第75話 TP増幅薬

『…っと、30分間TP切れで増える数値が10倍


…つまりTP10増えるんだったな。』




時間、そして我慢して薬を飲んだことを無駄にしないためにも早速TP消費を始めた。




作業効率を上げつつスキルの熟練度を上げるために、両手剣Lv.9“ノヴァディザスター“を行使してTPを消費した。




『これで1回目…TP空にしたあと1度全回復させないと増えないんだよな…』




TPは3秒で1回復する。


ということは、TP22,291を回復させるには66,873秒…18時間以上かかる。




『TP回復薬とかないのか…?』




そういえば師範がTP増幅薬以外にも色々と置いていっていた。


階段の手前にある丸薬が入った瓶の山を1つ1つ“鑑定“した。




『これはHP回復薬(B)…これは体力回復薬(B)…おっ、TP回復薬(S)だ!!TP回復薬(A)もある…!!』




Sランクは1粒でTPを5,000、Aランクは1粒でTP3,000を回復できるらしい。


これを使わない手はないだろう。


早速Sランクを4粒とAランクを1粒手のひらに取り、飲み込んだ。




『うっ…不味い。TP増幅薬よりきつい…』




良薬口に苦しというが、まさにその通りだ。


だが、お陰で全快できた。




『第2ラウンド行くぞ…』




丸薬の後味で吐き気を催しながらも、手を止めなかった。


吐き出してまた新しい丸薬を飲み込むよりは楽だからだ。




30分後




「これで…ラスト!!はぁ…はぁ…はぁ…」




滑り込みで8回目のTP切れを終えた。


合計でTP3,080が増加した。




『不味いTP回復薬35粒も飲んでたったの80…もったいないな。TP増幅薬だけ服用するか。』




TP増幅薬の瓶をまるまる持ち、口の中に全てぶち込んだ。


そして味わわずに飲み込んだ。




「おぉ…!!一気にTP501,000も増加した…!!」




1粒でTP3,000増加なので、1瓶の中に167粒が入っていたようだ。


幼少期に何度も何度もTP切れを引き起こしてTP1増加させていたあの作業は一体…?




『…それはさておき、TP増幅薬の効果って累乗になるのか…?』




試しに“ノヴァディザスター“を行使し、TP切れ状態にしてみた。


その結果…




『…まあ流石にそんな都合よくいかないよな。』




先程1粒飲んだ時と同様、TP10しか増加しなかった。


累乗になったら10の166乗…計算できないほどの数値を獲得できていた。




「よし…次行くか!!」




師範が置いていった残りのTP増幅薬はAランクの代物だったようで、1粒で1,000しか増加しなかった。


それでも2瓶(350粒)全て飲んだので、TPは350,000増加した。




「はぁ…はぁ…途中丸薬で窒息死するかと思った…」




丸薬は水分がなかったので、口の中がパサパサする。


前世でたまに食べていた、栄養調整食品のブロックを思い出した。




「おーい、弟子よ!!そろそろ飲み終えたじゃろ?」




「は、はい…丸薬だけでもう腹が満たされました…」




「カカッ!!…ってお主!!あの量を全部飲んだのじゃな…⁉︎」




「…?そうですが…何か?」




この部屋に置いていったということは、全て服用しろという意味ではなかったのだろうか…?


てっきりそうだと思っていたのだが…




「…ご愁傷様なのじゃ。」




「えっ…?師範、どういうことですか⁉︎」




「その丸薬は翌日の副作用が酷いんじゃよ…1粒飲んだだけで頭痛や腹痛、関節痛、筋肉痛、吐き気、目眩、その他いろいろ…お主、明日死ぬのじゃ。」




「えっ…」




『聞いてないんだが。』




しかし、TP切れの症状は“状態異常無効“発症しなかった。


この道理で考えれば、おそらく丸薬の副作用も無効化される…はずだ。




「…副作用を無くす方法ってありますか?」




「ふむ…古代龍またはグラトニースライムの核を喰らうか、ノーライフキングの王冠を被ることじゃな。」




「無理…ですね。」




古代龍とグラトニースライム、ノーライフキングは世界三代厄災と言われている。


グラトニースライムはスライムの最終進化先、ノーライフキングはアンデッド系魔物の頂点である。




曰く、古代龍は羽ばたき1つで街が滅ぶ。


曰く、ノーライフキングは全ての生命体へ平等に死を与える。


曰く、グラトニースライムは通った道に草の1本すら残らず消化される。




「…せいぜい最期を楽しむのじゃな。」




「…はい。」




その後、俺は剣闘祭の賭博で稼いだ金で高級食事店に入ったりして豪遊した。


そして家族や友人に対する遺書を執筆し、ベッドで横になった。




『2回目の死か…丸薬の副作用による死亡ってダサいな。』




そんなことを思いながら、俺は眠りについた。


死ぬ可能性があるというのに、大して慌てることはなかった。




『ん…眩しいな…』




「…おっ、起きたのじゃな。」




『師範の声がする…けど眠いからとりあえず二度寝しよう。』




「…おい、起きるのじゃ!!」




「痛ってぇ!!」




腹に鈍い痛みを感じ、目を覚ました。 




「あれ…師範…?俺生きて…」




「お主、どんな体質をしておるのじゃ?苦しむ様子が全くなかったのじゃよ。」




「おぉ…おぉ…!!」




『転生特典で“状態異常無効“のユニークスキルを取った過去の俺、まじでナイス!!』




九死に一生を得て、生きていることに歓喜した。


…ただし、豪遊で金貨2枚(200,000円)を浪費したので落胆した。

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