夕焼けと混ざる世界

千莉

第1話

やっぱり夕焼けが一番綺麗だ。鮮やかなオレンジ色に染まった夕焼け空を見上げて、水都 壱織みと いおりはそう思った。昼でも夜でもない不思議な時間が水都は何よりも好きだ。綺麗なオレンジ色の空を見上げ、思わず見とれていると


「壱織〜 」


と後ろから大きな声で呼ばれ、我に返った。声の主は水都の友達である佐久良 さくら かなめだった。


「なんだ お前か」


「俺じゃ悪いか。 てかお前、また夕焼け見てたのかよ 」


「そうだけど? 」


「好きだね〜 」


「綺麗じゃん。夕焼けって」


「ふーん」


そう言うと佐久良は何か言いたげな顔で空を見た。そこまで綺麗だとは思わなかったらしいが特に何も言わなかった。


「要はこういうの興味無さそうだな」


「うん 全く無い」


「少しは迷え」


「だって本当だし」


「だろうな」


「正直でいいだろ じゃあな」


「また明日な」


そう言って、いつもの丁字路で別れて家へ向かう途中、水都は違和感を感じた。違和感の正体を幾ら考えても分からず、ふっと顔を上げると夕焼けが真っ赤になっている事に気が付いた。濃いオレンジとかではなく、本当の赤だ。そして、もう一ついつもとの違いがあった。周りに誰も居ないのだ。この時間ならいつもジョギングをしている人や、仕事帰りの人が居るのに今日は一人も居ない。偶然かと思っていたが一人も居ないのはおかしい。どうしよう。水都はそう思い、一度立ち止まった。違和感を感じ始めたのはいつもの丁字路で別れた後だ。水都は取り敢えずそこまで戻る事にした。


丁字路までは無事に戻れたが、更に不思議な場面に水都は直面していた。学校の方にも佐久良の家の方にも行けない。そちらに行こうとすると何かに行く手を阻まれて進めない。向こう側はいつも通りだと言うのに。誰かに連絡を取ろうとスマホを取り出したが、役に立たなかった。おかしな事に圏外になっている。いつもならこんな事になる訳が無いのに何故かそうなっている。何処にも進めずスマホも圏外。残された選択肢は一つ。進める方に進むしかない。水都はそう悟った。






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夕焼けと混ざる世界 千莉 @seri_R

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