第33話 バーゲン会場

父は、ショッピングが好きではない。

そんな父の服を買いに、母は父を連れて、とあるバーゲン会場へ向かった。


「ああ、これもいいわね。でもこっちも・・・・ちょっと来て!」


母は、父の手を掴んで場所を移動し、品定めを続ける。


「あ、これなんか、どう?!」


そう言いながら振り返った場所にいたのは。


見知らぬ男性だったという。



「もうっ、お父さんったら、全然違う場所にいるんだもの。それに、あの人もあの人よね。黙ってついて来ないで、何とか言ったらいいのに!」


きっと、母の勢いに飲まれて何も言えなかったに違いない。


父と私は、心の中でそう思った。

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