生物学的弱者のラブコメ
@MOB150
生物学的弱者と強者の最悪な出会い
ぼくは生物学的に弱い。
別に成績がめちゃくちゃ悪かったり、運動が極端にできなかったりはしない。
しかしぼくは生物学的なカーストにおいて人間の下に位置する存在であることは確かである。
そう感じ始めたのは小学三年生。
ある日妹が初めて家に友達を連れてきた時のこと。
もちろんその妹の友達より、ぼくの方が年上である。
普通ならばある程度緊張されたり、敬語を使われたりするものだと思うしその時まで僕もそうだと思っていた。
しかし現実は実に無情なもので僕が年上にもかかわらず名前を聞く前からいきなりタメ口をつかい、さらには急にいろいろなことをねだるように命令してきた。
これは決して親しいからなどではなく完全な初対面の相手にである。
気が弱いぼくはその時は言いなりにならざるを得なかった。それだけではその友達がただちょっと素行の悪い子だというだけになるが、そのようなことが何人も続いた上、その友達はほとんどが学校では優しい優等生らしい。
これまで同級生に舐められることはあったが、ただぼくが弱ったそうだからだと思っていた。
しかし、小学六年の時、そのことのおかしさや重大さにやっと気づき妹の友達の一人になぜそんな年上に対して上から目線なのかと尋ねると、
「なんとなく初めて見た瞬間にこいつは雑魚いって本能で感じたんだよ。」
ひどくない?
どうやらぼくは人間より下のカーストにいるらしく、初対面の人に本能でぼくのことが弱いと感じてしまう力がある。全くと言っていいほどいらない能力である。
ぼくもずっと気のせいだと思っていた。というかそう思いたかったが毎度毎度人と関わるたび初対面とは思えないほど舐められるのだ。これはもう認めざるを得まい。
それはともかくそれからぼくはできるだけ命令を無視したりタメ口を注意するようにした。
どうやら初対面でついタメ口使ったり命令をしたりするのはほとんどの人が本能でついしてしまうらしく、注意したりや命令を聞かなかったりするとすぐ正気に戻り、謝ってくれることがわかった。なので案外すぐ命令してくる等らは命令するのをやめ(それにより関わりも全くなくなったが)ぼくの生活は平穏を取り戻し、自由に生きる生活が続く!と思っていた。
それはまたもやある一人の妹の友達によって壊されることとなる。
高校二年、ぼくは私立の中高一貫校であり、ここ滋賀県ではそこそこ名門校である、四宮高校に見事中学入試で合格し、自由気ままな生活を送っていた。
安定した成績、いい友達(作るのに苦労した)、何一つ悩みもない幸せな毎日である。はずなのに.....
「なっなんですか?ぼくに用って?」
ぼくは今、校舎裏にて不良グループに絡まれている。
しかも卑劣で有名な進藤 要が率いる不良グループである。4時間授業で、帰り道に本屋を梯子してラノベの新刊を買いに行く時間とお金があると思っていたのに...。ぼくはどちらも奪われてしまう。所詮ら生物学的弱者のぼくではこんなもんである。
しかもこの進藤のグループに目をつけられるとお金をしぼれるだけしぼりとられ、逃げようとするとどこまででも追いかけてきてボコボコにされるという。
実際、ある同級生が彼のグループから逃げようとして転校していったところその転校先の学校からの帰り道で待ち伏せされてボコボコにされ、次の日からその子は登校拒否になったという。
「そういえば今月俺ったらちょーーっと無駄遣いしちゃってね あーー困ったなぁ そこで殻斗くん俺ら友達だろぉ ちょっとだけでいいからさお金貸してくんね?」
ぼくは生物学的弱者であるが故に昔からこのようによく不良に絡まれる。これまでも不良たちにいくら巻き上げられたことか。なのでぼくは基本財布の中には2000円しか入れないようにしている。安すぎると腹いせに殴られ、多いと失うものが多い。そのちょうどいいところが2000円なのだ。
ぼくは渋々財布を取り出し入れておいた2000円を渡す。
「これで全部です。すみません」
進藤 要は金を受け取ると
「ありがとねーまたいつか返すからね」
ぼくは何度その言葉を聞いただろうか?
