マネージャーの木村さんの車に乗り込んだ。

「木村さんお待たせして、すみませんでした」

「いえ、大丈夫ですよ~。桂吾さんお疲れ様でした。次は、テレビ局での番組収録ですので、局で3人と合流します」

「了解」

「大丈夫かよ?」

瞬がスマホの画面を見ながら俺に言った。

「なにが?」

「言い寄られてたけど」

「あぁ」

「誰に言い寄られてたんですか?」

運転しながら、木村さんが聞いてきた。

「宮野星愛」

「あぁ。あはは。桂吾さんをお気に入りみたいですね。オファーいっぱいきてましたから。

いつも、桂吾さんはスケジュールいっぱいいっぱいだったんで、お断りして悠弥さんに行ってもらってましたけど」

「あぁ。避けてたでしょ!って言われましたよ」

「あはははは~!すみません」

「木村さん、桂吾を野放し状態だけど、よく問題起こさずに9年過ぎたな~」

「桂吾さんは、うまくあしらえるので何も心配してないんですけどね」

「おっ!木村さん!ありがと!」

「木村さん、さすがですね!桂吾、手のひらで転がされてるよ」

「あぁ居心地良く、転がらせてもらってるよ」

「9年か~、あっという間だったな」

瞬は、俺の顔を見てしみじみ言った。

「そうだな!やりたいこといっぱいやらせてもらったな。さっき、聞かれて思い出深い出来事を1つに絞るなんてムリって思ったもんな」

「あぁ。でもさ!夢は叶えたけど、いざその夢の頂上に登ってみたら、周りにはまだまだ高い山がいっぱいあって、その高い山を目指したくなんじゃん!」

「おっ!さすが瞬!昔からそうだけど、高みを目指すよな~!夢に終わりはないってゆうのか、夢の更に先を目指すってことね~!

♪~~~~

そうゆうの書くか!!」

「桂吾となら、Realなら、できると思ってるから」

「あぁ!俺も、そう思ってるよ!結成して10年でデビューして、今デビューから10年目を迎える。まだ、ツーステップくらいなもんだろ!

まだまだこっからだな!!」

「あっ!木村さん!例えばの話ですけど、結婚したいって言ったら、事務所的に却下ですか?」


えっ?と木村さんは、後ろを振り返りそうな素振りを見せて、またしっかりと前を向きハンドルを握った。

「瞬さん、そんなお相手いたんですか?」

「あはは!いないです、いないです。例えばの話」

「そうですね~。密かに入籍するとかじゃなくて、大々的に発表するってことですよね~。

私の一存じゃ答えられませんが、皆さんならOKが出るんじゃないでしょうかね~。

……う~ん、あ~、いや、う~~ん……そうですね~

桂吾さんと龍聖さんは、ちょっと微妙な気もしますが……」

「俺ダメなの?」

「ダメってことはないでしょうが、事務所的には反対意見もでるでしょうね」

「俺と龍聖ね……」

俺は、瞬と顔を見合わせた。

「約束の10年だから、反対はあっても押し通したいな」

瞬は、9年前のあの時も、龍聖と理彩子の結婚を応援していた。

「龍聖さんですか?」

「はい。また、大輝から話があると思うので、一応まだ胸にしまっておいて下さい」

「はい。わかりました」


結婚は10年後だ!って、そんな話をしたの、もう9年前かよ!!

マジではえ~な~!!

俺は、こんな女っ気なく、仕事だけして9年経っちまった。

マジで忙しかったし、でもそれ、すげー楽しくて、女なんていなくて平気だった。

運命の人にも 出会うことなく9年経っちまったな……あはは。

この9年間を、9年前に想像できただろうか?

目まぐるしく過ぎる この毎日を。

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