第97話 迷いの森サバイバル(南部) 最悪の事態

『どう対処したものか…』




藪に隠れて現状を打破する方法を考えた。


全匹倒して探索を続けるか、息を潜めてウェアウルフが去るのを待つか。




『…前者だな。』




14匹に同時に襲われたら流石にキツイかもしれないが…


今まで接敵した際、同時に襲うのは最高5匹だったので心配しなくて大丈夫だろう。




「はぁぁ!!」




俺は“闘気操術“で身に纏うTPを5,000→6,500へ増やし、ウェアウルフで達へ向けて両手剣Lv.9“ノヴァディザスター“を行使した。




「キャウンッッ!!」




強化した斬撃は1撃で数体を貫通し、たちまち8匹を仕留めた。


最後の斬撃を軸に“ノヴァディザスター“へとスキルチェインし、再び斬撃を放った。




ウェアウルフ亜種達は斬撃の雨を避けながらの攻撃を試みたが、全匹失敗に終わった。




「ふぅ…上手くいったな。」




死体を“アイテムボックス“に収納し、探索を再開した。




数分後




『…おっ、やっぱり水の音がする!!』




耳を澄まして音源へと歩き始めた。




「おぉ…!!まあまあ大きい川だな!!」




向こう岸まで10mといったところだろうか?


川底は若干深く、7mくらいだろう。




『魚の魔物はいるのか…?』




“魔物探知“を行使すると、川の中に複数体の反応があった。


前世の鮭と似たバイトサーモンという魔物で、鋭い牙とツノが生えている。




この川でバイトサーモンを食べているとすれば、近くに寝床を構えているだろう。


そう考え、川に沿って歩き始めた。




『足跡だ!!“鑑定“によると…キリングベアだ!!よっしゃぁ!!』




縦横30cmほどで、体重があるのか土が沈んでいる。


そしてその足跡は川を離れ、森の中へと続いている。




俺は“魔物探知“を半径100mで行使して警戒しつつ、足跡を追った。


途中でイヴィープラントを見つけたが、ツタは有り余っているので放っておいた。




じっくり時間をかけて追跡すること数十分




『…っ!!血痕だ!!』




出血しながら歩き続けたようで、案内のように道ができている。




『もしやキリングベアは手負なのでは…!?』




と期待したのも束の間、“鑑定“によるとバイトサーモンの血だった。


怪我をしている個体だったら罠を仕掛けるまでもなく簡単に仕留められたのだが…




追跡ついでに薬草や回復薬の原料となる実を採取しながら進むこと数分




『…っ!!ついに見つけた!!』




足跡と血痕が中へと続いてゆく洞窟を発見した。


“探知“を行使すると、洞窟内に大きな反応が2つと小さな反応が6つあった。




『よりによって番かよ…!!』




相手がSランク魔物2匹となると、討伐が難しいこと極まりない。


その上キリングベアの雌は非常に獰猛で、雄よりも縄張り意識が強い。




『小さい反応は…なっ!!』




そこにはバイトサーモンやウェアウルフ亜種の他に、足を喰い千切られた人間の男性がいた。


おそらくキリングベアに捕まって保存食として貯蓄されているのだろう。




『助けられるなら助けたいが…厳しいな。』




番のキリングベアを倒すだけでも困難なのに、男性のHPが既に1割をきって瀕死状態に陥っていたのだ。


もはや助かる可能性は限りなく0に近いだろう。




『…諦めるか。』




拠点を出発してから数時間が経過したようで、空が赤みを帯びてきた。


俺はキリングベアの寝床の位置情報を頭に叩きこんだ後、急いで拠点へ向かった。




帰りは魔物に遭遇しなかったので、夜行性の魔物が活発化する日の入り前に到着することができた。


もっとこの森に慣れてきたら、夜行性の魔物とも是非戦ってみたいものだ。




そんなことを考えながら火をおこし、食事の準備をした。


師範が発って俺1人になってから初めての食事…


高ランク魔物が跋扈する見知らぬ土地で1人黙々と食べていると、どこか心細かった。




食べ終わった後、その心細さを誤魔化すように熱心に訓練に取り組んだ。


いつもより集中しており、気が付けば真っ暗になっていた。




『…寝るか。』




翌朝




『…最悪の天候だな。』




日の出とともに目を覚まし、早朝訓練を始めようとしたときには既に大雨暴風のこの天気だった。


大粒の雨が地面に落ちる音が聞こえ、風はビュービューどころかゴーゴーと音を立てて吹いている。




幸いなことに、この洞窟は頑丈で地面から上に向かって傾斜になっているので雨漏りや浸水の恐れはない。


外に出なければ危険はないだろう。




『今日は外に出られなさそうだな…訓練とか回復薬生成でもして時間潰すか。』




それから数時間後




『っ!?”魔物探知”に反応がいくつも…!?』




最悪の事態が訪れた。


そう、魔物達がこの悪天候から身を守るためにこの洞窟を奪いに来たのだ。




『ウェアウルフ亜種が22匹…多いな。』




結論から言うと、こちらの圧勝だった。


ウェアウルフ亜種達は暴風雨に晒されて体力も削れており、その上地の利もこちらにあったので洞窟内から”ノヴァディザスター”をただ放ち続けるだけで倒すことができたのだ。




『ふぅ…これで一休みでき…くそっ!!』




安心したところで、再び”魔物探知”に反応があった。


反応の数は2つだけだが…




『なっ!!今度はラッシュボアの群れだと…!?』

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