第106話 古代文明都市 地下2階

翌朝


枕元に置いておいたヒカリゴケが光を発し始めると共に目を覚ました。




夜間の犬型機械生命体達の捜索は失敗に終わった。


結果、俺達は既に外へ逃げ帰ったと判断したようで捜索は中断された。




『助かった…』




師範が目を覚ますまでいつも通り早朝訓練をしたいところだが…


これからの探索に向けて体力はできるだけ残しておいた方が良いだろう。


軽く鈍った身体をほぐす程度で辞めておいた。




「ん…おはようなのじゃ…」




「おはようございます。いつもより早いですね。」




「うむ。探索が楽しみじゃからな。」




「”アイテムボックス”に木の実がありますが…食べますか?」




「いただくのじゃ!」




食べ盛りな俺は木の実程度では物足りないので、朝から昨日と同じ焼肉を食べることにした。


朝食を取りつつ、今後の予定について話し合っている。




「…弟子よ、食料と水はあとどのくらい残っておるのじゃ?」




「肉735個と木の実267個、水246Lです。」




「十分じゃな。一旦物資を補給しに戻ろうかと考えたのじゃが…このまま続行するのじゃ!!」




「はい!!」




水はペンシルゴン家を出る前、”アイテムボックス”の1スタックの数を調べるべく水道の魔道具から注ぎ続けたことがあったのだ。


結果、99個=1スタックであることが判明した。




「今日は地下2階に進むのじゃ。」




「分かりました。」




寝袋や皮の水筒を”アイテムボックス”に収納し、野宿の後片付けをして準備を整えた。




「よし…では行くのじゃ!!」




”構造探知”、”機械探知”で周囲を警戒しつつ東区画の扉を開けた。


この下階へ降りる螺旋状の通路は非常用通路なのだろうか?


地下1階と違って電力が供給されて電気がついているので明るい。




「ここを進むのじゃ。」




「はい。」




今日は機械生命体の追跡がないので、走らず落ち着いて移動できた。




『…しかしここは一体何の施設なんだ?』




会社のオフィスに工場、サイボーグに大型機械…見当もつかない。


色々なものを1つの建物に集約しているのは、遊園地と水族館を1つにしたテーマパークと似たような感じだろうか?




「…あっ、そろそろ右手に地下2階に入る扉が見えてくるはずです。」




「うむ!!何か宝が眠ってるといいんじゃが…」




「そうですね。今までは使い方もよくわからないゴミばかりでしたし…」




「むっ、ゴミではないのじゃ。古代文明の残骸なら例え使い方が分からない道具でも金貨数十枚~数百枚の値段はつくのじゃぞ。」




「えっ!?そうなんですか!?」




「うむ!!例えば魔道具はダンジョンから発掘した得体が知れないものを解析した成果なのじゃ!!」




「知らなかった…」




俺の”アイテムボックス”は容量の限界がないのであれこれ構わず収納すればよかった。


…今からでもそうしよう。




『待てよ…?ということは、昨日収納した壊れた犬型サイボーグを売れば大金持ちになれるのでは?』




何としてでも生還して売却しなければ。


…しかし、ファンタジー世界に銃が普及するのはあまり気が進まない。




『銃なんて開発されたら剣なんてほとんど誰も使わなくなるしな…ファンタジー要素が台無しだ。』




「むっ、扉なのじゃ!!」




そんなことを思っていると、地下2階に着いたようだ。


”機械探知”には反応がない。




「開けてみてください。」




「うむ。」




地下2階も電力が供給されていないようで、扉がロックされていなかった。


扉の向こうも1階と同じで真っ暗だ。




「師範、ヒカリゴケです。」




「ありがとうなのじゃ!!」




「って、うわぁぁ!!!」




師範がヒカリゴケで照らした先に、何かの顔があった。


びっくりして腰が抜けそうになってしまった。




「って、石像か。良かったぁぁ…」




「弟子は意外とビビりなのじゃな!!」




「う、うるさいですよ!!」




「こっちのは…絵画じゃな。しかし古代の人々は随分絵がうまいのじゃな…」




「そうですね…」




『石像といい絵画といい…ここは室内美術館か何かなのか?建物の構造どうなってるんだよ!?』




改めて考えると、どうして最上階に重量のある大型機械や工場施設を置いているのだろうか?


床が抜けてしまうではないか。




それに、どうして工場の下に美術館があるのだろうか?


内装に脈絡が無さ過ぎてむしろ怖い。




『…とりあえず探索するか。』




芸術は現代でも流行しているので、見つけ次第絵画を”アイテムボックス”に収納していった。


石像は倒れて砕けているが、顔や身体など無事な箇所だけ選別して収納した。




「…弟子よ、そんなに収納して”アイテムボックス”の容量は大丈夫なのじゃ?」




「あ、はい。これ限界ないので。」




「む!?そうだったのじゃ!?」




『あっ、しまった…絵画を収納することで精いっぱいで口が滑ってしまった…』




「”アイテムボックス”のユニークスキル保持者は久しぶりに会ったのじゃ。」




「他にもいるんですか?」




「結構いるのじゃ。今まで30人くらいかの。」




「そんなに!?」




「大体は商人じゃがな。なんせ輸送に人手も馬車も要らないわけじゃし。」




「なるほど…」




”鑑定”も保持している俺なら、商人に転職すれば成功間違いなしだ。


常に危険が見に付き纏う冒険者に飽きたら、商人にでもなるか。




それから機械生命体と遭遇することもなく、探索がてら芸術作品を”アイテムボックス”に収納しているうちに1日が終わった。


師範は何も起きなくて退屈そうな顔をしていたが、俺は大満足だ。

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