清純カチカチサキュバスと純情ドスケベボーイ
一山幾羅
サキュバスと土下座
土井平助は、自分の目の前にいるのがサキュバスであると確信していた。
頭の両側にある、湾曲した小ぶりのツノ。尻と腰の間の辺りから伸びている体毛のない黒く細い尻尾。
そんなものが身体にくっついている女性が普通の人間であるはずがない。間違いなくサキュバスだ。
しかし、それにしては成人女性というよりも同年代の女の子くらいの背格好にしか見えない。
着ている服も一般的なサキュバスのイメージにある扇情的なものではなく、肌の露出がほとんどない真っ黒で野暮ったいものだったりする。
体つきも男を魅了するためのグラマラスなそれではなく、どちらかと言えば何の感慨も抱けないくらいに平坦そのものである。
ツノと尻尾がなければ普通の、それも少々地味めの少女という印象でしかない。
だが、そんなものは全部瑣末なことである。
重要なのは、地味で野暮ったく、セクシーとは程遠い普通の女の子であろうが、彼女がサキュバスであることに違いはないということだ。
その事実に比べれば、一般的なイメージからかけ離れた外見がなんだと言うのだろう。
よくよく見れば顔は普通に可愛いし、ゆるいウェーブのかかったロングヘアも彼女に似合っていてとても可憐だった。
自分的には全然オッケーだ。こんな子に誘惑されたら余裕で全てを放り出し、魂まで捧げても構わないと思える。
だが、そのサキュバスは何故か今、平助の目の前で深々と頭を下げた綺麗な土下座の姿勢を取っていた。
さらに、その姿勢のまま、あろうことか大声でこう懇願してきた。
「どっ……どうか、お願いですから私を襲わないでくださいぃぃ!!」
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