その16

藤沢駅北西約400メートル

日本国 神奈川県藤沢市 小料理屋「彩」


WESTPACFLT庁舎(西太平洋艦隊司令部庁舎)を後にした加藤中佐と横山少佐は、その足で鎌倉コロニーに多数設置された縮小・復元器の一つを通って「ダイダラ」に出でた。

縮小・復元器は複雑で大規模な装置だが、縮小・復元される側にとっては、ほんの数秒、自覚症状もない手軽な装置だった。もちろん、加藤中佐の車で縮小・復元器を通過した二人も、高速道路の料金所を通過するような手軽さで「ダイダラ」になった。

そのまま30分ほど車を走らせて藤沢に着いた二人は、加藤中佐の妻、沙織が営む小料理屋「彩」に向かった。加藤中佐が横山少佐を誘ったのである。

「彩」には、客の姿はなく沙織と一人娘の琴乃が待っていた。


「お邪魔じゃなかったですか?」横山少佐は、マツタケご飯をほお張りながら、すまなそうに言った。

「そんなことありませんよ。それよりも、いつも主人がお世話になっています」沙織が答えた。

「マツタケのご飯なんか何年ぶりかな。すごくおいしいです」

「残り物ばかりで、ごめんなさいね。もっと早く連絡してくれれば色々と用意して待っていたのですけど」沙織は加藤中佐を見て言った。

「そんなことありません。本当においしいです……ねっ、加藤さん」

「うん、うまい」加藤中佐はにっこり笑った。加藤中佐の表情にみんながほほ笑んだ。

横山少佐は、加藤中佐を見て、一癖も二癖もあるフーリガンズの荒くれ者が加藤中佐に従う理由が分かったような気がした。

「さっ、私は店を閉める準備をするわ。琴乃、パパの面倒を見ているのよ」といって沙織は店の外に出て行った。

沙織が店の外に出て行くのを見計らったように琴乃は携帯電話を取り出した。

「パパ、今送った写真見て」

「ん! なんだい」加藤中佐は携帯電話を取り出して琴乃が送った写真を開いた。そこには薄明かりの中を飛行する加藤中佐のサンダウナー00が写っていた。「どうしたんだ。琴乃が撮ったのか?」

「私が撮るわけないじゃない。ねっ、鎌倉コロニーの隣にある“インバンド”っていう喫茶店知ってる?」

加藤中佐は首を横に振った。

「その喫茶店って、鎌倉コロニーに出たり入ったりする飛行機が見えるんだって。マニアにすごく人気らしいの。私の同級生にもマニアがいて今日も行ってたみたい。その子がお前のパパが帰ってきたぞって送ってくれたの」

「よく撮れているじゃないか」

「その子に言っておくわ。パパを尊敬してるらしいから喜ぶんじゃない。でもね、この写真をママに見せてからが大変だったよ。パパが帰ってくるーって。お客さんの注文なんかほったらかして、急にマツタケご飯なんか作り出すんだもん。そのマツタケご飯とかは、残り物じゃないよ。ママがパパのために作ったんだよ。おかげで私がお客さんの注文を全部作らなきゃいけなくなって大変だったよ」

「ご苦労さん。大変だったな」

その言葉を待っていた琴乃は、加藤中佐の目の前に手を出して言った「特別手当!」




相模川 平塚駅北東約2キロメートル

酒匂王国連邦海軍 第6艦隊 通常動力型潜水艦<そうりゅう>(SS501)


<そうりゅう>は、新たな監視位置で露頂深度(潜望鏡が海面に出る深度)のまま星川軍の監視を続けていた。

艦長・高原中佐は、発令所の中央に座ってくつろいでいた。いや、くつろいでいるように見せていた。発令所の雰囲気は、あっという間に艦全体に伝播する。その発令所の雰囲気を作るのは艦長だ。そのことを高原中佐は知っていた。ただでさえ相模川に閉じ込められた状態で星川軍の動静を監視しているため、艦全体に緊張感が漂っている。この状態が長引けば、そのうち乗員のミスも増えてくるだろう。潜水艦にとって1つのミスは乗員全員の生死にかかわる。ミスを防いで実力を十分に発揮できる雰囲気を作らなければならない。潜水艦の艦長は、戦術や操艦技術に優れているだけでなく心理学者である必要もあった。

