第99話 迷いの森サバイバル(南部) 教訓
翌朝
昨日の天気がまるで夢だったように、心地よく晴れた天気となった。
だが、俺はと言うと…
『…眠い。やっぱり何回も起こされたな…』
巨大ネズミの魔物ギガントマウスや梟の魔物サーベイオウルなど、様々な魔物がフェンスの近くに現れた。
その度に目が覚め、戦闘態勢を取っていたので完全に寝不足だ。
『はぁ…とりあえず朝食でも食べるか。』
寝不足で全然お腹が空いていないが、体力を作るためにウェアウルフ亜種の肉を食べた。
流石に肉だけでは飲み込めなかったので、師範と木の実を採取して”アイテムボックス”にあった残りを一緒に食べた。
『少し外の様子でも見に行くか。』
少し出入りが面倒だが、なんとかツタとツタの間をくぐって外に出た。
そこら中水溜りだらけで粘性のある泥になっており、歩きにくい。
『フェンスの損傷は…ジェノスタイガーが引っ搔いたところだけか。』
数本のツタに少し切れ込みが入っていた。
この切れ込み部分へラッシュボアが突進攻撃をしたら、千切れてしまうかもしれない。
面倒だが、切れ込みが入ったツタだけ大樹から解いた。
そして減らした分だけ新たに”アイテムボックス”から取り出し、大樹に括り付けた。
『…よし、ひとまずこれでいいな。』
切れ込みが入ったとはいえ、もう使えなくなったわけではない。
俺は切れ込みが入った部分をグレートバスタードソードで完全に分断し、2本の短いツタにして”アイテムボックス”に収納した。
『フェンス用にいっぱい使ったから残りのツタの量が心もとないな…新調するか。』
朝食で消費した木の実をストックしつつ、イヴィープラントを探した。
泥で足場が悪いため、本来なら地面が乾くまで拠点でじっとしていた方がいいだろう。
しかし、そんなに甘えて生きていけるわけがない。
冒険者になれば足場が悪い状況で戦闘になることも当たり前なのだ。
こんな話がある。
小さい頃から奴隷として闘技場で育ち、決闘で無敗の男がいた。
対人、対魔物戦闘どちらも無敗の男だ。
彼が25歳になったとき、ついに奴隷契約が解除されて長年夢見ていた冒険者なった。
多くの者が彼の活躍に期待を寄せた。
「あいつならSランク冒険者になること違いねぇ!!」
「ああ!!なんたって500戦500勝の男だからな!!」
冒険者ギルドも闘技場での彼の活躍を称え、G~Dランクを飛ばしてCランクのギルドカードを与えた。
そして冒険者活動初日、彼はCランククエスト”ダイアウルフ5体の討伐”を受注して森林に出た。
その日は心地よく晴れた日だった。
彼は夢見ていた冒険者になることができて喜んでいたが、警戒は怠らなかった。
森林に足を踏み入れてすぐ、Fランク魔物ゴブリンに遭遇した。
数は3匹…闘技場では上位種のハイゴブリン10匹と戦って勝ったので余裕のはずだった。
いつもと同じように得意のロングソードを構え、距離を詰めようとしたその時。
足元にあった小石に躓き、さらに振りかぶったロングソードが木や藪に引っ掛かって手から離れたのだ。
いくらFランクの魔物とは言っても、武器もなく倒れている男に負けるほど軟ではない。
すぐさま彼に飛び乗り、四肢にナイフを刺した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!助けてくれぇぇぇぇ!!!!!」
そして彼は誰にも助けられることなく、その3匹のゴブリンに嬲り殺された。
用意された場所と武器で戦っていた彼が、突然慣れない場所で戦おうとしたことが間違っていたのだ。
後にこの事件は『闘技場無敗の男がゴブリンに嬲り殺された話』として、新人冒険者への教育本となった。
『絶対彼みたいにはなりたくないな…』
そんなことを思っていると、イヴィープラントを発見した。
『ふぅ…やるか!!』
アーノルド師匠の訓練で既に泥の地面に慣れていたが、粘性が違ってこちらの方が若干動きにくい。
この地面での戦闘に慣れるため、特に足場を整えたりせずに両手剣Lv.9”ノヴァディザスター”を行使した。
この前と同様、ツタ切れを起こすまでただひたすらに斬撃を放ち続けた。
結論から言うと、少し動きにくかったが大した足枷にはならなかった。
足を取られて転ぶようなこともなく、特に危険は感じなかった。
だが、1つだけ予想外なことがあった。
『…うわ、最悪。ツタ泥だらけじゃん…』
そう、戦闘に夢中で素材として使うツタへの配慮が足りていなかったのだ。
仕方ないので水で洗い流したあと”アイテムボックス”に収納した。
『はぁ…もっと後先考えて行動しないとな…』
1つ教訓を得た。
それからは辺りを歩き回り、この地面での戦闘に慣れていった。
動きにくいのは相手も同じで、ウェアウルフ亜種やラッシュボアはいつもより動きが悪かった。
『まぁ…倒しやすかったけどな。』
キリングベアを倒すとき、こういった泥の地面を罠に使うと楽になるかもしれない。
念のため50Lほどの泥を”アイテムボックス”に収納しておいた。
『…よし、明日はキリングベア討伐だ!!』
気合いを入れるためにいつもよりも豪勢な夕食を取り、眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます