第36話 同じ頃、日本 その1

「ああ、そうですか……はい。すぐ向かいますので、宜しくお願いします」竹雄が電話を切ると同時に、種が寄って来た。

 不安そうな顔で、種は父親の顔を見上げる。

「意識が無かって」

「でも、おばあちゃん、いつもやん。いっつも眠とっちゃけん」種は認めたくないと言わんばかりに父に食って掛かる。

「今回は違うらしか。おばあちゃん。昨日、目ば覚まさんやったけん、看護士さんがチェックしたら、血圧とか、心臓の動きとか、相当弱くなっとうらしい」

「そんな……」

「兎に角、病院に行こう。種、早う用意しい」

「お姉ちゃんは? 苗に連絡せんと」

「——いや、良か。苗には言わんで良い」

「は? 何で」

「知らせたっちゃ一緒やろう。直ぐに帰った所で間に合わん。それに——」

 あいつは、あいつで頑張りよっちゃけんと父は言って、種に再度外出の支度をするよう促した。

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