REAL 2

彼方希弓

第5楽章 5ー1

 

 Real 

 デビュー9年目 12月



♪~~~~

降り積もる 真っ白い雪が

オレの心を埋め尽くして

もう 溢れ出しそうだ


積み重ねた 汚れなき想い

オレの心を埋め尽くして

もう 堪えられそうもない


忘れたら楽になれる?

諦めたら楽になれる?

でもこの記憶

カラダに染みついて

オレはひとり 悶え苦しむ


なんでもない

たわいもない

そんな出来事に

いつまでも心囚われ

バカらしいと嘲りながら

オレはひとり 悶え苦しむ


春が来て

雪が消えるのは

そんなこと わかっていた

だけど 心の雪は残り

いつになっても とけない

オレはひとり 悶え苦しむ


いつになれば 楽になれる?

どうすれば 楽になれる?

正解を見つけられぬまま

また 春が来る

オレはひとり 悶え苦しむ


LaLaLaLaLa…………

LaLaLaLaLa…………

LaLaLaLaLa…………

心の雪は 消えない

また 春が来る




 「どうかな~?これ、シングルとしては弱いかな?」

「いや、いいんじゃね!!」

「いいと思うよ!!」

瞬と龍聖の声がピタッと重なって笑った。

「歌詞だけ見ると、まったく希望の光は見えないって感じだけど、メロディがキラキラしてる。

AOR感がいいな。これだけの暗い歌詞をふんわりと優しく仕上げてるのはさすがだよ」

「ってゆうか、桂吾が歌うってのは どう?」

「龍聖!マジで、意地悪なこと言うなよ~」

「意地悪じゃなくて、ほんとに、仮歌の このまんま桂吾が歌ってもいいと思って」

「まっ!それもありっちゃありだけど、Realのシングルで出すんだから、やっぱボーカルは龍聖が歌った方がいいだろ」

と、瞬が笑いながら言った。

「龍聖さ〜チョイチョイむちゃ振りするからな〜!ビビるわ!!」

「ってゆうか、これ、曲名書いてないじゃん」

楽譜をヒラヒラさせて瞬が俺を見た。

「あぁ。ちょっと迷ってる。(仮)では、ワイ、ユー、ケー、アイでYUKIって書いたんだけど」

「ゆきって、ガッツリ曲名にゆきちゃんの名前つけたってこと?」

「う〜ん、ダメかな?……それか、漢字で雪か、Snow とかって……

こんな10年以上経ってて、未だに未練タラタラみたいでキモいって思われっかな?とか……」

「ゆきちゃんは、そんな風には思わないと思うけどな」

と、龍聖が言った。

「今回、Realデビュー10年目の記念アルバムじゃん!1作目のアルバムのLOVESICKNESSの続編のオールラブソング。

あの時作ったラブソングとは、9年経ってだいぶ気持ちも変わったってゆうか、落ち着いたって思うんだよな。

だけど、改めてオールラブソングって10数曲書こうとすると、やっぱり思い浮かべちゃうのは彼女のことだけで、ラブソングの題材が彼女しかいないって、なんかなんの成長もないのかなって笑えんだけど。

そのアルバムにも入れる予定の先行シングル。

ガッツリYUKIって言っちゃうのは、やっぱ直接的過ぎるかな?」

「桂吾がこの9年間、ゆきちゃんのことに表面上触れないでいたことも、でも一途に想い続けてきたことも、俺たちはよくわかってるから。

曲名につけたっていいんじゃないかって、俺は 思うよ」

「サンキュー!瞬」

「曲の感じからして、Snow の方が合ってるかもだけど、YUKIっていいじゃん!曲紹介とかでゆき!ゆき!言えるから」

と、龍聖は笑った。

「あはははは!!そうだな。

あと、歌にかぶせて、英語で喋り倒したいんだけど、いいかな?」

「なんて?」

「あ、まだ考えてないけど、うっすら、なんか喋ってる?くらいの感じで、歌詞カードにも載せないで、聴き取れないくらいの感じでさ。独り言ってくらいに」

「あぁ、そうゆうアレンジあるよな。いいんじゃね~雰囲気でて。まぁ、その辺り、大輝の了解も必要だけどな」

「あぁ。説明するよ」



 俺、須藤桂吾はロックバンド Real で、作詞作曲をしている。

担当楽器は、ギター。

あと、ピアノとバイオリンと、あと何だろう。

大抵の楽器は、ちょっと習うとそこそこ出来ちゃう。

再来年のアルバムに入れる予定の楽曲で、和楽器だけを使って、一曲仕上げようって話しで、俺は今 琴を教えてもらっているけど、なかなか楽しい。

今日は、作ってきた曲の仮歌を、瞬と龍聖にスタジオで聴いてもらった。

大輝と悠弥は、別の仕事に行っている。


2月14日がRealのデビュー記念日。

あと、2ヶ月で丸9年。そして、10年目が始まる。








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