第40話 ラッシュの電車にご用心

彼女は、朝の通勤ラッシュの電車に、えいやっ!と、背中から体をねじ込んだ。

なんとかギリギリ、足は電車の中に入っている。

あとは、体と、荷物。


「間もなく、ドアが閉まります・・・・」


アナウンスが流れ始める。


荷物、大丈夫かしら。


何とか荷物と体を、閉まるドアの内側に入れ込もうと、彼女は俯いて荷物を確認しながら格闘していた。


と。


夢中になり過ぎてしまったのか。

気付けば、彼女の頭はドアに挟まれていた。

異物を感知したドアはほどなく再開扉したが、彼女がかけていたメガネは、無残にもグニャリと曲がってしまっていた。


その日一日、彼女は近視の目を酷使して仕事をしたという。


・・・・こんなことって、ある?

荷物も大事だけど、さ。

頭は、もっと大事だよ?

本当に、気を付けてね。

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