第19話 決闘②

「よっしゃ行くぜー!!!」




クレアは開始の合図と同時に勢い良く飛び出してきた。


最初は剣を交えて力量を測る予定だったので、都合がいい。




「おらおらおらおらぁ!!!」




1撃1撃は重いが、大振りでガサツな攻撃だ。


隙が多く、もし俺が短剣を装備していたら既に決着していただろう。




『…少しフェイントしてみるか。』




俺はクレアの猛攻撃で体勢を崩したように見せかけた。




「そこだぁぁ!!!」




クレアは一切の躊躇いなく、空いた左脇腹に両手剣Lv.4”インパクト”を行使してきた。


システムアシストの軌道通り、右上から左下へ行使した。




『…クレアは力業で押すタイプか。見え見えの隙を罠だと考えないし…戦闘技術が無いな。そろそろ終わらせるか。』




俺は右下から左上へ”インパクト”を行使し、攻撃を相殺した。




「なっ!!」




クレアはこれによって体勢を崩し、その上思いもよらない攻撃で困惑して次の行動へ移行できていなかった。




俺は”両手剣Lv.1”スラッシュ”へスキルチェインして追撃した。


竜人族は防御力も高いので木剣に向けて"スラッシュ“を行使し、遠くへ弾き飛ばした。




「…オレの負けだ。」




「そこまで!!勝者、アルフレッド!」




人間が竜人族に圧勝したからか、生徒間でどよめきが広がっていた。




『見せしめにするつもりはなかったが…これで決闘を申し込まれることは減るだろう。』




「アルフレッドってすっごく強いな!!そりゃあオレが主席になれない訳だ!!」




「ありがとう。」




大敗したというのに、決闘前と同じ態度で接してくれた。


クレアは本当にいい人だ。




「教授、私もよろしいでしょうか?」




「構わん。」




「ではアルフレッドさん、決闘を申し込みます。」




「えっ…?」




クレアと話していると、今度はアイリスさんが決闘を申し込んできた。




「…分かった。規則はどうする?」




「今と同じで構いません。」




「分かった。」




数分後




アイリスさんが革鎧と両手に短剣2本を装備し、舞台に上がってきた。


そこで俺は“鑑定“を行使した。






名前 アイリス 種族 白狼族 Lv.36




HP 220/220 TP 5115/5115 SP 0




STR 45 VIT 70 DEX 80 AGI 85 INT 40 LUK 10




スキル


短剣Lv.5 体術Lv.4




ユニークスキル


瞬足:移動速度が上昇する






『俊敏性を生かすタイプか。1撃1撃は軽いだろうが…ダメージが蓄積すると厄介だな。出来るだけ防ぐか回避しよう。』




師匠から全武器使いとの戦闘方法を学んではいるが、実戦は初めてだ。


一応ソードスキルに関する本を読んだおかげで、短剣スキルは全て記憶している。




短剣Lv.1“ダガー“:短剣を素早く投擲する。


短剣Lv.2 “ラピッドエッジ“:素早い2撃を放つ。


短剣Lv.3“ヴァイパーエッジ“:素早い4撃を放つ。


短剣Lv.4“ジェネシスバイト“素早い7撃を放つ。


短剣Lv.5“ジェットファング“:一瞬で敵の背後に回り、下から斬り上げる。




アイリスさんが行使できるのはこの5つのソードスキルである。




「2人とも準備はいいな?」




「ええ。」




「はい。」




「それでは…試合開始!!」




「やぁぁぁぁ!!!!」




開始の合図とともに、アイリスさんの姿が視界から消えた。


…正確には左回りで俺の背後を取った。


師匠に動体視力を鍛えられたので、並大抵の速度では見失わないのだ。




『”ジェットファング”を行使したか…なら俺は…』




「…仕留めた!!!」




背後に回った後、俺の足元に急接近して短剣で斬り上げた。


アイリスさんもクレアと同様、システムアシスト通りの軌道で攻撃するようだ。




「甘い!!」




敏捷性の高さは認めるが、頼りすぎている。


戦闘中の位置取りが単純で、もはや見なくても居場所が分かり切っている。




俺は振り返りざまに両手剣Lv.2”ドライクロ―”を行使した。


まず1撃目で短剣を2本ともを弾き、2撃目で服の中に隠されていたナイフを、そして3撃目で首元への直撃…寸前に”ドライクロー”を強制終了して寸止めした。




『これは実戦じゃなくて模擬戦だからな…』




木剣とは言え強力な攻撃が首に直撃したらの骨が折れて死ぬだろう。


冒険者学校は毎年遠征授業などで死者が何人も出ているが流石に入学当日から死者を、しかも俺自身の手で出すわけにはいかない。




「そこまで!!勝者、アルフレッド!」




「は、はぁぁぁぁ…」




アイリスさんは死を間近で実感したからか、腰が抜けて地面に倒れこんだ。


俺も師匠にやられたことがあるが、あれは本当に怖い。




「アイリスさん…大丈夫?」




「え、ええ…私ではあなたに敵いそうにありませんね…」




「そんなことはない。その敏捷性をもっと使いこなせればあるいは…」




「ありがとう…アルフレッドさん。」




「アルフレッドでいいよ。」




「では私もアイリスと呼んで構いません。」




「分かった。アイリス、これからよろしく。」




「ええ。」




剣を交えてグレイに続き、アイリスとも仲良くなれた。


順調なスタートを切れたのではないだろうか…?




「他に小僧に決闘を申し込むやつはいるか?」




クラスメイトの方を見てみると、まるで恐ろしいものを見ているかのように俺を見ていた。


そこまで冷たい目で見られると流石に悲しいんだが…




「いないようだな…じゃあ案内を続けるぞ。」




まあ…2人と仲良くなれたからいいか。

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