手紙『1』
拝啓、奥村
君が、この手紙を読んでいるということは、俺はきっともうこの世にはいないんだろうね。
俺は今まで君に何をしてあげられただろう? してやれただろうって、今になってすごく気になるよ。だけど、そんな俺だけど、言わせてほしい言葉があるんだ。
俺の想いを。懺悔を。どうか、聞いてほしい。
それから――、いまさらだけど、
先にいってしまう俺を、どうか、許してほしい。
俺は、小さい頃から心臓病を患っていました。
それも重い心臓病です。手術をしても治る可能性が低いと言われ、二十歳になるまで生きられないと言われ続けていました。
でも、二十歳になれました。大人になれました。
生きることが、できました。
それはひとえに海音と、兄ちゃんと、俺に関わってくださったひとみんなのお陰です。感謝しかありません。
本当に、ありがとうございます。
君には、重い心臓病だったこと、ずっと隠していました。
高校最後の冬、もう君とは会わないと、終わりにしようと伝えました。
別れを告げようと、俺なりの覚悟を持って。
君に嫌われようが何を思われようが、君に負担を掛けたくなかったから。俺はもう、会わないつもりだったんだ。
でも、本当は辛かった。
君が言っていたように、自分に「ふざけるな」と言いたくなったよ。
勝手にいなくなって。
勝手に好きにさせておいて。
そして、君の前から、俺は逃げたんだ。
君が泣いていたのを分かってはいたけれど、それでも俺はこれ以上、君に迷惑を掛けたくなくて君から離れました。
離れたのに、覚悟が足りませんでした。
結局、海音には助けられてばかりでした。
もう生きることに疲れた俺に、君は「生きろ」と言った。
不思議なもので、海音の言う言葉には力が宿って、本当にこれからはちゃんと生きてみようと思えたんだ。
もう逃げないと、
決めることができたのは海音、
君のお陰です。
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