第7話

「それはだな…10月24日だろう?」


 セリーヌの問いに答えるべく、必死に思い出そうとするも全く思い出せない。


「違いますわ。6月2日です。正解するなんて微塵も思っていなかったから別に間違えてもいいのです。それくらいお父様が私に関心がないと発覚しただけですわ。正解出来なかったお父様、今日は何月何日ですか?」


 父は娘の誕生日すらわからず、正解出来なかったので少々気まずげな表情だ。


「今日は6月25日だ。それが一体何だと言うんだ?」


「先日の6月2日に私は誕生日を迎え、18歳になりました。そう、成人しましたの。成人してすぐヴォクレール伯爵になる為の手続きを完了させました。カトリーヌお母様の遺言書を預かった弁護士さんにお手伝いして頂きましたが、無事私は伯爵となり、伯爵家の権利一切は私に帰属することになりました。つまり、もういつでもお父様達を伯爵家から追い出しても良いのです」


(結婚式の準備の為に我が家はゴタゴタしていて、誰も私の動向なんて気にしていなかったから、楽に事を運べましたわ。自分の誕生日がたまたま結婚式の準備期間に被って運が良かった。この点だけはあの二人に感謝です)



「今日はめでたくもミリィとイアン様の結婚式。ミリィの門出を祝って、ミリィ・お父様・お義母様にはこの後早速伯爵家から出て行ってもらいますわ」


 セリーヌの言葉に三人は顔を真っ青にして土下座して謝罪する。



「セ、セリーヌ、今まで悪かった! 謝るから伯爵家から出て行けなんて言わないでくれ!」


「私達が悪かったわ! これからはちゃんとするわ! だからこれからも伯爵家にいさせてちょうだい!」


「今までごめんなさい、お姉様! お姉様になんてことをしてしまったのか……今では反省しているわ。だからイアン様と私、それからお父様とお母様も一緒にこの伯爵家で生活させて!」


 三人の謝罪と懇願に、セリーヌは今日一番の笑顔で告げる。


「お断りさせて頂きます。三人とも渋々謝っているのが丸わかりですわ。頭を下げるのとこれからの生活を天秤にかけて頭を下げる方を選んだだけでしょう? 先程自分達がいい思いをする為に、ミリィに伯爵家を譲れと主張していたのに、私がもうすでに伯爵でいつでも追い出せると言った途端これですわ。誰がこんな謝罪を受け入れますの?」


 セリーヌが断りを告げた瞬間、三人は悪態をつく。



「くそっ、いきなり出て行けと言われても……住むところはどうしたらいいんだ? それに生活する金は?」


「ちっ、私達の生活費は当然あんたがくれるのよね?」


「追い出されるのだから、私とイアン様の新居を建てる用のお金と私達の生活費は貰うわ!」

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