第107話 古代文明都市 地下3階

『潜り始めて3日目…そろそろ何かしら施設に関する情報が欲しいな…』




そんなことを考えながら、習慣の早朝訓練を終えた。


数十分後に師範が目を覚まし、朝食を取って探索の支度が整った。




「…よし、地下3階に進むのじゃ!!そろそろ戦闘がしたいものじゃな…」




「不要な戦闘はしないでくださいよ?面倒なことになりかねませんから…」




「そのくらい分かっておるのじゃよ…ほれ、早く進むのじゃ!!」




地下2階の東区域の端にあった扉を開け、再び螺旋状の通路へやって来た。


”機械探知”にも”魔物探知”にも反応はなく、落ち着いている。




『機械生命体達はどこに行ったんだ?…まぁ遭遇しないに越したことはないか。』




正直俺も身体を動かすのは早朝訓練と夜間訓練だけなので、身体を動かし足りない。


ここらで1回くらいは敵と戦いたいものだ。




『そろそろ2階を出て30分か…?今回はやけに遠いな…』




そんなことを考えていると、右の壁の向こうで”機械探知”に4つ反応があった。


形と空を飛んでいることから判断するに、体長2mほどの鳥型機械生命体のようだ。




「師範、ちょうど真横に鳥型の反応が4つあります。」




「流石に壁を壊して進むわけにはいかないのじゃ…仕方ない、ここは我慢して進むのじゃ。」




「はい。」




下ること数分




「…そろそろ右手に入り口が見えるはずです。扉は…壊れてるみたいですね。」




「了解なのじゃ!!」




目的地に着くと、大きな拳の形に凹んで地面に落ちている扉があった。




「この拳の跡は…オークかオーガじゃの。警戒するのじゃ。」




「はい。」




拳の跡を”鑑定”すると、師範の予想通りこれはオーク型機械生命体がやったようだ。


通路を通った形跡は見当たらないので、おそらく地下3階にオーク型の群れがいるだろう。




「鳥型の魔物は獲物を見つけるや否や襲ってくるのじゃ。妾は飛んで迎撃するから、お主は遠距離攻撃を頼むのじゃ。」




「分かりました。」




「3…2…1…今じゃ。」




”闘気操術”を行使して、勢いよく中に入り込んだ。


地下3階は目に見える半分近くが壊れた廃墟のような空間だった。


電力が供給されているものの、ほとんどのライトが壊れていて薄暗い。




『さっきの拳の跡といい…ここで過去に何かあったのか…?』




そんなことを思っていると、上から2体の鳥型がこちらへ向かってきていた。




「はぁぁぁ!!!」




飛んでゆく師範に当たらないよう、両手剣Lv.9”ノヴァディザスター”を行使して斬撃を放った。


鳥型機械生命体達は空を優雅に飛んでその斬撃を全て回避したが…




「甘いのじゃ!!」




そう、俺の攻撃はあくまで囮だ。


斬撃を一定間隔で放ち、師範の前へと誘導していたのだ。




師範はソードスキルを行使することもなく、普通の殴り攻撃で2体の鳥型サイボーグを粉砕した。


瞬殺してしまったので、攻撃手段を見ることもなかった。




やはり銃で攻撃するのだろうか…?


それとも鳥型魔物と同様、頑丈に作られた羽や嘴で攻撃するのだろうか…?


再び鳥型と遭遇することを期待するしかない。




『…ってか犬型の時といい、ステータスより明らかに強くないか!?』




おそらく俺が知らない知識のためステータスに表示されていない情報があるのだろう。


師範の隠されたスキルが非常に気になるところだ。




「…師範、今の戦闘音で向こうからオーク型がこっちに来てます!!」




「うむ!!妾は残りの鳥型を仕留めるから、オーク型は任せたのじゃ!!」




「あっ、ちょっ…」




広大な空間だというのに、合流地点を決めていないが…


”探知”で追いかければいいだろう。




『…っておいおい…嘘だろ…!?』




”機械探知”にオーク型の反応が次々現れていく。


最初は6体だけだったが10体30体と増えていき、今では50体近くいる。




『俺一人でいけるか…?ええい、腹をくくるしかない!!』




「ピピピ…シシシシシシ…シンニュウ侵入侵入シャ…ハハハハハッケン発見発見…」




「タタタタタタ…タダチニタダチニ…ハイジョ排除排除排除を…」




『なんだ…?音声が壊れてるのか…?』




何やら挙動もがくついているし、様子がおかしい。


そういえば先程の鳥型は音声を発することすらしなかった。




『もしかしてここは…不良品の廃棄施設か?』




システムに忠実なはずの機械生命体が扉を殴り破っていたし、おそらく間違いないだろう。


とはいえ今のところ鳥型とオーク型しか見当たらないので、廃棄施設は他の階層にもあるのだろう。




『っと、やばそうな雰囲気だな…』




オーク型機械生命体達には銃が備えつけられていないようだ。


その代わりに両腕がドリルや斧、槍、剣に変形していった。




『おぉ…!!潜り始めて初の武器だ!!無傷で回収したいな…』




久しぶりの戦闘なので、腕が鳴る。


ここは思いっきり暴れ散らかそうではないか。




「ハハハイジョハイジョ排除ヲ…カイシカイシ開始開始シマス…」




「っしゃ行くぞぉぉぉ!!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る