第35話 魔物征伐 作戦会議

「誰か…作戦を思いつく人はいないか…?」




今まで対峙したことが無いほどの逆境に立たされ、皆下を向いた。


…1人を除いて。




「レイフィールド殿。作戦がある。」




「本当か…⁉」




「ああ。」




そう、以前1人でスタンピードに巻き込まれたが生き残った英雄『不死身のアラン』を除いて。




「その作戦とは…?」




「ウルフ…特にウェアウルフは嗅覚が発達してるのは知ってるな?」




「あ、ああ。」




「以前調べたところ、約100m先の血の匂いを嗅ぐことができるんだ。そして…小僧、授業でやったな。偵察は何匹で行う?」




「えっ⁉︎えっと…確か10〜15匹。」




「正解。」




急に当てられるのは心臓に悪いからやめてほしい…


しかも今は授業中じゃないのに。




「そしてウェアウルフは兎にも角にも慎重すぎる。敵の情報を把握するまで自ら戦闘には赴かない。」




「…っ!その性質を利用して…!」




「そうだ。」




「アラン、おびき寄せる餌はどうするのであるか?」




「ん?そんなのさっき倒しまくったノーブルオーガとラミアの死体を使えばいいだろうが。」




「アラン殿、質問いいか?」




「構わない。」




「その…人間の血肉じゃなくても大丈夫なのか?」




「ああ。あいつらは人間の肉の方が美味いだけで、魔物の肉も食う。現に、よくゴブリンを食い散らかしてるだろ?」




「確かに…」




流石元Sランク冒険者だ。


知識が豊富で様々な状況へ的確な知識を利用し、臨機応変に対応している…


そんな冒険者に俺はなりたい。




「1度決を採る。アラン殿の提案に賛成の人は挙手を。」




すると、全員の手が上がった。


誰一人として不満そうな顔をしている人がいない。




「Sランク冒険者様の考えだからな!確実だ!」




「それに俺のちっせぇ頭では他に方法も思いつかないしな!」




『これがSランク冒険者の名声か…俺も欲しいな。』




「それでは可決ということで、早速ウルフ討伐を開始する!!」




「おおおおおおお!!!!!」




それから討伐係、討伐中の周囲警戒係に分けられた。


俺はもちろん後者だ。




『ウルフと戦ってみたかったかったんだが…まあ仕方ないか。』




“気配探知“を行使しながら2階層へ全員を引率し、各員配置についた。




「アルフレッド、敵を見つけたらすぐ報告するのであるよ。」




「ああ。」




「始めるのである!!」




クラウドが地面に血肉をばら撒くと同時に、俺は有効範囲を100mに設定して“気配探知“を行使した。




待つこと数十秒




「…っ!!100m前方から13匹来てます!!到着まであと5…4…3…」




「クラウド!!」




「了解である!!」




アランの指示を受けたクラウドが弓の弦を限界まで引き、そして上空へ放った。




「…おい、あいつどこ狙って撃ってんだ?」




「いや…アラン殿のパーティメンバーだ。きっと考えがあるんだろう。」




『これは…っ!!弓Lv.7”エンドレスアロー”か!!』




俺がクラウドの行使したソードスキルに気付いた直後。


空に無数の輝きが見えた。




「お、おい!あれなんだ…?」




「あれは…大量の矢だ!!!」




ダイアウルフの真上に放つことで、一切気付かせずに無数の矢の雨を見舞わせた。




最初は食事に夢中になっているところを背後から仕留める算段だった。


しかし、




「ダイアウルフの嗅覚なら近くにいる人間に気付くはずだ…だから不意打ちは通じないと考えた方がいい。」




というアランの忠告によって変更されたのだ。




「なっ…!!」




この奇襲で13匹全て仕留め切れるかと思いきや、直撃する寸前に風切り音で気付かれた。


気付いたダイアウルフ達は左右にステップをすることで回避を試みた。


結果、13匹中7匹しか仕留めることができなかった。




俺は自分の役目を全うすべく”気配探知”で周囲を警戒していると、一つのことに気付いた。


…6匹生き残ったはずが討伐係のところには5匹しかおらず、1匹撤退していたのだ。




「…まずい!!1匹逃げ出しています!!」




「絶対に逃すな!!ウェアウルフに報告されたら総力戦になるぞ!!!」




アランが声を荒げて叫び、周囲の兵士達をその1匹に集中させた次の瞬間。


残った5匹がまるで命を賭けて1匹を逃がすように追撃を阻んだ。




「ちっ…!!クラウド!!」




「了解である!!」




弓の弦を限界まで引き、そして上空へ放った。




『これは…弓Lv.6”ホーミングアロー”か!!』




放った1本の弓は逃げ行くダイアウルフを追尾し、徐々に距離を詰めていった。


しかし、残ったダイアウルフが身を挺してその矢を受けたことで防がれてしまった。




「クラウド!!もう1撃!!」




「もう射程圏外なのであるよ…」




「ちっ…!!」




逃げ出したダイアウルフは既に100m以上離れ、俺の”気配探知”からも逃れた。




「レイフィールド殿、作戦は失敗だ!!すぐにウェアウルフが来る!!」




「そうか…皆、ここでウェアウルフを迎え撃つ!!全員、戦闘態勢を!!」




残った4匹を即座に仕留め、討伐軍は総力戦の陣形を取った。


俺は有効範囲を150mに設定して”気配探知”を行使した。




「…っ!!150m先、群れがこちらへ向かっています!!」




「弓兵部隊、視認し次第矢を放て!!」




「了解である!!!」




そして、ここから激しい戦いが始まった。

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