第41話 白壁の館

 ブレンダ、苗、日和そして咲の四人は、ゼニア・ラビリンスへやって来た。いつの間にやら陽は傾き、薄暮が辺りを包み込んでいる。

 ここへ到着するまでに、日和はブレンダの身の上に起こっている出来事を、苗は鍵を手に入れた経緯について、お互いに掻い摘んで説明した。

 日和の話は俄には信じ難かったけれども、苗と咲は疑問を後回しにして、彼女の言うことを素直に受け入れることにした。

 一旦コテージに荷物を下ろすと、荷物の番人として居残りを余儀なくされた咲を一人残して、三人は背後に見える、白い壁の洋館へと向かって行った。

 春になって、前回訪れた時以上に、白い壁には無数の苔と蔦が複雑に絡みついていた。ぼうぼうに伸び切った雑草と蜘蛛の糸が、外からの侵入者を許すまじと言わんばかりに三人の行く手を阻む。

 道無き道を、草を掻き分けながら進み、やっとのことで、正面玄関に辿り着くと、ブレンダは苗の方を見て頷いた。

 ポケットから重い鍵を取り出し、苗が鍵穴に差し込む。

 木と鉄から成る分厚い扉を一睨みして、苗は力を込めて鍵を回した。

「ガチャ、ガチャ——」何度か試みるが、鍵は途中で引っ掛かってしまう。長期間、風雨に晒されっ放しにされていた鍵穴は内部まで錆び付いてしまっているらしい。

「代わる」

 ブレンダが進み出て苗と交代すると、一旦鍵を抜き出し、改めて深く差し込んで回す。

 髪を振り乱し、両腕に力を込めて、ブレンダは必死の形相で鍵を回そうとする。最初は側で見ていた日和も、それに加わった。

「ガツン!」

 突然手応えが変わったかと思うと、急に鍵がくるりと半回転した。

「開いた」ブレンダと日和は互いの顔を見合わせると軽く頷き、日和が扉の引き戸をぐいと引っ張った。

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