幼馴染のお嬢様が俺に会うために留学から帰ってきた件。
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嬢、帰りたつ
「へー。結構変わってるわね。」
黒く光り輝く機体から出てきて彼女は言った。
目先には青で塗りつぶされた空と一筋の雲。縮みきった体を伸ばしながら手を広げ、体全体で風を感じる。
「あいつも変わってるのかしら。」
懐かしむように細めた目には期待が浮かんでいるように見えた。
「さあ、どうでしょうね。あれから三年。こんな風に、時間が経てば人も環境も変わるものです。」
もう前の面影をちっとも残していない。そう言いたげに、手で太陽を遮り、周りを見渡す。
「彼も年頃。彼女の一人や二人はいるんじゃないですか?」
黒を基調とするメイド服を身にまとう銀髪の彼女は顔を手で仰ぎながら、主人を煽るように唐突にそう言った。普段はクールなメイド服の彼女の、少し上がった口角を視認できていたなら、揶揄われていることなどすぐわかっただろうが、メイドは隙を見せない。
客観的に見てもメイド服が似合う少女だが、その姿でジェット機に乗る必要はあっただろうか。
「ぇ……いや、……そんなことは…ないでしょ。」
夏の風を浴び、清々しい笑顔を浮かべていた彼女だが、唐突に顔を曇らせる。
思ってもいないことを唐突に突かれ反論しようとした彼女だが、自信を無くしたのか弱弱しく呟いた。
「ふっ……っ…はい。彼に彼女はいませんよ。」
メイド服の少女は笑いをこらえながら答えた。どうやら答えは初めから分かっていたようだ。口を軽く手で隠して笑うメイドは、仕草から相当洗練されたものだと読み取れる。
「騙したわね!!」
「いえ、お嬢様の反応があまりに可愛らしいので」
揶揄からかわれたと分かって目を吊り上げる彼女だが、彼に彼女がいないという事実に頬を緩ませてしまっている。これには一度笑いをこらえた彼女も声を漏らし、腹を抱えた。普段なら絶対にしない笑い方だが、久しぶりの日本と時差ぼけで気が緩んでいるのだろう。
何がおかしいのよ!と抗議する姿勢を崩さない彼女と、涙目で言葉を返すメイドは、長時間のフライトの末、もうすぐ本格的に夏を迎える日本に降り立った。
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