第161話 新遺跡 到着

翌朝


今日は早朝訓練を軽めで辞めて宿に帰った。




「おかえり~!!」




「おうおかえり!!」




「スーにクレア!?珍しいな…」




この2人、特にスーはいつも朝食の時間ギリギリまで眠りこけているのだが…


何とも珍しいことがあるものだ。


季節外れの雪どころか矢の雨が降ってくるのではないだろうか?




「まだ7:00だぞ?」




「楽しみで目が覚めちまってな!!」




「そうそう~!!他の2人ももう起きて部屋で支度始めてるぞ。」




「そうなのか…じゃあ俺も支度整えるか。」




汗を流し、着替えてから4人と朝食を取った。


食べ過ぎると消化に血が割かれて頭が上手く働かなくなってしまう。


一瞬の判断ミスが命を落とす可能性に繋がるので、あくまでも軽い朝食だ。




クエスト、特に魔物討伐クエストを引き受ける際はいつもこれを心掛けている。


クレアとスーは全く気にしていないが。




「ご馳走様でした。…さて、30分くらい食休めしたら向かうぞ。」




「分かりました。」




4人が自室に戻るのを見送った後、俺も戻ろうとしたところでソフィアがやって来た。


珍しく寝不足なのか、目の下に薄いクマが出来ていた。




「アルフレッド様、これを持って行ってください。」




「これは…お弁当か?」




「はい。今日のお昼に7人でどうぞ。」




「ありがとう。」




7人分のお弁当となると、かなり時間と労力がかかって大変だ。


おそらく目の下のクマはこれを作るために早起きして出来たのだろう。




「…どのくらいかかるかは分からないけど、ひと段落したら帰ってくるからな。」




「お気をつけて。パーティー財産の管理はお任せください!」




「ああ!頼んだぞ!!」




それから食休めがてら持ち物の最終確認を行い、5人集まった後ソフィアに挨拶をして宿を出た。




「楽しみだなー!!」




「だね〜!!どんなお宝が眠ってるのかな〜?」




「2人とも、緊張していないのはいいことですがたるみ過ぎは危ないですよ?」




「そうなのです。気をつけるのです。」




まるでお出かけに行くようなテンションの2人を宥めつつ歩いているうちに北門前に到着した。




「おはようなのじゃ!!」




「これで揃ったわね〜!!」




「おはよう。」




一応待ち合わせ時間の10分前に到着したのだが、師範もサリーちゃんも先に着いて待っていた。


やはりギルドマスターとギルド職員だから時間に厳しいのだろうか?




「…じゃあ行きますか!!」




「おう!!」




このパーティーのLvに比べたら道中に出てくる魔物は弱いが、それでも練習にはなるだろうと考えて遺跡まで隊列を組んで移動することにした。


移動といっても周囲を警戒しつつじわじわと進むのではなく、速度を合わせた走りだ。


早速“魔物探知“を行使し、司令塔として指揮しつつ移動を開始した。




1時間弱後




「迷いの森入り口だ。ここで少し休憩にしよう。」




「了解なのじゃ。」




普段なら“闘気操術“を行使した全力疾走で数十分で着くのだが、やはり隊列を組んでいたためいつもの速度が出ず時間がかかった。


道中は近くに数体の魔物を見つけたが、襲いかかってきたわけではないのでスルーした。




「…そろそろ移動を再開するぞ。ここからは迷いの森に入るからじっくり時間をかけて進もう。」




「おう!!」




木々が鬱蒼と茂り、日光のほとんどが遮断されているため昼間なのに薄暗い。


先程より広範囲で“魔物探知“を行使し、警戒しつつ迷いの森に足を踏み入れた。




『この雰囲気久しぶりだな…っと、早速反応だ。』




「右前方に魔物反応5つ!!およそ30秒後に接敵!!」




「了解よ~!!」




慣れているクレア達はともかく、師範とサリーちゃんも指示を受けて即座に体勢を整えた。


この様子なら不意打ちを食らっても即座に対応可能だろう。




「実力も見せておきたいしここは私に任せてちょうだ~い!!」




「分かった。もしもの場合に備えてクレアはサリーちゃんのサポートができる位置に待機してくれ。」




「おう!!」




話している間にどんどん距離が縮まっていき、敵の姿を捕らえた。


予想通りウェアウルフ亜種の群れで、武器を持っていないサリーちゃん目掛けて直進している。




「うぉぉぉらぁぁぁぁぁ!!!!!!」




「っ!?」




サリーちゃんが突然野太い雄叫びを上げたと思いきや先頭の敵目掛けて正拳突きをした。


その力強い1撃は頭に直撃し、頭蓋骨を粉砕するだけでなく穴という穴から血と内臓を吐き出させた。




『うわっ…グロいな…』




そんなことを思っている間にサリーちゃんは残った4匹を殴りと蹴りで仕留め終えていた。


血が大量に飛び散ったはずなのだが、計算して立ち回っているのかサリーちゃんには返り血の1滴も付いていなかった。




「どうかしら~?」




「多分オレと相性がいいな!!」




「そうだな。頼りになる前衛だ。」




「うふふ~ありがとね~!!」




ウインクしながらこちらへ投げキッスをしてきた。


鳥肌が止まらなかったが、パーティー間の不仲は危険に繋がるので表情に出さないよう努めた。




それから”魔物探知”を駆使して極力戦闘を避けるように移動すること数十分




「…止まってくれ。」




「…おぉっ!!ワイバーンがうじゃうじゃいるぞ!!」




「確かワイバーン肉ってオーク肉より好評だったよね~?」




「ですです!!倒して食べるのです!!」




「それいいですね!!」




『食い意地張りすぎだろ…師範とサリーちゃんもちょっと苦笑いしてるじゃん…』




「…よし、あいつらを倒して進入するぞ!!」

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