第149話 邪神教 情報提供
翌朝
いつも通り早朝訓練をしてから朝食を取り、1人でギルドへ向かった。
昨日盗賊のアジトで見つけた邪神教に関して報告をするためだ。
木箱の中から見つかった紙の山も持ってきている。
「あら~!!いらっしゃいアルフレッド君~!!」
「ああ。サリーちゃん、部屋で2人だけで話せるか?」
「あらっ!!お誘い…ってわけじゃなさそうね。着いてきてちょうだい。」
俺の表情で察したのか、サリーちゃんはギルドマスターとしての対応を始めた。
部屋に着くや否や、真剣な表情で向き合った。
「それで…何があったのかしら?」
「実は昨日の盗賊団のアジトで、邪神教を崇める祭壇を見つけた。」
「…本当かしら?」
「ああ。これを見てくれ。」
”アイテムボックス”から昨日見つけた紙の山を取り出した。
昨晩一通り目を通してみた結果、やはり邪神徒が他組織と接触していたことを表していた。
だが、残念なことに邪神徒と通じていた組織の存在や拠点場所などに関する情報は皆無だった。
「これは…っ!!今目を通してもいいかしら?」
「ああ。」
やはりサリーちゃんはギルド職員としても優秀で、途轍もない速読力を持っていた。
俺が数十分かけて読んだものを僅か数分で読み切った。
「貴重な情報提供感謝するわ~!!邪神教の足取りを何年間も掴めていなかったのよ〜」
「これを足掛かりに邪神教を一網打尽に…とはいかなそうだけどな。」
「そんなことないわよ。例えばこの手紙、僅かに磯の香りがすることから海の近い場所でしょうね。」
『すごいな…』
「それで…1つ聞いてもいいか?」
「何かしら?」
「邪神徒退治は冒険者がやるのか?それとも国の騎士団が?」
「両方よ。」
「えっ!?」
師範曰く、冒険者ギルドは国に所属した組織だが暗黙の了解として滅多に国の活動に関わらない。
冒険者は国家を転々として活動するため、1つの国に留まらないからだ。
例えばある男冒険者が政治に関わったとすると、彼は国家機密扱いになって国を出られなくなる。
そうなれば彼は自由を失った冒険者、もとい国所属のただの傭兵や騎士団になってしまうのだ。
さらにたちが悪いことに、これに対して国は一切の責任を負わない。
仕事を斡旋することもなければ生活を保障することとなく、自由の翼をもぎ捨てるのだ。
「国家機密扱いは…?」
「さすがエレノアちゃんの弟子ね。これも教わったのかしら?」
「あ、はい。知ってたんですね。」
「もちろんよ〜!!あの子ったら仕事を放棄して貴方のところに行っちゃったんだから〜!!穴埋めが大変だったわ〜」
前世で社畜をやっていたので、誰かが急に休んで人員が減ったときの辛さは十分知っている。
それも長期間となれば本当に大変だ。
「師範がすみません…」
「気にしないでいいわよ〜それで、国家機密の話だったわね。」
「はい。」
「冒険者が担うのは邪神教のアジト調査と討伐くらいよ。これならただのクエストとして処理できるわ〜」
「アジトの調査は危ないんじゃ…?」
「大丈夫よ〜深追いしなければ、ね?」
サリーちゃんがウインクした瞬間、背中に冷たいものが走った。
それは性的な目で見られたことと、目が笑っていなかったことから起きた。
「…ちなみに邪神教のクエスト難度は?」
「最低でもBランクよ〜」
「高くないですか?」
「奴らは巨大化したり、硬質化したりする謎の力…異能を持ってるから厄介なのよ。」
「なるほど…俺が対峙した敵は特にそういった能力は持ってなかったな。」
「運が良かったわね〜!!」
今の今まで忘れていたが、そういえば師範が異能について説明してくれたことがある。
師範曰く、異能はおそらく邪神から与えられたユニークスキルだという。
魔道具の効果という線もあるが、様々な異能があるのでその可能性は低いらしい。
『まるで魔法だな。ここは剣の世界なんだが…』
今でも時々魔法を使ってみたいという厨二病的な発想を拭いきれていない。
剣の技術がある程度の高みまで達したので、新しいことに挑戦したいのだ。
『まぁ…世界観を壊す提案をβテスターとしてするわけにはいかないけどな。』
「他に質問はあるかしら〜?」
「祭壇の調査はどうするんだ?」
「私自ら向かうつもりよ〜!!もちろん部下を引き連れてね。」
「確か祭壇は地下室の右通路、右手前の分かれ道にあった。」
「分かったわ〜情報の価値が分かり次第、情報提供料をあげるわ〜」
「ありがとう。ちなみにどれくらいだ?」
「ん〜…この書類だけで最低でも金貨10枚よ〜」
『おぉ…!!臨時収入だ…!!』
「じゃあ俺はこれで。」
「ええ。またね〜」
小1時間話していたようだ。
臨時収入に喜びつつ、ギルド1階で魔物討伐クエストを引き受けて冒険者活動に勤しんだ。
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