第50話 実力測定①
「じゃあまずは1番手、舞台に来い。」
「は、はいなのです。」
正直イザベルが戦っている姿を見るのは結構辛い。
何故なら傷ついては”女神の御加護”で回復し、再び傷ついては回復し…を制限回数分繰り返すからだ。
『俺はサディストじゃないから美少女が傷ついてるのはちょっと…な。』
イザベルの痛みを無視して攻防を続ける戦い方は長所でもあるのだ。
本人がそう言った戦い方をしているのだから、口出しするのは筋違いだろう。
「審判は細剣教授、ジェシカが担当いたしますわ。両者武器を構えて…」
アランは両手剣、イザベルは両手でも片手でも扱える棍棒を装備している。
間合いはアランの方に分がある…
イザベルが勝つにはアランの懐に入り込んで一気に畳み掛けるしかないだろう。
「試合開始!!」
開始と同時に、2人とも前へ跳躍した。
アランが高速で、かつ様々な角度からイザベルに斬りかかる。
イザベルは攻撃を擦って軌道を逸らすことで精一杯の様子だ。
『1度距離を取ろうにもアランが追撃してくるだろうし、懐に入り込む隙は無い…なかなか厳しいな…』
このままアランの猛攻を耐えつつ、隙を探るしかないようだ。
しかしイザベルは既に息が上がり、逸らしきれなかった攻撃によって細かい傷を負っている。
このままだとジリ貧だ。
”女神の御加護”を行使しようにもアランから距離を取る必要はあるし…
『これは…イザベルの負けだな。』
激しい攻防はその後10分ほど続いた。
観客席にいる生徒たちは息を吞んで戦いを見続けた。
「やぁぁぁぁ!!!」
「はっ!!」
イザベルが最後の悪足掻きに棍棒Lv.5”スタンブラント”を行使した。
『悪手を打ったな…決着か。』
”スタンブラント”は強力な1撃を与え、STRが相手を上回っている場合に相手をスタンさせる。
威力が強い分、システムアシストは大きく振り上げて攻撃するという身体に隙ができるものなのだ。
アランはその隙を見逃さなかった。
イザベルが大きく両腕を振り上げたところで胴体を薙ぎ払い、両断した。
「そこまで!!」
俺と模擬戦しているときも思っていたが、イザベルの軌道を逸らす技術は何度見ても実に見事だ。
STR差が4倍ほどある相手の猛攻をこうも防ぐとは。
『俺にもできるか?…いや、相当練習しないと難しそうだな。』
負けてしょんぼりしたイザベルが帰ってきた。
普段の戦闘スタイルのおかげで痛みに慣れているのか、半減された痛みはあまり感じていないようだった。
「おいイザベル!!すごいじゃねーか!!」
「ええ!!私も感動しました!!」
「あたしも!!まさか教授の猛攻に真っ向から立ち向かって数十分も持たせるとは思わなかったよ~」
「あんな難しい防御はイザベルにしかできないよ…!!」
「あ、ありがとうなのです…!!」
アランに傷を負わせることはできなかった。
しかし、”女神の御加護”を発動できない状況では十分善戦したと思う。
「次、2番手!!舞台に来い!!」
「ああ!!」
次はクレアの番だ。
同じ両手剣使いなので、クレアが勝つには単純に力で勝るか技量で勝るかしかないが…アランが相手ではどちらも難しい。
「両者武器を構えて…試合開始!!」
「おりゃぁぁぁ!!!」
開始と同時にクレアが前へ跳躍し、距離を詰めた。
対するアランはその場で攻撃を待っている。
今度は1戦目と逆の展開になった。
クレアが猛攻を続け、アランがそれを防ぎ続けている。
「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
歓声が上がった。
観客席から見たらクレアがアランを押しているように見えるのだろうが…
『…厳しいな。』
アランに攻撃の隙を与えていないことから察するに、クレアの狙いはおそらくやられる前にやることだろう。
攻撃を許せばたちまち体勢を崩し、負けてしまう。
その構図のまま6分が経った。
クレアの息が上がり始め、攻撃の手が緩まってきている。
『そろそろ決着か…』
「はっ!!」
アランが力の抜けた攻撃をパリィし、クレアの体勢を崩した。
「くっ…おりゃぁぁ!!!」
クレアは体勢を崩しながらも、苦し紛れに両手剣Lv.1”スラッシュ”を行使した。
しかしアランはそれを見越していたようで、既に両手剣Lv.2”ドライクロ―”を行使していた。
1撃目で”スラッシュ”を相殺し、2撃目でとどめを刺す…かと思いきや、クレアが転んだことで奇跡的に回避した。
しかし、流石に3撃目は避けられずとどめを刺された。
「そこまで!!」
「痛ってぇぇぇぇぇ!!!!!」
舞台で死に、闘技場の外に出されたクレアが大声を上げた。
やはり疑似的で半減しているとはいえ、死ぬ痛みは相当のものらしい。
「お疲れクレア。いい戦いだったぞ。」
「ボ、ボクも見てて白熱しました!!」
「そりゃあよかった!!オレも楽しかったぜ!!」
「ええ!!その…痛みは大丈夫ですか?」
「あたし痛いのは嫌だなぁ…」
「結構痛かった。イザベルは何も感じてないように見えたのになー…」
「ボ、ボクは痛覚が鈍いから…」
師匠の訓練によって痛みに耐性を得たが、それでも痛いのは嫌だ。
何としてでもアランに勝ってやる…
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