第36話 魔物征伐 激戦

「なっ…!!あれがウェアウルフ…なのか?」




まだ80mほど離れているにも関わらず、その巨大な姿が視界に映った。


体表は灰色のつやつやした毛で覆われており、眼は血走っていて恐ろしい。




「撃てぇ!!!!!!」




「”エンドレスアロー”!!!」




「”エンドレスホーミングアロー”!!!」




アランの指示の元、弓兵部隊が攻撃を開始した。




ダイアウルフ達は回避行動をとっているが、追尾式の矢によってバタバタと倒れていく。


それに対し、ウェアウルフは回避行動をとることなく体毛で矢を弾きながら進んでいる。




『なっ…!!ここまで強いのか…⁉』




遠距離攻撃で数を減らしたが、それでも20匹ほどが生き残り討伐軍へ牙を剥いた。




「レイフィールド殿、小僧!!合流してくれ!!3人でウェアウルフを仕留めるぞ!!」




「3人で⁉︎」




「アラン、それは無理があるだろ…」




「まあまあ。お前達は騎士団の手助けに回ってくれ!」




「りょーかい!」




「了解しました。」




レイフ兄様が多めに連れてきたものの、ダイアウルフの討伐部隊は10人しかいない。


ダイアウルフの半数しかいないが…ルイザがいるので心配しなくていいだろう。




さて…問題はウェアウルフをどうやって討伐するかだ。


体長は10mほどあり、凄まじい威圧感だ。




『ひとまず…“弱点探知“!!』




すると、体毛の無い目や鼻、耳、口、腹に光が浮かび上がった。




『前衛が攻撃できるところ…どこか無いか…?』




必死に探していると、ほのかに光る部分を見つけた。




「アラン、レイフィールド殿、膝の裏です!!」




「了解!!」




「アルフレッド、同時に行くよ!!」




「はい!!」




俺達は両手剣Lv.6“ジェットスマッシュ“を行使してアランは右前脚、俺とレイフ兄様は左前脚へ踏み込み、膝裏に強力な1撃を放った。




「…っ!!硬い…」




“弱点探知“の光が弱々しかったことから察するに、そこまで大した弱点では無いのだろう。


全力で放った攻撃だが刃は僅か数cmしか入らず、血が少し滲み出た程度だった。




「小僧、レイフィールド殿、距離を取れ!!」




すぐさま皮膚に剣を持ち直し、後ろへ大きく跳躍した次の瞬間。


ウェアウルフは前脚を振りかざし、鋭い爪で切り裂き攻撃をした。




「なっ…!」




その爪は土の地面を深く、激しく削った。




「直撃したらひとたまりもないな…」




ウェアウルフが“ジェットスマッシュ“を警戒して距離を取った。


このままだと距離が足りず、鋭い歯で噛みつかれてしまう。




「アラン、どうする…?」




「ジワジワ削っていくしかない…攻撃を分散しながら、主に前脚を狙え!」




「了解!」




ウェアウルフを撹乱させるため3人で交差するように移動し、俺は右前脚の裏に潜り込んだ。




「…っ!!」




先程のアランの攻撃と思われる傷跡を見つけた。


アランの重い1撃でさえ10cmほどしか斬れておらず、驚いた。




「はぁぁぁぁぁ!!!」




連撃技はソードスキル終了までに時間がかかるため、出来るだけ行使しない方がいい。


…のだが、俺はソードスキルの強制停止ができるので両手剣Lv.7“ジェノスストリーム“を放った。




システムアシストの軌道を全て変更し、傷跡を狙った。




「…っ!!危ねっ!!」




5連撃目を与えようとしたところでウェアウルフが脚の爪を出し、切り裂こうとしてきた。


どうやら俺の攻撃が1番嫌だったらしい。




『前世のゲームでもヘイトを買うのは得意だったしな。』




一旦後ろへ跳躍し、距離を取った。


その間にアランとレイフ兄様が懐に入り、両手剣Lv.4“インパクト“を行使した。




「ガルルルルルル!!!!!」




今の攻撃が効いたようで、唸り声を上げてよろめきながら後ろへ引いた。




「逃がさない!!」




俺は“ジェットスマッシュ“で瞬時に間合いを詰め、抉れた傷へ強力な1撃を放った。




『おっ…!今硬いものにめり込んだな。』




「骨にヒビが入った!!あともう少し!!」




「良くやった小僧!!行くぜぇ!!!」




ヘイトをレイフ兄様と交代して後ろで休みつつ、アランの攻撃を観察していた。




『ん…?アランの周りが歪んで見える…?』




一体どんな手品だ…?


まさかアランの身体が滅茶苦茶熱を帯びているのか…?




『…っ!今度は赤いオーラみたいなものが…⁉︎』




「っしゃおらぁ!!!」




「え…⁉︎」




普段のアランとは思えないような奇声を上げ、剣を右上段に構えた。




『あれは…“ジェットスマッシュ“の構えだ。普通のとは違うのか…?』




次の瞬間




「…っ⁉︎⁉︎」




アランが立っていた地面が深く抉れたと思ったら、いつの間にかウェアウルフの頭の下へ潜り込んでいた。




「はっ!!」




垂直に跳躍し、今度はウェアウルフの頭上を取った。


脚を狙わないのだろうか…?




「…っ!!アラン危ない!!!」




ウェアウルフは狩りで鍛えられた動体視力によってアランを目で追い、落下地点で口を大きく開けた。




「くたばれぇぇ!!!」




剣をさらに振りかぶると、周囲にあった赤いオーラが剣に凝縮した。




『これは…よく分からんけど凄そう!!』




突如赤い光が眩しく輝き、反射的に目を瞑ってしまった。




『目が…っ⁉︎この轟音は…⁉︎』




まるで近くに雷が落ちたような爆音が響き渡った。




「ん…えっ⁉︎」




ゆっくりと目を開けると、目の前にはウェアウルフの首が転がっていた。




「ふぅ…!!この技は溜めに時間かかるし疲れるし…出来るだけ使いたくなかったんだがな。」




「いやいやいや…ってか前脚攻撃した意味は⁉︎」




「まあその…悪い!あまり関係なかったな!」




「はぁ…」




何はともあれ無事にウェアウルフを討伐できて良かった。


ダイアウルフの殲滅も若干名負傷者は出たが、無事完了した。




『…後であの技を問い詰めてやる!』

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