第49話 2学期

それから残り少ない夏休みを5人で謳歌した。


…といっても毎日練習漬けだったが。




登校日




「久しぶりだなお前ら!!明日は宿題テストがあるからしっかり勉強するように。その時に宿題も集めるからな。」




『宿題テストか…毎晩勉強したから準備は万端だ!!』




今回の範囲はクエスト報告時に提出する魔物の討伐証拠部位と売却可能部位についてだ。


冒険者として円滑に活動を始めるためにも、これは必須事項なのだ。




「これで学活を終わる!!」




『今日は早めに練習を終えて宿題テストの勉強を…ん?』




「アルフレッドォォォ!!!宿題見せてくれぇぇぇ!!!!」




「クレア…前回定期考査の提出物でも同じこと言ってたよな?」




「そこを何とか頼む…!!」




「はぁ…仕方ないな。」




「助かったぁぁ!!!」




クレアが単位を落として留年…もしくは退学になるのは見ていられない。


と言っても、なんだかんだ一夜漬けで乗り越えているのだが。




「クレアは相変わらず情けないですね。」




「う、うるせぇアイリス!!いつもアルフレッドに負けて2位のくせに!!」




「なっ…!!私も気にしていることを…!!」




気にしていたのか。


だが、1位の座を譲るわけにはいかない。


何故なら主席から落ちればアランに特待生から外され、学費免除の恩恵を授かれなくなってしまうのだ。




「アルフレッド、今回は負けません!!」




「俺も負けるつもりはないからな。」




今回の範囲に関しては絶対の自信がある。


実は、屋敷にいた頃に1度履修しているのだ。




『その上大体は前世でやってたゲームとか異世界漫画と同じだからな!!』




満点を取れる自信があるので、寝る直前に復習すれば十分だろう。


前世の赤点祭りだった学生時代とは大違いだな…




「じゃあクレア、22:00までには絶対に俺の宿題を返せよ?前回と同様ソフィアに渡してくれればいい。」




「ああ!!ありがとな!!」




『さて…俺は訓練部屋に籠るか。』




それからクレアの返却が23:00に遅れるというアクシデントに見舞われたが、特に問題はなく宿題テスト当日が訪れた。




『クレアは眠そうだな…テスト中に寝落ちして赤点取らなきゃいいが…』




「では宿題テストを始める!!制限時間は60分。始め!!」




”大問1 以下の問いに答えよ。※ただし、売却可能部位に魔石を記入しなくて良い。


第1問 危険度G、角ウサギの討伐証拠部位と売却可能部位を答えよ。”




『順番に”角、毛皮と肉”だな。角ウサギは弱い割に売却可能部位が多いから、初心者の冒険者にとっては良い金策になるからな。』




”第2問 危険度G、スライムの討伐証拠部位と売却可能部位を答えよ。”




『順番に”体液、なし”だな。スライムは無限に増殖するから初心者の冒険者にとっては良いレベリングになる。』




”第3問 危険度F、ゴブリンの討伐証拠部位と売却可能部位を答えよ。”




『順番に”右耳、なし”だな。ゴブリンは…』




それからも順調に回答を続けた。


分からないものは1問もなく、本当に満点を取れるかもしれない。




「そこまで!!最後列の人は回収を頼む。」




「ふぅ…返却が楽しみだな。クレアは…っ!!」




隣の席を見ると、幸せそうに眠るクレアの顔が視界に映った。


まさか想定していた最悪の事態が…?




『と、とりあえず解答用紙を…おぉ!!結構埋まってるな!!良かった…』




次に問題なのはアイリスの得点だ。


アイリスが少し残念そうな表情を浮かべていることから察するに、あまり自信がないのだろう。


本人には申し訳ないが…主席を維持できそうで本当に良かった。




「昨日言い忘れたんだが…この後は剣闘祭出場メンバーの実力測定をさせてもらう。着替えて闘技場に来てくれ。それ以外の生徒は帰っても見学に来ても構わん。」




『急だがアランと模擬戦できるのは嬉しいな!!”闘気操術”を使ってどこまで戦えるのか試すいい機会だ!!』




この夏休みはほとんどの時間を”闘気操術”に費やしたため、槍Lv.3→5と弓Lv.2→5しかスキルLvを上げられなかった。


その分”闘気操術”は消費TP1000をわずか5秒で発動できるようになり、その上ソードスキルとの併用もできるようになった。




『…っ!!最近アランはカジノ三昧で身体がなまってるだろうし…もしかしたら勝てるのでは⁉』




いや、淡い期待は辞めておこう。


血のにじむ努力が元Sランクとはいえ遊び人に破られたら流石につらい。




そんなことを考えながら、着替えて闘技場に移動した。


4人はアランと戦えることを喜んでいるのか、ウキウキして待っていた。




クラスメイト達のほとんどは観客席に集まっていた。


おそらくアランの戦っている姿を見たいのだろう。




「よし、全員集まったな。じゃあ軽く準備したら始めるぞ。」




「教授、模擬戦形式はどうするのですか?」




「本番と同じだ。勝敗は一方が死んで退場することだ。痛覚は半分に設定されてるが…それなりに覚悟しろよ?」




「わかりました。」




俺は最後に戦うということか。


前の4人でアランが疲れなきゃいいが…




『…夏休みの努力の成果、見せてやる。』

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