第2話 想起
「…か?…ぶか?…大丈夫か、アルフレッド?」
「え…あ、ううん。」
厳格な男性と、優し気な女性がこちらを見ている。
誰だろうか…?
…いや、この人達を知っている。
間違いなく俺の両親だ。
「うっ…!!」
「本当に大丈夫なのかしら…?」
この世界で過ごした記憶が突然脳内に流れ込み、激しい頭痛に襲われた。
体感は長く感じたが、実際はほんの数秒の出来事だっただろう。
「もう大丈夫です…」
「…そうか。本当に辛くなったら部屋で休むんだぞ。」
「はい。」
「じゃあ改めて。アルフレッド、誕生日おめでとう。」
「父上、母上、ありがとうございます!」
「アルももう5歳なのね~早いわ~」
どうやら神様との約束通り、5歳なったので前世の記憶を取り戻したようだ。
今はひとまず誕生日会に集中し、終わり次第状況を把握しよう。
「アルフレッド、明日から毎日剣の練習をするのだぞ。時々稽古をつけてやろう。」
「剣の…?」
「そうだ。我らペンシルゴン家は魔の森から国を守る守護騎士の称号を頂いているからな。アルフレッドは三男だから家督は継げないが…それでも家名に泥を塗らないよう鍛えるんだぞ。」
「…頑張ります!」
「ところであなた、ジルとレイフはいつ帰ってくるのかしら?」
「今は騎士学校の遠征に行ってるからな…当分は帰ってこないぞ。」
「寂しいわぁ…」
食事をとりながら会話をし、デザートを食べた後自室に戻った。
「ふぅ…まあまあ美味しかったな。」
時間ができたので状況を整理しよう。
転生先の俺の名前はアルフレッド=ペンシルゴン。
長男ジルベスター=ペンシルゴン、次男のレイフィールド=ペンシルゴンに次ぐ三男だ。
「…定番だなぁ」
しかし、実際に貴族の三男以降はファンタジーを夢見る異世界人にとって最高のポジションだ。
ある程度の教養を身に付けた後、出家して自由に過ごせるのだから。
…それはさておき、この世界は地球を参考にしたらしく、暦は前世と全く同じである。
また、文明は神様の先輩が作った世界を参考にしたらしく、異世界ものまんまである。
そのため電気やガスなどは全くない。
それにも関わらず、キッチンには水道やコンロ、換気扇などがあるのはなぜか…?
そう、これは異世界ものの定番中の定番、魔道具である。
魔道具とは、魔物の核である魔石を利用した便利グッズを総称して言う。
科学文明は進んでいないが、その分魔道具技術が発展しているのだ。
「…まあ魔道具で十分足りてるし科学は無くてもいいか。」
前世の知識チートでウハウハライフ…なんてのもやってみたいが、社畜で無知な俺には無縁の話だ。
「さて…次は肝心のステータスか。…”鑑定”!」
すると、目の前にディスプレイのようなものが出てきた。
名前 アルフレッド=ペンシルゴン Lv.1
HP 30/30 TP 10/10
STR 10 VIT 10 DEX 10 AGI 10 INT 10 LUK 10
スキル
なし
ユニークスキル
言語理解 鑑定 アイテムボックス 獲得経験値10倍 状態異常無効
「なるほど…」
説明通り、前世でやっていたゲームまんまのステータス画面である。
ちなみにSTR=力、VIT=体力、DEX=器用さ、AGI=敏捷性、INT=知力、LUK=幸運を表す。
「ユニークスキルは…ちゃんとあるな!」
これは神様から頂いた、いわゆるチートだ。
『神様、チートは何を下さるんですか…?』
「そうですね…先輩が与えていた”異世界転生セット”でどうでしょう!!」
『セットの内容を伺っても…?』
「あ、はい!説明書があるのでこちらをどうぞ!!」
『ありがとうございます。』
<異世界転生セット>
”言語理解”:全ての言語を使用可能になる。
”鑑定”:対象を詳しく知ることができる。ステータスも確認可能。
”アイテムボックス”:異空間に無限に物を収納することができる。ただし、生物は収納不可。
”獲得経験値10倍”:得られる経験値量が10倍になる。尚、効果は個人にしか発動しない。
『なるほど…ではこれをください。』
「分かりました!!あと、あなたは初めての来訪者なので私から1つ何でもスキルを授けます!!」
『いいんですか…⁉』
「はい!!」
『ありがとうございます…!!』
そして30分ほどかけて吟味し、”状態異常無効”のスキルを選んだ。
”状態異常無効”:麻痺や毒など、あらゆる状態異常を無効化する。
魔法が無い分自然回復力が高いらしいが、状態異常は死に直結すると考えたのだ。
薬草はあるが、高価なうえに採取できる場所が高難易度エリアなのだ。
「ではこの5つで良いですね?」
『はい。』
「分かりました!」
神様とのやり取りを思い出し、改めて感謝した。
さて…
現状について大体のことは把握したが、肝心の剣についてはまだ何もわからない。
剣の熟練度は数値で表すのか、Lv制で表すのか…
はたまた表記されないのか…
「…それはおいおい調べていけばいいか。」
豪華な食事で満腹になったこともあり、睡魔が襲ってきた。
まだ幼いので活動時間が社畜時代よりだいぶ短いようだ。
「今日はもう寝るか…」
これからの異世界生活を想像して幸せな気分になりながら、俺は眠りについた。
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