ウチの領主様は・・・神かもしれねぇ・・・

カゼタ

第1話 大変だ!宝物庫から金貨が溢れて爆発した!!

 爽やかな正月、元旦の空気を肺いっぱいに吸い込み、酒臭い息を吐きだす。水を一口。造りの安っすい酒瓶と、締まりのない寝顔をしたウチの領主様が転がっている部屋を見渡す。うん、平常運転だ。まだ二日酔いは醒めないし、二度寝の誘惑に8割方負けかけているけれど、とりあえず私は、目の前の厄介事、同僚のフラヴナの話を聞くことにした。

「手短に言ってくれろ?」

「うん、宝物庫から金貨が沸きだして、宝物庫が爆発したんだわ」

 うーん、夢の中で見る夢って、こんな感じだったよなぁ・・・やっぱり寝ようかな・・・そうして私は、惰眠を貪るためにさぼるためにゆっくりと瞼を閉じていき

「おい寝るな現実だ起きろ逃げるな自分だけずるい私もうおうち帰りたい!!!」

 フラヴナに胸倉を掴まれてカックンカックンやられたため、仕方なしに現実と思われる方に意識を向ける。

「うん、うんわかったから、とりあえず聞くから!なしたの?」ひとまず執務室の応接セットに彼を誘導し、落ち着かせて話を促してみる。

「オイラもついさっき起きて、食堂で元帥ののシャルル様とバッタリあって、朝の爽やかお下劣トークを繰り広げてたら、地下の素寒貧宝物庫(笑)から、どえりゃあ爆発音がケツに響いてさ?慌てて二人で駆け付けたさ。したっけ、宝物庫のドアをドドーンッ!!とおっぴろげて、金貨の津波さ。昨日の年締め確認で金貨なんて23枚しかなかったんだで!?そのうちドワッ宝物庫から金貨が溢れてきたから、ワッ!と逃げたからいいものの、あそこで突っ立ってたら金貨に殺されてたべなぁ・・・お前、見たべ?え?まだ見てねぇ?湧き続けてっぞ、金貨。家令としては嬉しいけんども、どうすっぺよ・・・」

 確かに、やたらと変な金属音が今も下から響いているのは感じていたが、そんな突飛な状況になっているとは・・・新年早々の大事件に、重い溜息が出る。ひとまず、そこでのぺ~っとスケベ笑いの混ざった寝顔をさらしている領主をたたき起こすため、横に転がっている酒瓶を静かに持ち上げることにした。


時に、西暦867年、1月1日。とある片田舎から、この世界を激変せしむる事件が起きようとは、まだ誰も予想することは出来なかったのである。

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