彼らはそう言って子分を率いてどこかへ行ってしまった。
一人取り残されたぼくの耳に聞こえるのは今年の夏が来たことを知らせてくれる蝉の声、そしてグラウンドの方から聞こえる運動部らしき人々の掛け声。
ぼくは昔からこのような目に会うたびにこんな惨めな思いをしてきた。
何度この状況から脱しようとしたことか、しかし色々試したものの自前の生物学的弱さによる人々からの軽視、あと生まれつきの悪い運によって、抗えば抗うほど新しいトラウマを植え付けられて行った。
そしていつからか、抗うのをやめた。
「帰るか」
ぼくが校舎裏から校門に出ようとした時、コロコロとバスケットボールが体育館の裏口から転がってきた。
「すみませーん ボールとってくださーい」
ぼくはコロコロと元来た方向に返すと
「あれ?殻斗?」
と近づいてきたのは親友である一ノ瀬 歩だ
一ノ瀬 歩はイケメンである。
これはこの学校に通う大抵の生徒ならば知っている事実である。しかし彼には彼女はどころか女友達もまともにいないという。なぜなら先の言葉にはこう続くからである。
一ノ瀬 歩はイケメンである。
しかしどうしようもないほど残念すぎる変態ある。と
彼がそう呼ばれるようになったのはぼくらが入学初日に起きたある事件がきっかけだった
入学初日。
クラスの悪ガキに目をつけられて友達がほとんどいなかった小学生の頃の反省を踏まえてぼくは早めに友達を作ろうと思う。そう覚悟を決めていた。
まずは隣の席の子からだっ!
うちの学校では他では珍しい席が成績順になっておりぼくは中の上くらいそしてその男子は上の下ぐらいだった。
小学生の頃いじめられっ子だったからって人と喋るのが似てなわけじゃない!
そう心にいいつけ 隣の席の男子に話しかける
「ハッ ハジメマシテ ボクノナマエハ ミウラ....カクト...」
ダメダッタワ そりゃ苦手意識なくても小学生の約6年間をガキ大将の命令を聞くときぐらいしか同級生と話すことがなかったのだ。こうなって当然....なんだ。
隣の男子はキョトンとした顔でこちらを見てくる。
それにしてもすごいイケメンだな。そんな現実逃避をしていると、女子なら一発で落ちてしまいそうなスマイルで彼はこう言った。
「あぁ はじめまして 俺の名前は一ノ瀬 歩よろしくな。ところで殻斗.......貧乳派?巨乳派?
俺はどっちもいけるんだけど、お前はどっちだ?」
ん????? あれ?聞き間違いかなぁ?巨乳?貧乳?それに殻斗って呼び捨て?
僕の頭は一瞬でほぼオーバーヒート状態になった。
「あ、あの い、今なんて?」
「ん?だから殻斗は胸は大きい方か小さい方、どっちがいいかって話だろうが」
どれにしても聞き間違えじゃないらしい
え?そんなこと初対面で聞く? 普通
まぁでも今考えなきゃいけないのはこの状況をどう乗り切るかだ。咄嗟のことでほぼ反射的に答えた答えは
「ぼくは本物のおっぱいをちゃんと見たことないのでわかりません!」
これを大声で叫ぶことだった。クラスの生徒が一斉にこっちを見た。
ヤバイ コレハ ヤバイ
考えうる一番最悪の答えをしてしまった!
クラスの生徒のほとんどがこちらを向き静まり返った教室。そこに水を打つように一ノ瀬が言った。
「えーそんなのもしらねぇのかよ!すごいぞー。大きいやつの揉み心地も小さいからこそ感じるHな感じも両方たまんねー。コレをどっちも知らないなんて殻斗は人生損してるよ!これ絶対!」
コレが中学生最初の友達との雑談である。
その後も一ノ瀬くんの変態発言は途切れることなく、しまいには女子に直接カップを聞く始末だった。これにより彼は学校中から変人で変態などと呼ばれるようになった。しかしぼくは偶然とは言えあの時助けてくれた一ノ瀬くんに感謝している。
でも正直街中で女の人にナンパとも言えないナンパをするのは一緒にいる僕まで恥ずかしいのでやめて欲しい。
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