第31話 魔物征伐 初戦闘

「気を取り直して…進むぞ。」




「はーい!」




入り口からずっと横幅のある1本道が続いている。


レイフ兄様達が敵を殲滅しながら進み、ただひたすらそれについていった。




数分後


レイフ兄様達が足を止めた。




「この先は3つの分かれ道に分かれている!!アランパーティは左、イデオパーティは右へ進んでくれ。」




「ああ。」




「分かった。」




イデオパーティというのはダンジョン入り口右側担当だったAランク冒険者のパーティである。


冒険者の平均依頼達成率は70%前後なのだが、彼らは驚異の87%を誇っているとかなんとか。




『…そうだ、“探知“を行使してみるか。まずは半径5mに絞って…“探知“!』




すると、頭の中に半径5mの球の中にいる人達の場所と姿が脳内に流れ込んできた。


姿と言ってもナイトビジョンカメラで見ている感じで、体型くらいしか分からない。




『日時場所問わず使えて便利そうだな…!次は…』




「おい小僧、どうした?急にボケーっとして…」




「あ、すまない。周囲を探知をしようと集中してたんだ。」




好奇心が抑えきれなかった…


いつの間にかレイフ兄様達もイデアパーティも居なくなっていた。




「キミ、探知もできるの⁉︎」




「まだ訓練中だけど…多少は出来るよ。」




「そうであるか…!実はこのパーティ、罠を探知・解除する役割がいなかったであるからな…頼まれてくれるであるか?」




「あ、ああ。」




言われて気付いたのだが、罠探知という使い道もあったのか。


索敵することばかり考えていた。




『“探知“…近いうちに研究する必要があるな。』




今度は対象を魔物と罠に設定し、半径15mで行使した。




範囲内に魔物はいなかったが、罠が何個か存在していた。


罠はナイトビジョンカメラのような表示がされず、ただ罠がある場所が光るだけだった。




「じゃあ俺が先導するから…ついて来てくれ。」




「了解である。」




罠は床と壁に点在しており、先程のように触れることで作用するようだ。




「そこの壁とそこの床、罠だから避けて。」




「はーい!キミ頼もしいね!」




「ありがとう。」




先導して進むこと数分




「…っ!!」




「小僧、気付いたか…?」




「ああ。」




道が曲がっており、その先に二足歩行で2本の角が生えた巨大な魔物が2匹いた。


蓄えた知識から察するに、おそらくオーガと呼ばれるゴブリンの上位互換だろう。




「15mほど先に2体魔物がいる。アラン、作戦は?」




「俺と小僧で一体ずつ倒す。クラウドは小僧を、サロメは俺を弓で援護してくれ。」




「あーしは?」




「小僧がやばくなったら援護を頼む。」




「りょーかい!」




Lv上げのスライム討伐はただの作業だったので、実質初の魔物戦闘だ。


相手の強さが分からないまま戦うという初の試みで、緊張する。




「同時に行くぞ!…3、2、1、今!」




緊張を何とか振りほどき、全員で前に駆け出した。


魔物の姿が視界に入るや否や、俺とアランは両手剣Lv.6”ジェットスマッシュ”を行使した。




『敵がまだ気付いてない…この隙に仕留める…!!』




オーガの背後で踏み込み、突進の勢いを利用して右上段から振り下ろした。




「…っ!!」




剣がオーガの皮膚に触れた瞬間、まるで岩に斬りかかったような衝撃に襲われた。


刃が皮膚に食い込んだだけで、全然斬れない。




「…はぁぁぁ!!!!!」




師匠から頂いたグレートバスタードソードはヤワではない。


更に深く踏み込み、より両腕に力を入れた。




『ガアアアアアアアアアアアア!!!!!!』




硬い皮膚に刃が沈み始めると同時に、オーガが咆哮した。


ここで斬り殺すか1度剣を抜いて距離を取り、体勢を立て直さなければ反撃される。




体勢を取り直したとしても、オーガの攻撃に耐えられる自信がない。


ならば反撃を許さずにここで仕留めるしかない。




「はぁぁぁぁ!!!!!!!…って、ちょ…!!!!」




更に踏み込んで全身に力を込めると、プツンッと音がした。


それと同時に突然刃が通るようになり、オーガを右肩から左脇腹まで両断した。




倒せたのは良いが、俺は勢い余ってダンジョンの地面に剣を叩きつけてしまった。




「痛ってぇぇぇ!!!!!」




「アハハハハ!!!キミ、豪快だねぇ!!!」




ダンジョンの壁や床は破壊不能オブジェクトであり、世界で最も硬いとされている。


そのため反発で両腕が痺れ、それどころか胴体までジンジンする。




「おい大丈夫かよ小僧…って、は…⁉」




「どうしたアラン?」




「肩に斬りかかったのかよ…そりゃあ勢い余るわけだ。」




アランが倒したオーガの死体を見てみると、腹に剣が貫通していた。


刺突で刺さるほど皮膚は柔らかくないはずだ。




『武器の性能差か…?いや、ランクは同じSだったはずだ。じゃあどうして…?』




「あのな小僧…ってあ、そういえばまだ魔物の弱点一覧を配ってなかったな。すまんすまん。」




「アルフレッド殿。オーガは腹が弱点で1番柔らかく、肩が1番硬いのであるよ。」




「…俺、バカみたいだな。」




「てっきり小僧のことだから知ってると思ってたよ。すまんな。」




「はぁ…」




幸先の悪いスタートを切ってしまった。


脳筋バカみたいな真似をして、テンションがガタ落ちした。




「…き、切り替えていくのであるよ。アルフレッド殿!」




「ああ…ありがとうクラウド。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る