第20話 側付き

それから実験室や訓練場、解体場などの施設を巡った後自室に戻ってきた。


道中クレアとアイリスにどうやってここまで強くなれたのかを詮索されたが、適当にはぐらかした。


元貴族だと知られて態度を豹変させられても困るしな。




「校舎案内はこれで終わりだ。次は授業選択に移るぞ。」




そう言って教授がプリントを配布した。




「これから一人一人面談を行う。待っている間、説明はその紙に書いてあるから読んでおいてくれ。」




とりあえずプリントを読んでみよう。




『授業選択について。各授業はそれぞれ4単位で必要最低単位数は12、最大単位数は24である。選択授業は片手剣、両手剣、細剣…盾、体術など全ての武器を網羅している。良く考えて受講するように。』




とのことだ。




『説明薄すぎないか…?いや、少ない情報から答えを導き出す訓練も兼ね備えてるのか…?』




冒険者は頭が弱いとすぐに死んでしまうと言うしな…


まあ勘繰りは後にして、とりあえず選択する授業を決めてしまおう。




「提出した人から今日はもう上がっていいぞ。まずは小僧、廊下に来い。」




「あ、はい。」




廊下に出ると、そこには机1つと椅子2つが置かれていた。




「向こうの椅子に座れ。」




「はい。」




これだとクラス内に丸聞こえな気がするが…


まあそこまで重要な話もないだろうし良いか。




「小僧は何を選択するつもりだ?」




「そうですね…」




バスタードソードが持つ『片手剣と両手剣どちらとしても扱える』という特徴を生かすため、片手剣と両手剣、盾の選択は欠かせない。


そして師匠のおすすめである体術の選択もした方が良いだろう。




「片手剣と両手剣、盾、体術ですかね。」




合計単位数は16。


多くも少なくもない、無難な選択だろう。




「そうか…」




教授はどこか不満げな顔をしていた。




「あの…どうかしましたか?」




「正直に言うとだな…両手剣でお前に教えられることは無い。」




「えっ…⁉」




「俺は正道の流派に対し、小僧は異端の流派だ。変に俺の流派に染まったら弱くなるのは目に見えているからな。」




「なるほど…」




スキルチェインやシステムアシストの軌道を変えた攻撃は異端扱いらしい。


少し心外だが、教授の言っていることは正しい。




「…小僧は冒険者になってすぐにパーティを組む仲間はいるか?」




「いえ。いません。」




「なら昔の俺と同じだ。1人で対処できるよう、長距離と中距離の武器を鍛えた方が良いかもしれん。」




「そうですね…」




前世の俺は友達がいなかったため、基本的にゲームはソロでプレイしていた。


戦闘系のVRゲームをしていた際、確かに全ての距離感にも対応できるようなステータス振りをしていた。




「…分かりました。では両手剣は自主学習で選択は片手剣と槍、弓、盾、体術の5つでいいですか?」




「ああ。以上で面談は終わりだ。」




「ありがとうございました。」




「両手剣で対人訓練をしたいときは是非俺を呼べ!!小僧との戦闘はなかなか面白いからな…!!」




「分かりました。そうさせてもらいますね。」




俺はその場で授業選択表を埋めて提出し、寮に戻った。




「お、主席様のおかえりさね!!」




「はぁ…ただいま帰りました。」




「あ、そういえばあんたの側付きが到着して部屋で待機してるさね!!挨拶でもして来な!」




「っ!!そうですね。そうします。」




側付きにはいったいどんな人が派遣されたのだろうか…?


男性だろうか…それとも女性だろうか…?




そんなことを考えながら寮の最上階に上がった。


そして、一息ついて扉を開けた。




「おかえりなさいませ、アルフレッド様。」




「あ、ああ…」




そこにはまるでアニメの世界からそのまま飛び出してきたかのような美少女が立っていた。


メイド服を着ており、銀髪ショートカットで水色の目をした、同年代と思われる美少女だ。




「君は…?」




「私は執事学校2年主席、ソフィアと申します。どうぞよろしくお願い致します。」




「えっと…側付きは何をしてくれるんですか?」




「私に敬語は結構です。家事もこなす秘書官のように思って頂けると分かりやすいかと存じます。」




「なるほど…」




そう言われて腑に落ちた。


つまり前世で言うところの超有能なお手伝いさんということだ…!!




「改めて…俺はアルフレッドだ。これからよろしく頼む。」




「こちらこそよろしくお願い致します。」




「…」




「…」




『美少女メイド来たーーーー!!!!』




…と思ったのも束の間。


メイドとの距離感が分からず、妙に緊張して心が休まらない。




俺は疑い深い性格なので、ソフィアが刺客である可能性を考え”鑑定”した。






名前 ソフィア 種族 人間 Lv.34




HP 200/200 TP 319/319 SP 0




STR 30 VIT 40 DEX 50 AGI 55 INT 70 LUK 30




スキル


短剣Lv.3 体術Lv.3 家事Lv.7




最低限鍛えられた、普通のメイドだったようでよかった。




『あっ、疑問に思ってた戦闘外スキルってのはこの家事Lv.7みたいなスキルのことか!!』




戦闘スキルとは異なり、戦闘外スキルはただの数値である。


要は、ソードスキルのように発動できるものがないのだ。




『執事学校ってのも気になるし…今度色々聞いてみるか。』




「…じゃ、じゃあ俺は隣の訓練部屋で訓練をしてくるから…」




「では夕食のお時間になったらお呼び致します。」




「ああ。頼む。」




『打ち解けられるまで…時間がかかりそうだな。』

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