第11話 動画鑑賞②
リンク先の動画は公式のものの様で、各試合ごとにチャプターが付いていたので、3試合目までスキップさせる。
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「さぁさぁ、盛り上がって来ました第7回・全国高校生ブレバトグランプリ決勝戦!
東東京代表のクラーク電子工業高等学校と、京都府代表の祇園女子高等学校の戦い、ここまでまさかまさかの祇園女子の2連勝。そこまで実力が離れているわけではないが、流れは圧倒的に祇園女子。次の個人第一試合で優勝を決めてしまうのか⁉︎」
「しかし、連敗となりましたがクラーク電子は個人戦は強いですからね。
エース対決となる3戦目・個人第一試合で祇園女子は優勝を決めたいところですね」
「そうですね!
祇園女子のエースは『雷帝』の異名をも持つ未だ公式戦無敗の
私も何度か実況をさせて頂きましたが、まさに鬼神の如き強さ、負ける姿を想像できません。
対するクラーク電子、こちらは『
去年こそSaeKaとの公式対戦はありませんでしたが、こちらも圧倒的な強さを誇るクラーク電子の支柱とも言える存在。
ここで雷帝を討ち流れをクラーク電子に引き寄せることができるか!?」
実況の声が響くと会場のボルテージは一気に上がる。
「さぁ、両選手がバトルフィールドに転送されます」
すると画面に2人のアバターが投影される。
一人は真紅な西洋鎧に身を包んだ騎士だ。刺突に特化した槍と、身体の上半身が隠れるほどの
縦のスリットが複数入ったフルフェイスの兜を装備しているため、その表情は窺い知れない。
そしてもう一人は、上は白に下は紺の袴姿。胴と肩に武者鎧を装備し、腰には鞘に収まった日本刀を佩いた女侍のアバターであった。
鉢金を額に光らせ、絹の様な黒髪を朱色の和縄でポニーテールに纏めた美しい少女が真っ直ぐに相手を睨みつけている。
この人、強い……
画面越しだが、一目でこの女侍の強さを感じ取れた。
師匠にも似た、ただ立っているだけで周囲の空気が浄化される様な、静謐たる強者独特のオーラを纏っていた。
「さぁ、フィールド選択は……」
実況がそう言うと、景色が切り替わった。
ゴツゴツとした岩の転がる岩石砂漠。
「おっと、これは『荒野2』のフィールドだ。
これならば二人とも属性を存分に発揮して戦えるぞ。
さぁ、間もなく試合開始だ」
実況が盛り上げる。
「SaeKa。貴女の無敗記録もここで終わりだ!」
赤い騎士が真っ直ぐ槍を前に突き出す様に構える。
対する女侍は腰を落として「キン」と鞘から鍔を数センチほど押し上げる。
Ready!
3…2…1…
Fight!!
バトルが開始される。
まず最初に動いたのは赤騎士。
開始と同時に槍が炎を纏う。
そして、その槍を3度振るうと炎を纏った緋色の衝撃波が3つ女侍を襲う。
「これはオート発動を設定していたであろうスキル【
すかさず解説の言葉が飛ぶ。
女侍は居合の構えのまま動かない。このまま斬撃が当たるのかと思われた瞬間
パリッ……
小さなスパークを残して女侍が消える。
(早い)
カメラは動きを捉えきれておらず、女侍の姿はフレームアウトしてしまった。
パリッ
再度スパークが走る。
それに合わせてカメラがそちらに向く。
(カメラ、遅い。もう侍は騎士の懐に入ってる)
ギギギィィン!!!
閃光とともに金属音が響く。
間一髪、騎士が盾で斬撃を防いだのだ。
「ぬおおっ!」
次いで騎士が盾を前に出し、相手の視覚を遮り、そこに生じた死角から上段蹴りを放つ。
女侍は腕に装備した鉄甲にて防御するがその勢いに弾き飛ばされた。
二人の間に距離が出来、再度二人が睨み合う。
「電光石火。まさに一瞬の攻防っ!
目で追うことができない程の高速な攻防があった模様。体力ゲージ的にSaeKaのゲージが減っているのでディーンの一撃が入ったということでしょうか?」
「いや、まだ『First Attack』の判定が出ていないので、削りダメージのみですね。未だクリーンヒットは出ていません」
実況と解説が言葉を交わしているうちに、戦況も動く。
「一気に決めさせてもらうぞ!
スキル【属性纏衣】、全身展開!!」
槍のみ纏っていた炎が全身に広がり、騎士の全身が紅蓮に染まる。更に纏った炎が背中から翼の様に展開される。
これはスキル【属性纏衣】のもう一つの使い方。全身に属性を纏わし付属効果を全身として効果を底上げする代わりに、徐々に体力が減少する、いわゆる『奥の手発動』だ。
「うおおおおおおおおお!!!」
地面を蹴ると炎と共に地面が爆発する。
さらに纏った炎を後方に吹き出して、まるで地面を滑るかのように加速する。
使用したスキルである【
女侍は迎え撃つ為、刀を納刀し居合の構えを取る。
が――
「喰らえ! 攻防一体の我が奥義『
赤い騎士は盾を構えたまま、炎を纏った弾丸となって突撃する。全てのスキルを俊敏に乗せてでのシールドバッシュだ!