とはいえ、<そうりゅう>をめぐる状況は好転していた。釣り人の“攻撃”圏内からは離れ、星川軍の対潜捜索の中心は徐々に海側に移動している。おかげで露頂深度を維持できる。これまでは、30分おきに川底から露頂深度である深度7センチメートルまで浮上して星川軍の動向を監視してきた。この露頂深度まで浮上することが、乗員に度重なる緊張を強いていたのである。

潜水艦にとって、深く潜航している状態から露頂深度まで浮上するとことは危険であった。水面近くまで浮上することで、水上を航行中の船に衝突する恐れがあるからである。ソナーを使って、近くに船がいないか確認しながら露頂深度まで浮上するのだが、水中での音の伝わりは気まぐれで、ときには1メートル先にいる船の音を聞き取れない場合がある。

露頂深度まで浮上してしまえば潜望鏡やレーダーを使って水上の状況を把握できるが、これらが水面の上に出るまでの最後の瞬間は盲目状態となる。古参の潜水艦乗りならだれしも、潜望鏡が水面上に上がった瞬間、間近に船を発見したため急速潜航で衝突を回避した経験をもっている。このため、露頂深度まで浮上する度に艦内は緊張していたのである。

だが、高原中佐には気がかりなことがあった。空母<カール・ビンソン>の動向である。小出川に入ったかとおもえば、すぐに出てこようとしている。しかも、いつになく警戒は厳重だ。かといって相模川西岸への攻撃とは思えない。星川は何をしているのだ? 疑問を解消するには、まだ、パズルのピースが足りなかった。

高原中佐が堂々巡りをしていると、電信長がクリップボードに留めた電信文を持って現れた。「艦長、6艦隊司令部から特別緊急通信です」

高原中佐は電信文を一読すると、目の前に立っている副長・新井少佐に電信文を黙って渡した。

新井少佐は、電信文を読むなり声を荒げた「6艦隊司令部は、何を考えているのですか! こんな場所に閉じ込めさせておいて“可能な限り速やかに橘基地に向かえ”とは身勝手にもほどがある。星川の監視の目を逃れて相模川に入るだけでも一苦労だったのですよ。それに、すぐには海に出られません。間もなく<カール・ビンソン>が小出川から出てきます。厳重な対潜警戒がされている河口に、のこのこと出て行くことは自殺するようなものです」

新井少佐の言うとおりだ。「はいそうですか」と言って簡単に相模川を出られる状況にはない。だが、6艦隊司令部は“可能な限り速やかに”といっている。“速やかに”ではない。

この意味するところは、星川に探知されない範囲で、できる限り早く橘基地に帰港せよということだ。相模川に入って以来、常に相模川を抜け出す手段を考えてきた。準備はできている。そう考えた高原中佐は、海図台にかがみこんだ。

問題は、いつ<カール・ビンソン>が小出川から出てくるかだ。大きな川であるにもかかわらず相模川の河口は狭い。しかも河口には漁港もある。狭い河口で漁船と鉢合わせになれば、漁船の作り出す横波がまともに当たり、全長1メートルの<カール・ビンソン>であっても転覆する恐れがある。そのような危険を回避するには、漁船が出港する前に、できるだけ陸岸から離れようとするはずだ。この読みが正しければ、そろそろ<カール・ビンソン>は小出川から出てくるだろう。

そして、我々は漁船の出港に合わせて相模川の河口を通過する。漁船のスクリューとエンジンから発生する騒音に紛れて相模川を抜け出せば、もし星川が河口付近で対潜警戒していたとしても探知される恐れはない。漁船のスクリューがかき乱した水の中を行くことに不安がないわけではない。乱気流に遭遇した飛行機のように激しく揺られるだけでなく、一時的に操艦が不可能になる可能性だってある。困難で危険を伴う方法だが、星川に探知されて追い掛け回されるよりは、はるかにましだ。高原中佐は、そう考えた。

