恵まれている内に死ぬべきだ。まだ恵まれてる内に、早く、間もなく、迅速に、死んでしまうべきなのだ。今より更に辛くなる前に、死にたいと思う事すら忘れてしまう前に、死にたいと常に強く思い続けられている内に、死んでしまうべきなのだ。

 僕はもう早十八である。もう目前に、大人という、社会という無間地獄が、大口を開けて渦巻いている。

 もう、当たり前を、当たり前にこなせないと本当に生きていけなくなってしまうんだ。会社、金、人間関係、ビジネス、労働、上下関係、ああこれだけ挙げただけでも息苦しいな。

 社会は、スマートな、機能美に特した人間だけを求めている。個性は必要とか何だとか、それを生かすって結局周りから逸脱した能力を持ってないと駄目じゃないか。一流だけが許される。三流に自由は無い。

 無能なのだからせめて言われた通りにはやりなさい、できなければ死になさい。

 ずっと、含み笑いでその意味を孕んだ言葉を浴びせられ続けるのだ。

 ああ、無能なのだ僕は。生まれてきてごめんなさい。取り柄などひとつもない、ただ野生のネズミのように敏感で、そして薄汚れて醜い人間が僕だ。

 ああ、それでも、生まれてくるべきではなかった僕だが、そんな僕だが、それでも僕は自分を幸せ者だと思う。かけがえのない友が居るのだ。好きでたまらない人も居るのだ。そして、彼らも僕を友だと認めてくれている。なんて幸福なのか。これこそ僕が生まれてきた意味そのものなんだと思う。

 だが、だからこそ、僕はもう今の内に死んでおきたいのだ。

 夢も糞もない哀れで矮小な僕の、そんな僕の生きる理由は彼らの存在だけだ。

 いや、夢ならあるのかもしれない。

「ずっと一緒にいたい」

 そんな子供じみたそれが僕の夢なのだろう。

 だが、それはできない。

 きっと彼らも、大人になって、仕事で、金で、男で、女で、色んな世界を見て、色んな方へ行って、動けない僕はただ取り残されてしまう。居なくなってしまう。

 僕は、ただ寂しいだけなんだと思う。結局の所、ガキのそれのように無謀な願いが叶わないから、ただのわがままできっと僕は死のうとしているのだ。


 ああ、何でこうも人間らしくないのだ。普通にそこらの人間みたいに、当たり前に朝に起きて、当たり前に学校に行けて、当たり前に仕事に行けて、当たり前に話せて、当たり前に笑えて、当たり前に動けて、当たり前に当たり前に当たり前に当たり前に当たり前に、何で何で何故何故何故、何で僕は普通じゃないんだ。何でこんな皆が考えないような、気にもとめないような悩みに命をかけて悩んでいるんだ。そして何で死のうとしているんだ。

 ああ、僕もそれなりに普通なら、少しでも人間らしかったのなら、もっと笑えて、楽しく話せて、それなりに勉強もして、将来の事も少しずつ計画していってて、友ともっともっと楽しく笑えて、好きな人をもっと真正面から愛せて、もっとまともに、何で僕はなり損なったんだ。

 ああ、何でこんな。

 ああ、もう十八。

 死んでしまおう。

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死に花 常雨 夢途 @tokosame_yumeto

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