パラサイトハーレム
むしゃくしゃマン
プロローグ
ー???
ーいつまで、この旅は続くのだろうか?
ふと目が覚めた私は、カプセルベッドの中でぼんやりと考えていた。けれど、それはこの船に乗る誰も分からない事だ。…だから、故郷を離れて幾星霜何度も考えてきたこの疑問について、私はまたいつものように考えるのを辞め、再び眠りに就こうとした。
ーその時だ。優雅な音がベッドに内蔵されたスピーカーから流れてきたのは。…嘘、これって……。
『同胞諸君に通達。…遂に、発見したぞ』
驚愕していると、スピーカーからリーダーの声が聞こえた。…その声は、歓喜に奮えていた。
すると、モニターが起動し船外の映像を映し出した。……っ。…ああ。
その映像を見た途端、気付けば私は涙を流していた。
『…ようやく、我々の宿願が果たされるのだな。
それにしても、美しい星だな…』
リーダーも涙声になりながら、私と同じ感想を口にした。多分、他の同胞達もきっと泣いている事だろう。
『…さぁ、降りようか。あの青き星-地球-へ』
…やっと、この旅が終わる。
私が清々しい気持ちになっていると、ベッドのセーフティー機能が起動するのだったー。
○
-日本某県・理化学研究所
某県にある、理化学研究所。いつもは静かなその研究所は今日は少し騒がしかった。
「ーこれが、この間県内山中に堕ちた隕石か。…サイズは普通だね」
「ええ。…おっと、来たみたいですね」
二人の女性研究員がケースに保管された隕石を見ていると、ドアのロックが解除される音が聞こえた。すると、勢い良く初老の男性が研究室に入って来た。
「皆さん、おはようございます」
『おはようございます』
「…ふむ、それが現物ですか」
「はい。一週間前、県東部の山中に落下した隕石です」
「…現場の状況は?」
所長は不安そうな様子で訪ねた。隕石の落下は、場合によって周囲に大きな被害を出すので当然の確認だろう。
そんな所長の不安を払拭するように、男性研究員がにこやかに答える。
「落下地点周辺に、大きな被害は出ていません。…えっとー」
「これです」
すると、もう一人の研究員が現場の写真を持って来て所長に渡した。
「…ふむ、場所はかなり開けた高原か。それにクレーターも浅いな。…ふう」
「それと、当日は夜だったので民間人はいませんでした」
「…まあ、あそこの山はそんなに人が入らないですしね。
ー『昨日』までは」
彼の言葉に、所長はやれやれという顔になる。
「…やはり、野次馬やメディアが集まったか。回収を担当した作業員は、随分と苦労しただろうな。…後で、何か労いの品を研究所名義で送ってくれ」
「了解です。…あ、でもー」
「どうした?」
「…あ、実は回収翌日にその会社に行った時たまたまその一人と会ったのですが、『集まったメディアや野次馬は到着時は騒ぎ立ててはいたものの、掘り出す際や運搬の時は警察の指示に従ってとても大人しく成り行きを見守っていたので、そんなに苦労はしなかった』と言っていたんです」
「…珍しい事もあるものだな。それなら、軽めな品にしておこう」
そんなやり取りをしていると、研究室の内線が鳴った。
「あ、出ます。…もしもし。…そうですか、分かなりました。ありがとございます。
-所長、解析の準備が整ったようです」
「そうか。…では、担当者はすぐに向かってくれ。残りは、昨日の作業を」
『了解しました』
「…じゃあ、行こうか」
「ええ」
先程、ケースの前で話していた二人の女性研究員が慎重かつ迅速にケースを台車に乗せ、片方が運搬し片方が道中のドアを開けて行く。
そして数分後、彼女達は解析室にいた。
「ーそれでは、解析を始めます」
ケースから出された隕石は大きな解析装置の上にセットされていて、研究員がその部屋の外から装置を起動した。すると、数秒後にパソコンのモニターに解析結果が表示されていく。…筈だった。
『……!?』
表示された結果に、その場の全員が驚いた。何故ならモニターには、『エラー』と表示されたからだ。
「……未知の物質で構成されているって事か」
「これは、凄い発見ね」
「…ええ」
「今日の担当で良かった…」
しかし、研究員達は直ぐさま歓喜の言葉を口にした。…それが、『最後の自我による感情』になるとも知らずに。
「とりあえず、すぐに所長-」
そう言い掛けた彼女は、突如発モニターから発生した激しい閃光を見て言葉を失い、その場に崩れ落ちた。
『……』
そして、他の研究員も彼女同様言葉を失いその場に倒れた。
直後、解析室のドアが開き数人の研究員が入って来た。彼らは彼女達に近付くと『何処からともなく』をチョーカーのような者を取り出し、それを彼女達の首に装着していった。…直後、不可解な事にチョーカーはまるで最初からなかったかのように首から消えていた。
『-っ!?…………』
その数秒後。彼女達はカッと開き手や足を上げたり下げたりし始めた後、互いを見る。
「『おはよう』、同胞よ」
『ああ。おはよう』
部屋に入ってきた一人が『意味深』な挨拶をすると、彼女達は口をそろえて返事をした。
「では、この調子で『目覚め』させていくとしよう」
『了解』
そして、『研究員の姿をした得体の知れない連中』は部屋を出ていった。
「ーっ!」
直後、解析室の内線が鳴る。
「…はい。…ああ、所長。…ええ」
直ぐに取った『女性研究員だった者』は、所長と話しつつとても妖しい笑みを浮かべた。
「…『凄い結果』が出ましたよ。時間があれば見に来て下さい」
すると、電話の向こうにいる所長は嬉しそうにした。…それが、罠であるとも知らずに。
「ええ。…それでは」
「さて、『チャージ』をしておきますか」
「お願い。…さて、他の皆は『デバイス』を装着して休憩時間と昼食時に『目覚め』を」
『了解』
彼女の指示に、彼女の仲間達は頷いた。
-それから一週間後、その研究所は『得体の知れない存在』の巣窟と化したのだった。
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