第158話 アップデート

黒龍の雷が舎弟になってから3ヶ月が過ぎた。


この前梅雨入りし、それから毎日雨が続いている。


雨の中彼らは毎朝俺に挨拶しにくるだけでなく、何か困ったことがあればすぐに駆けつけてくる。




そのせいで周囲の人から”Aランク冒険者パーティーを侍らせるヤバい奴”として白い目で見られるようになった。


何度も誤解だと伝えたのだが、理解してくれたのはギルドでのいざこざを見ていたほんの数人だけだった。




冒険者ランクはほとんど毎日複数回のクエストを達成しているのだが、それでもまだCランクで止まっている。


計算ではあと24回達成でBランクへ昇格だ。




「…今日も大雨ですね。」




「そうだな…今日も休みだな…」




「…ああああああ!!!!!オレはもう限界だ!!!」




「クレアうるさ~い…」




「スーは今の生活のままでいいのか!?」




「あたしはこのままでいいかな~スローライフも楽しいよ~?」




「ふんっ!!少し身体動かしてくる!!」




クレアは勢いよく席を立つと、両手剣を背負って宿を出て行ってしまった。


それに続くようにアイリスとイザベルは商会へ、スーは二度寝しに行った。




『さて…俺は調査報告しに行くか。』




撥水性のある魔物の毛皮がピンと張られた、この世界にも特有の傘を持って外へ出た。


前世の傘と比べるとかなり重量があるが、力も増したので何ということもない。




だが、噂では持っているだけで水に濡れない魔道具のというものがあるらしい。


見つけ次第購入する予定だ。




調査報告書の内容を思い出しながら歩いていると、あっという間に神殿に到着した。


雨が降っていて外が寒いからか、神殿内にはいつもより数倍多くの人がいた。




そんな人々を横目にカーペットの上を一直線に歩き、創造神像の前に跪いて礼拝した。


すると、一瞬で神殿から真っ白な空間に移動した。




『お久しぶりです!!』




「はい。…何かいいことでもあったんですか?」




『はい!!前回報告を受けた、プレイヤースキルのステータス表示化のプログラムが完成したんです!!』




「おぉ…!!さすが神様!!仕事が早いですね!!」




『えへへ~!!ありがとうございます!!』




プログラムについて詳しくは知らないが、かなり大変な作業だということは分かっていたので2年近くかかると踏んでいた。


それを1年以内に抑えるとは、相当頑張ったのだろう。




「あっ、今回の報告書です。現在ステータスに表示されないスキルを纏めました。」




『ありがとうございます。じゃあこれも追加しちゃいますね!!』




「じゃあ…お願いします。」




『はい!!それじゃあ…ほほいのほい!!』




神様が謎の呪文(?)を唱えてから自身のステータスを確認した。






名前 アルフレッド=ペンシルゴン 種族 吸血鬼 Lv.217




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




生活スキル(new!)


…解体Lv.9 採取Lv.8 裁縫Lv.2 調理Lv.5 調合Lv.6…etc




ソードスキル


片手剣Lv.10 両手剣Lv.10 二刀流Lv.4 短剣Lv.8 槍Lv.7 弓Lv.7 盾Lv.8 体術Lv.10




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「生活スキルですか!」




『はい!!それと、自動で五十音順に並び替えられるようにしました!!』




「おぉ…便利ですね…!!」




スキルが表示されるようになればいいかな程度に考えていたが、まさか自動整理機能も付いているとは。


予想より遥かに短期間で完成させただけでなく、予想より遥かに高性能に作るとは。




『社畜時代に神様のような人材が部署内に1人でもいたらブラックじゃなくなっていたかも…いや、神様をそのような下賤の場所に行かせるのは不敬というものだな。』




『えへへ~』




神様が頬をふにゃふにゃに緩めてにやけている。


何か喜ばせるようなことをしただろうか?




『…あっ、心読めるんだった。』




『報告書に1つ質問があると書いてありますが…?』




「邪神教についてです。邪神というのは実在するんでしょうか?」




『…はい。創造神の立場を私から奪い取ろうとしているんです…』




「なっ…!?そんな不届き者が…」




素晴らしい異世界に転生してくれただけでなくチート能力まで与えてくれた神様を信仰している1人の信徒として、神様を苦しめる邪神などという輩の非道を見逃すことはできない。




「…では、一部の邪神教徒が持つ魔法的な力はなんですか?」




『アルフレッドさんと同じように、神力を消費することで神から与えられた力です。』




「なるほど…力を与えられた存在が死んだ場合、与えた力は神様に戻るんですか?」




『いえ、そのまま消滅します。ですので、力を貸してください!!』




「分かりました。」




『えっ!?そ、そんな二つ返事して大丈夫ですか??もっと考えてくださいよ…』




「いえ。神様のためなら何でもやってみせます!!」




『ありがとうございます!邪神が与えた力はおそらく強力なものばかりでしょう…くれぐれも気を付けてくださいね?』




「はい!!」




『それでは…またお会いしましょう。』




目を開けると、真っ白な世界から創造神像の前に戻っていた。


俺は邪神教徒を撲滅しようと決意し、教会を後にした。

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