「干潮は0730です。最適ではありませんが、まずまずの潮です」相模川を抜け出す手段を高原中佐と一緒に考えてきた新井少佐も同じ結論に達していた。

「そのようだな。まずは<カール・ビンソン>のお出ましを待つこととしよう」


10分後、<そうりゅう>のESMマスト(レーダー波などを探知する受信装置を先端に装備したマスト)が<カール・ビンソン>から発せられたSPS-49対空レーダーの電波をキャッチした。<カール・ビンソン>が小出川から出てきた。高原中佐の読みは当たった。

「よし。こちらの読みどおりだな。副長、我々は漁船に隠れて相模川を脱出することにする。それまでは、ここに留まろう」

「わかりました。ここを出発したら荒天準備を発令したいと思います」現在の位置を離れて河口に向かう時間を計算していた新井少佐が答えた。

「そうしてくれ。漁船が真上を通過するときは激しく揺れるぞ。非番の者は全員ベルトを締めて寝かせよう……私は、少し時間があるので1時間ほど仮眠をとってくる」高原中佐はそういって艦長室に向かった。途中、士官室で夜食をとってから寝ようと思ったが、腹にくい込み始めたベルトを見て、そのまま寝ることにした。

5分後、艦長室の前を通り掛かった若い水雷士は、艦長室から聞こえてくる地響きのような音を聞いた。その音がいびきだと気付いた水雷士は、驚きとともに感心もした。こんな張り詰めた状況でも、艦長はいびきをかいて寝られるんだ。潜水艦訓練教育隊の初級士官コースを卒業したばかりの水雷士は、目の前の業務をこなすだけで精一杯だった。自分が艦長になることなど考えたこともなかったが、艦長になるには、このくらいの度胸が必要なんだろうなと思った。自分にできるかな? まあいいさ。艦長に余裕があるということは、当面は安全だということだ。水雷士は、そう思いながら魚雷発射管室に向かった。




鷹取川 追浜駅東北東約750メートル

星川合衆国陸軍 Fort鷹取(陸軍鷹取駐屯地) 3/75Ranger庁舎(第75レンジャー連隊第3大隊庁舎)

星川合衆国追浜コロニー


朝、新しい1日の始まり。庁舎1階の3/75Ranger アルファ中隊本部事務室では、早朝トレーニングを終え国旗掲揚までのわずかな時間を利用して、それぞれが思い思いのことをしていた。

その中の一人、この部屋の主であるアルファ中隊長・上沼大尉は、前屈みで椅子に座り、器用にナイフを使って一片の木を削っていた。

中隊最先任下士官である“トップ”大谷先任曹長は、今日一杯目のコーヒーを飲みながら、上沼大尉の手元を覗いて言った。「また、遼太くんのおもちゃを作っているんですか?」

「あぁ、先週、遼太を連れてスプリントカップを見に行ったんだが、その時に見たペースカーをえらく気に入ってな。今度はペースカーを作ってくれと言いやがった」上沼大尉は、手を止めて言った。

「ペースカーって、サーキットで車がクラッシュしたときなんかにコースに入ってくる車のことですか」

「そうだ。主役のストックカーには目もくれない。遼太にとっては、どれも同じなんだろうな」

「遼太くんは、将来、カーレーサーですか」

「それが問題なんだ。遼太は、よりにもよってインディ500のレーサーになるんだ。なんて言い出しやがった」

「いいじゃないですか。優勝すれば牛乳をたらふく飲める」

「冗談じゃない。俺の遼太に、あんな危険なまねはさせられんよ」

「へっ! よく言いますよ。真っ先にカーゴからジャンプする中隊長殿の危険に比べたら、インディ500の危険なんて鼻くそみたいなもんでしょう」

「いいかいトップ、我々の危険は管理され、許容された危険だ。それに、あんなモンスター・マシンに遼太が乗っていると考えただけでも心臓が止まりそうだ」

「はいはい、来月からは、うちの大隊がRRF(レンジャー即応部隊:18時間以内に出撃できる態勢で待機する大隊。3個大隊で構成された第75レンジャー連隊の1個大隊が1か月ごとに輪番で待機する)です。それまでに作っちまってください」