これにはカウンターの居合抜きを狙っていた女侍も目を見開き対応を変える。このままカウンターを仕掛けても、刀は盾に阻まれ、逆にとてつもない質量の逆カウンター攻撃を喰らうこととなるのだ。
「スキル発動【
女侍は切り札であるスキルスロット2つを使用すする『一部ステータスの制限解除』を行うスキルにて回避に切り替える。
パリリッ!!
間一髪、スパークを残して回避に成功する。
「ちぃっ! まだだ!!」
赤騎士は攻撃が回避されたと見るや、体を大きく回転させる。
すると推進力として使用していた炎の噴射が、まるてスプリンクラーの様に全方向に撒き散らされ、さらに突進方向と逆方向で回転を止めることにより炎を逆噴射として利用して自らの動きを止めた。
「ぐあっ!」
必死に回避してた女侍はその炎の波に飲まれダメージを受ける。
「おおっと、ここでシールドバッシュからの全方位火炎放射のコンボが炸裂。
この試合はじまって58秒で遂にFirst Attack判定。
SaeKaの体力が一気に7割にまで減少!」
「これは痛いですね。しかも、ディーンは追加で攻撃を仕掛けるみたいです」
解説が言うように、赤騎士は槍を構えて追撃を行う。
「SaeKa! お前の無敗記録はここで終わりだ! 必殺『
炎の翼を広げ、更に炎の推進力を得て突撃して槍の刺突乱撃を放つ。
赤騎士の最大の攻撃技だろう。
火炎放射を食らって怯んでいる相手ならば、なす術なくやられてしまうだろう。
普通ならば――
だが
『勝利を確信し、最大の攻撃を放つ時が一番の隙が生まれる時だ』
なぜだか師匠の言葉が思い出された。
防戦一方だった女侍がこれを狙っていたかの様にも思う。
意識が集中し引き伸ばされた時間の中で、私は女侍が笑ったように思えた。
「盾を下ろすこの瞬間を待ってました。
私の最大の攻撃もお見せしましょう。
紫電一刀流・奥義『
雷を宿した神速の刀が閃光となって走る。
それはまさに炎を纏った不死鳥が、轟音鳴り響く乱雲に飛び込むような光景だった。
全てを焼き尽くす業火と、全てを切り刻む雷光が交差する。そして、互いに背を向けた格好、武器を振り抜いた状態で静止する。
先に動いたのは女侍。
ゆっくりと抜き身の刃を鞘に戻す。
……キン!
「がはっ……!!」
女侍の鍔鳴りの音と共に、赤騎士の鎧の継ぎ目という継ぎ目に当たり判定のエフェクトが表示され、体力ゲージが一気に無くなっていく。
「な、な、な、なんといい結末ぅ!!
カウンター
実況の声に歓声が湧く。
「いや、まだディーンに僅かながら体力が残っています」
解説の言葉通り、残り数ドットだが騎士に体力が残っていた。
「まだだ、まだ――」
ドシュッ!!
その騎士の顔に刀が突き刺さり、体力ゲージが0となる。
兜の
女侍には使用したスキルである【
完全決着。
画面にWinnerの文字が踊る。
女侍は人差し指を天に掲げて、勝利のポーズを決めると、大歓声が巻き起こった。
「決まったぁぁぁっ!!!
第7回・全国高校生ブレバトグランプリ優勝は京都府代表、祇園女子高等学校!!!」
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私は「凄い戦いだった……」と感嘆の声を漏らし、動画再生を止める。
高校生の頂点対決。
私の知っているブレバトとは全然違った。
炎と雷などの美麗なエフェクト。
ぶつかり合う武器と武器。
スキルという名の必殺技が飛び交う戦闘。
私が知っているのは、泥臭くと拳と拳で戦うゲームであった。
「師匠に認められて強くなったつもりでいたけど、なんか自信無くなってきたな……」
視界を擬似モニターに切り替え、ブレバトのアイコンを突く様にクリックする。
設定(ギャラリーモード)で自分のアバターを表示する。
私の姿を元に作ったアバターだけど、キリリと凛々しい表情のアバターだ。
「貴女は本当に強いの、かな?」
つんつんと指で突いてみると、アバターは一度正拳突きをして「押忍」と腰に拳を持っていき真っ直ぐ此方に視線を向けた。
アバターは私と違って、自信に満ち溢れている様に思えた。
「そうだよね。貴女の作り主の私が信じてあげなくちゃね」
そう独り言ちると、スキルを表示して、一覧から【
スキルスロットが3つ埋まるが、このスキル発動中は師匠に教えてもらった技が使えるのだ。
『どんな困難があろうと強くあれ。俺の最高の弟子「Snow」』
師匠の言葉を思い出す。
「はい。私、強くなります」
私のその言葉は力強く発せられ、部屋の天井に消えていった。
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