第128話 修行の旅 帰還

古代文明都市を出てから実に2年が過ぎた。




俺と師範は半年ほどかけて迷いの森の東部、南部、西部を転々とした。


北部は森林限界を超えるほどの高度を誇り、まだ吸血鬼の特性を持たない俺には危険とのことで見送られた。




ここでは草木の戦闘利用や発展した調合の方法、魔物の習性など様々な知識を授かった。


迷いの森で生活している間に全種類の魔物を倒して収集することが趣味となり、北部以外はコンプリートしてしまった。




前世のゲームで全種類のアイテムを集めたり、ストレージのアイテムが全て×99個になるまで集めた収集癖が復活したのだろう。




『我ながら修行のし過ぎで正常ではないと思ったけどな…』




それはさておき、その後はブルーノ帝国西部にある灼熱の砂漠や北部にある極寒地へ移り住んだ。


”状態異常無効”スキルを持つ俺は特に病気には罹らなかったが、暑いものは暑いし寒いものは寒かった。




最初、師範は鍛えているから問題ないと見栄を張っていたが、体調を崩しかけてすぐに保冷材やカイロのような魔道具を作って多用していた。


その際には魔道具作成の知識を授かった。




『…まあ師範が見栄を張ってくれたおかげで魔道具作成を教えてくれることになったから結果オーライだな。』




迷いの森と同様、どちらの地でも試験という名目でサバイバルをさせられた。


特に砂漠は洞窟のような安定した拠点がないため、なかなか困難だった。




また、やはり極地に生息する魔物は穏やかな環境に生息する魔物とは一線を画していた。


砂漠の魔物は生命力が高く、極寒地の魔物は体表の毛や脂肪により防御力が高くて厄介だった。




『…古代文明都市で見つけた装備ほどじゃないけど、なかなか良い素材だな。』




だが、おかげで戦闘能力やステータスは大幅に上昇した。


これが今のステータスである。






名前 アルフレッド=ペンシルゴン 種族 人間 Lv.217




HP 1,173,980/1,173,980 TP 876,951/876,951




STR 270 VIT 170 DEX 200 AGI 200 INT 200 LUK 120




スキル


片手剣Lv.10 両手剣Lv.10 二刀流Lv.4 短剣Lv.8 槍Lv.7 弓Lv.7 盾Lv.8 体術Lv.10






ステータス値の割り振りは、前世のゲームで言うところのほぼ均等振りの器用貧乏型だ。


どれかを突出させるべきだとは思ったが、“獲得経験値10倍“のユニークスキルで補えると判断したのだ。




『十分なLv差があれば気にする必要もないからな。』




重きを置いて訓練した片手剣と両手剣、体術はLv.10(MAX)まで上がった。


片手剣と両手剣のスキルLvが10になると、ピロンッというシステム音とともに二刀流のスキルを習得していた。




予想通り、獲得条件は片手剣と両手剣のスキルLvが最大に達することだったのだろう。


とはいえ、二刀流スキルを習得したのは3か月前のことなのでスキルLv.4とまだ低い。




今後は二刀流のスキルLv上昇に努める予定だ。




「ふむ…そろそろアインザスに帰るのじゃ。」




「…っ!!はい!!」




冒険者学校の卒業試験日まであと数日と迫ってきたからだろう。


久しぶりにクレア達と会えると思うと、楽しみで仕方がない。




『皆はどれくらい強くなってるんだろう?どれくらい綺麗になっているだろう?』




あの時は美しいというより可愛い感じだったが、2年も経てば幼さが消えて美しくなっていることだろう。




かく言う俺も15歳になって成人し、身長は185cmくらいまで伸びた。


ちなみにこの世界の男性の平均身長は180cm、女性の平均身長は165cmなのでそれほど高いわけでもない。




『前世より10cm近く平均が高いんだよな…』




「何をぼけっとしておるのじゃ?」




「あっ、すみません。」




「うむ。いつも通り、妾は飛んで行くからお主は走って付いてくるのじゃ。」




「はい…」




毎回思っていたのだが、この移動手段はどうにかならないだろうか?


砂漠では砂の地面せいで、極寒地では凍結した地面のせいで走りにくかったのだ。




だが足場が悪い場所をたくさん走ったおかげで体幹が強くなり、普通では鍛えられない筋肉も鍛えられた。


迷いの森まで走ったときは師範に置いて行かれていたが、今ではもう並走できるようになった。




それから走ること数時間後




「はぁ…はぁ…着いた…!!」




「うむ!!よく頑張ったのじゃ!!」




夕焼けで美しい街並みに感動するとともに、久しぶりのアインザスはとても懐かしく、心が温まるような心地がした。




「…アルフレッドだよな?」




息を整えながらアインザスの景色を見ていると、後ろから懐かしい声で話しかけられた。


振り返ると、そこには大きな両手剣を持つ龍神族の美しい女性がいた。




「もしかして…クレアか?」




「ああ!!オレだ!!久しぶりだな!!」




お互い感極まっていると、クレアが勢いよく抱きついてきた。


最初は俺も懐かしさを感じて嬉しかったのだが、その後は成長した胸の感触しか感じなかった。




「…っ!!お、おいクレア!!あまりくっつくなよ…」




「いいじゃねーか!!久しぶりだろ?」




「ま、まぁ俺は良いけど…」




身長は180cmくらいで、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいた。


若干筋肉が隆起しているが、前世のモデルなど比較にならないほどの美しさだ。




「クレア!!どこにいるのですか?」




「そろそろ寮に戻るよ〜」




「い、急ぐのです!!」




「この声は…アイリスとスーとイザベルか!!」




「ア…アルフレッド!!」




「おぉ〜久しぶり〜!!」




「ひ、久しぶりなのです!!」




「ああ、久しぶり!!」




3人とも、クレアに劣らないほど美しくなっていた。




それから5人で街をぶらふら歩きながら積もる話をし続けた。

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