「そうだな。急がないと」そういって上沼大尉は、木彫りを再開した。


のんびりした雰囲気のアルファ中隊とは違い、庁舎2階にある3/75Ranger本部事務室は緊張感が漂っていた。3/75Ranger大隊長・青柳中佐は早朝トレーニングに向かおうとした矢先、連隊長から呼び出しを受けた。

大隊長は、副大隊長兼先任参謀であるS-3(大隊作戦担当将校)と、S-2(大隊情報担当将校)を伴って連隊司令部に向かったが、それ以来戻らなかった。

出番だなと思った沢原大隊上級曹長は、1/75Rangerや2/75Rangerに探りを入れてみたが、これといって変わったことはないようだった。なぜ第3大隊だけ?

沢原大隊上級曹長は、国旗掲揚時間になっても青柳中佐が戻らないのであれば、配下の中隊先任曹長に状況を知らせておこうと考えていた。その矢先、目をギラギラとさせた青柳中佐が大隊本部に戻ってきた。沢原大隊上級曹長は、青柳中佐の目を見た瞬間、やはり実戦だと直感した。

青柳中佐は、直ちに大隊指揮グループと、各中隊長を大隊長室に集めろといって自室に消えた。S-3とS-2は無言で青柳中佐に続いた。


「いったい何事なんだ……ともかく俺は、オールドマン(大隊長)のところに行ってくる」青柳中佐の呼び出しを受けた上沼大尉は、愛用のノートを手に取ると早足にドアに向かった。

「第1小隊が今から射撃訓練のため射場に出発します。どうしますか?」大谷先任曹長は、上沼大尉の背中に向かって言った。

上沼大尉は、一瞬考えた。もしかしたら緊急事態かもしれない。そうだとすると、戻すのに余計な時間を食う。ならば、少しのあいだ待たせておこう。「俺が戻るまで待機させてくれ」そう答えて急ぎ事務室を出た。


上沼大尉が部屋を出ると、廊下を挟んで反対側にあるブラボー中隊本部事務室から下田大尉が出てきた。

「いったい何事ですか?」上沼大尉は、顔を合わせるなり下田大尉に言った。

下田大尉は、下士官からのたたき上げで、実力によってレンジャー中隊長の座を獲得した努力の人だが、規律にうるさい堅物だった。

陸軍士官学校出身の上沼大尉より8歳年上の下田大尉は、日焼けした顔の眉を寄せて言った。「俺にもわからんよ」

「RRF(レンジャー即応部隊)の順番が回ってくるのは来月ですよ。」

「そうだが、ここで、あれこれ詮索してもらちがあかん。オールドマンのところに行けばおのずと分かるんじゃないか」下田大尉は、上を見上げて言った。

「それもそうですね。急ぎましょう」


「よし、そろったな」S-3(大隊作戦担当将校)兼副大隊長・松沼少佐は、上沼大尉と下田大尉の顔を見るなり言った。決して広くない大隊長室は、大隊指揮グループと、中隊長達によって埋め尽くされた。

