混浴の果てに

「直也さん! しっかりして下さい!」


  そう言うとサクヤはバチンと直也の頬を手で強く叩いた。サクヤに平手打ちをされた直也はショックで正気を取り戻した。

 直也は打たれた頬を抑えながら唖然とした表情で周囲を見渡しながら今の状況を思い出して、どうしようかと秒で対策を考え太古から存在するある設定を思いついた。


 

「一体何が起こったと言うのだ。何故ここに? 何故僕はみんなと風呂に入っているんだ?」


  直也の表情からは驚きと混乱が見て取れる。まるで本当に何もかもを忘れてしまったようだった。


 「直也様? どうされたのですか? 直也様は何も覚えていないと言うのですか?」


 「はい、全く記憶にございません。イズナさんまでそんな格好をして、本当に何があったのですか?」 


 イズナのバスタオルを巻いただけのセクシーな姿に少し顔を赤くしながら、恥ずかしそうなふりをして直也は答えた。


 「本当に覚えていないのか?」


 バスタオル姿のマリーは、うんと頷き記憶にないと言う直也の顔をまじまじと確認している。


 「嘘をついている様には見えませんね」 


  バスタオル姿のサクヤが言うように、みんなには直也は嘘をついている様には見えなかった。


 

「旦那様はさっきまであたいをあんなに攻めまくっていたのに、忘れてしまったのか? 更衣室のトイレで、あたいに子を沢山産んで欲しいって言って、あたいを散々虐めたじゃないか」


  バスタオルをはだけさせ、体をくねくねさせて色々なモノが見えたり見えなかったりと扇情的な姿のレーヴァが色っぽくそう言った。 


 「変なことを言うなよ! お前はずっと一人で妄想していたじゃないか! 僕はそんなことは一言も言っていないし、断じてトイレで虐めてもいないどころかトイレにすら入っていない!!」


  レーヴァの危険な発言に黙っていられなくなり、直也は思わず設定を忘れて声を張り上げ突っ込んでしまった。


 「あら主様?記憶は忘れてしまわれたのではなくて?」


 「・・・・・・、」


 「直也(さん)(様)」


  婚約者の女性達に白い疑惑の目でじっと睨まれてしまう。直也は思わずレーヴァに突っ込んでしまった己の失策に気が付き、顔を青くしながら「ははは、」と何とか誤魔化す方法は無いものかと考えていると、リーシェが直也を庇う様に抱きついてきた。


 「直也さんは悪くありません。私の裸をくまなく全部余すところなく見てもらってから、興奮する直也さんに、一緒にお風呂に入りましょうと誘った私が悪いのです。責任は私が取ります」 


 「言い方! いつも言っているでしょうが言い方に気を付けなさいって、うわ、リーシェ離れて、離れて色々と当たっているから!」


「こらリーシェ! 直也様から離れなさい!」


「直也さんのエッチ!」


「直也、私もいつでもオーケーだぞ」


「あたいのドキドキハートビートも感じていくれよう」


  リーシェから漂うフェロモンの良い香りと、抱きつかれ密着されその柔らかな肌の感触に女性を感じてしまった直也の直也君は、元気一杯に天に向かっていきり立つようにおっきてしまった。


 それは誰も責めることは出来ない、自然で正直な男性の生理現象であった。


 「ムムム、主様のあそこが大きくなっています」


 アスが気づき後ろから直也の股間を覗き込むと、湯船の中で自己主張する直也君を見つけてそう言った。


 「え?」 


  直也は湯の中の自分を確認すると、元気一杯な分身が天に向かっていきり立つ姿がはっきりと見えている事に気が付く。


 「うわっ!」


 直也は慌てて股間をタオルで隠しながらすっぽりと湯船の中に隠れるが、時すでに遅く、アスの言葉に誘導された婚約者達は直也のおっきして大きくなった直也君をバッチリと見てしまい、真っ赤になって固まっていた。二人ほどはやたらと興奮していたが。


 直也はぶくぶくとお湯から顔を半分だけ出して自分の婚約者達の顔を窺う。


「直也しゃまの・・・ああっ!」とフリーズしてしまう者、


 「・・・・・・あう、あうあう」顔を真っ赤にしながら俯いてあうあうと呟いている者、


 「直也・・・貴様こんな刀を隠していたのか」と直也の顔を驚愕の表情で見つめている者、


 「大きくなった責任は、私が取ります?」とは言うが一体どうすれば良いものかと首を傾げて悩む者、


 「その旦那様の立派で素敵な怒りん棒で、あたいのことを虐めて天国の果ての先にまで昇らせてくれよう」と興奮して詰め寄って来る者、


「お久しぶりね、直也君。良い子良い子、相変わらず元気一杯だね!」と不穏当な言葉で直也君に話しかけて来る者と、反応は様々である。


  一つだけ言えるのは既に抜け駆け混浴事件によるみんなの怒りが、直也君参上の直也インパクトで既に失われているということ。直也は何かを失い、でも勝利を勝ち取ったような、そんな気がした。


 

(熱い、のぼせてきた。頭が少しボーっとする)


  一連の騒動が勃発してから、もう結構湯に入っている。直也は緊張も手伝ってか湯にのぼせてしまっていた。


 (早く風呂から上がらないと)


  直也君を触って弄ろうと手を伸ばしてくる大胆な二人の頭を手で押さえつつ、フリーズしてしまった婚約者達に囲まれたお風呂からの脱出を試みようとする直也ではあったが、結局その機会が訪れることはなかった。


 「もう駄目、限界」


  体中を真っ赤にさせながら、クラクラする頭で何かを掴むように天井に向かって両手を上げた直也はそのままのぼせて気絶して湯船の中に沈んでしまった。


 

 直也が気絶したことに気が付いて正気に戻った婚約者達は、慌てて全裸の直也を風呂から上げると、脱衣場にある背もたれの無い長いベンチの上に運んで寝かせて介抱を始めた。だが、誰一人として直也の直也君をタオルで隠してあげる優しさを持った者は最後まではいなかった。全員直也に手厚い介抱をしながら、直也君をじっくりと穴が開くほどに愛でていた。


 


  翌日、自室のベッドで目を覚ました直也の抜け駆け混浴事件の罪は、直也の直也君の晒し姿を持って婚約者達に許された。


 みんな直也を見ると赤くなってしまうが、とっても機嫌よく優しくしてくれたという。


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