すれ違う運命
僕がこの時代へ来てからもうすぐ1ケ月の時間が経とうとしている。
目覚めて間もない頃、僕は苦しくて辛い時間を過ごした。恋人を失い、何故こんなことにとなってしまったのかと運命を恨み、自分を見失ってしまった。
でも、彼女達が僕を救ってくれた。僕にこの時代で生きる目的を与えてくれた。僕にもう一度この世界で生きてみたいと思わせてくれた。
元気で明るくて、笑った顔がとても可愛いサクヤさん。彼女の優しい親切や思いやりは僕の心をいつも温かく包んで支えてくれる。
厳しくも温かい心を持った愛情深いマリーさん。少しだけ困らされる事もあるけれども、彼女の言葉は僕の心に前を向いて歩く力をくれる。
千年もの長い時間ずっと僕の願いを守り続けていてくれたお稲荷様のイズナさん。彼女はずっと変わらず僕の幸せを願い続けてくれていた。
森の妖精エルフの少女リーシェとはある出来事がきっかけで最近知り合った。彼女の持つおおらかさにはいつも心を癒される。
大戦で敵同士として戦ったが最後に、僕の命を救ってくれたアスモデウス。彼女は死にかけの僕を助けるために自分の魂を代償に差し出した。
5人とも僕に特別な好意を持ってくれている事には気が付いていた。でも僕には誰か選ぶことも、これ以上の関係を先に進めることも出来なかった。
僕はまだ自分の心に整理をつけることが出来ていない。僕はまだ桜の事を愛している。
もう彼女がいないとは分かっている。が、僕は死ぬまで桜を愛し続けるだろう。高杉直也という人間は白崎桜という一人の女の子のためだけに今まで生きてきたのだから。
彼女達の好意はとても嬉しい。正直、僕も彼女達に惹かれている。いつかは僕も彼女達に正面から向き合って応えたいと思っている。
でも今はもう少し時間が欲しい。今の僕ではまだ彼女達の気持ちに応える資格もない。
今はもう暫くこの友人関係を続けていきたいと考えていた。
しかしながら本日、急転直下の出来事が起きた。可愛がっていたドラゴンパピーのレーヴァが大人の女性に成長して僕の前に現れ、彼女達に戦いを挑んだのだ。レーヴァ曰く、僕の一番の恋人を争う戦いだそうだ。
みんなはレーヴァの挑発を真に受け次々と僕への想いを語る。
彼女達は真剣な思の丈を僕に話たのだから、僕も逃げずに気持ちを正直に伝えなければならないと思った。
そのためには何とかして、目の前で行われようとしている争いを止めて、僕の話を聞いてもらう必要がある。
彼女達を戦わせて、傷つける訳にはいかない!
僕は一触即発の状態で睨み合うの彼女達の間へ、覚悟を決めて飛び込み大声で叫んだ。
「もうこれ以上はの争いはやめて下さい。みんなの気持ちは僕が受け入れますから!僕が誠心誠意責任を取りますから」
(この争いとなった原因である僕がみんなの話を聞き入れて、誠心誠意納得いただけるまで説明責任を果たす所存であります)
「エッ、誠意を持って責任を?直也さんが全部の話を受け入れる?」
(直也さんが私の愛を受け入れて責任を取ってお嫁さんにしますってことですよね)
「直也が私の愛を受け入れて責任を・・・」
(直也を愛した私を受け入れて、責任を取って妻に迎えてくれるってことですね)
「はわあわわ」
(みんな責任を取って受け入れるって、私も欲しいってことですか。嬉しいです)
「だ、旦那様が誠意を、責任を!あたいもみんなもまとめて受け入れるって!」
(あたいの計画とは違うし一番のは惜しいけど、今はこの波に乗らない理由はないわ)
「直也しゃま、私はもう離れません」
(私の愛を受け入れてくれた。誠意を見せて責任を取って結婚してくれるって言ってくれた)
「うふふ」
「むふふ」
「エヘヘ」
「ぐふふ」
僕の気持ちはみんなにちゃんと伝わったみたいだ。殺伐としていた雰囲気や険しい表情が緩み、僕は安堵する。
「良かった。みんな僕の気持ちを分かってくれたかい?」
「はぁーい」×4
「主様。たった一言二言の言い間違いが、こんなにもすれ違いを生んで引き返せない大変なことになっちゃったよ」
「?」
僕がアスの言葉の意味を理解したのは、「違うんです。誤解なんです。言い間違えたんです」と今更ちょっと言うに言えない位に、彼女達が喜び嬉しそうにしている時だった。
「ちょっと、直也ったら私を忘れてないかしら」
仲間外れにされたジョニーがて拗ねてしまい、冒険者登録の時にまたひと悶着有ったのは言うまでもない。
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