「全員そろいました。ボス」松沼少佐は、大隊長・青柳中佐にそう報告して自分の椅子に座った。

青柳中佐は頷くと椅子から立ち上がり、ギラギラした目で部屋にいる大隊首脳を見渡した。「諸君! 出番だ!」そういって、再度大隊首脳を見渡した。

青柳中佐の言葉を聞いた大隊首脳は、それぞれ手に持ったノートやメモ帳を取り出した。

「ノートはしまえ」青柳中佐は指で頭を突きながら言った「これから話す内容は、すべて頭の中に書きとめろ。許可があるまで口外も禁止だ。わかったな」

大隊首脳は黙って頷いた。上沼大尉も黙って頷いたが、これは厳しい任務になりそうだと思った。

「では、順を追って説明しよう。昨日、海軍の偵察機が香貫の核ミサイル基地を発見した。場所は……あそこだ」青柳中佐は、大隊長室の壁に貼られた関東地方の地図の一点を指差す大隊S-2に向かってあごを突き出した。

「香貫は、よりにもよって伊勢原のど真ん中に核ミサイル基地を造った。ここから発射されるミサイルの射程圏内には首都コロニーも含まれる。気象条件しだいでは、東京湾沿岸のコロニーも攻撃できると専門家は言っている」

青柳中佐は、少尉に任官してから18年経つが、これが初めての実戦だった。実戦経験のない空挺将校として肩身の狭い思いをしてきたが、それももうすぐ終わる。しかも彼の人事記録には、極秘の作戦に参加したことを示す記号が追加され、いっそう箔がつく。初めての実戦に対する不安もあるが、レンジャー大隊を預かる誇りにかけて、任務をやり遂げる。そう考える青柳中佐の目は、いっそうギラギラと不気味に輝いた。

「そこで、我々の出番だ。我々は、この核ミサイル基地を訪問して核弾頭を頂戴してくる。香貫は丁重に出迎えてくれるだろうが、のど元に刺さった骨は、誰かが抜かねばならん。その誰か、それは我々レンジャー以外にはいない。そうだろ? 諸君!」

大隊首脳は、声を出して笑いこそしなかったが、ほほ笑んで頷いた。

その中の一人、上沼大尉の一期後輩であるチャーリー中隊長・沢田大尉が声をあげた。「オーケー! やってやろうじゃないですか。ですが、なぜRRFの第2大隊ではなく我々なんですか? 空軍ご自慢のステルス爆撃機が、基地ごとふっ飛ばせば簡単だと思いますが」

「これから説明するつもりだったが、まあいい……まず、航空機による攻撃は選択肢にない。この基地はダイダラの建物の中に設置されているのだ。我々がダイダラの建物をペシャンコにでもしてみろ。大騒ぎになる。それに、爆撃の影響で放射能漏れをおこしたら、それこそダイダラ世界は蜂の巣を突いたような騒ぎになる。だからこそ、ダイダラに気付かれずに核弾頭を奪って持ち帰らねばならんのだが、ダイダラに気付かれないように秘密裏に行動しようと思うと、RRFでは目立ちすぎる。緊急対処の部隊が慌しく動き始めると、その理由を説明しなければならんからな。だが、我々であれば抜き打ちの緊急展開訓練として説明できる…… そういったわけで、我々に出番が回ってきたわけだ」

納得した様子の大隊首脳に満足した青柳中佐は、その後の説明を松沼少佐に委ねた。


上沼大尉は、松沼少佐の短い説明を聞いて予感が当たったと思った。それにしても情報が少なすぎる。これでは具体的な作戦のイメージが湧かない。

「情報がこれだけでは準備ができない。そうだろ」青柳中佐は大隊首脳の気持ちを代弁して話し始めた。「早ければ今日の夕方にも準備命令が出されるはずだ。それまでは任務に必要な情報など手に入らん。だが、必要な装備の準備ならできる。直ちにカテゴリ1Bの準備を始めろ。本日1600時に任務前点検ができるようにな。いいか、忘れるなよ。許可があるまで、今いる我々以外にこの件を話してはならない。当面は、緊急展開能力の抜き打ち査察に向けた事前準備だといって押し通せ。質問はあるか?」

大隊首脳からの質問はなかった。

青柳中佐は、立ち上がって言った。「今から準備にかかる! フーア」

大隊首脳は、「フーア」と言って一斉に立ち上がり、大隊長室を後にした。

第75レンジャー連隊の歴史に新たなページが追加されようとしていた。

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