第30話 対峙して退治して



 そんな夜中のこと。

 "ミシ" と屋根が軋む音がした。

 

ーーー来た


 私はベッドを飛び起きる。

 暗殺者だ。

 気の所為なんかじゃない。

 魔女の手下がまた来た。

 昼の失敗を取り戻そうと捨て身で殺しに来た。


「敵だ、 また来た 」


 ヴェラディを叩き起こす。

 着替えてる暇などない。

 例の剣を革袋から取り出し鞘から抜く。


「皇子の元へ行け、」


「お前は? 」


「奴らの狙いは、あたし…… 」


 そう相残して闇に沈んだ。

 外には、居ない。

 屋根の上に人影がある。

 闇伝いに上へ。

 とはいえ、影が、途切れていればそこまでしか行けない。



「敵だ! 敵襲!」


 声をあげながらヴェラディが外を駆ける。

 近くで動く気配がある。

 それに続いて影から飛び出した。

 上手い、具合にすぐ後ろに出た。

 斬り掛かろうとして、咄嗟に感じ体験に身を伏せる。


ーーーぎゃうッ!


 それが私の頭上を飛び抜けて行く。

 着地すると "グルルルっ" と獣の唸る声がした。

 早い。

 ただの魔物のスピードではない。

 しかも、見た目からして普通ではなかった。

 死骸だ。

 私を襲ったのは魔物の死骸だ。

 逃げおおせた男もこちらに気づき身構えている。

 ヴェラディは捕まらず行けたらしい。

 私はなんとも面倒くさい事になりつつある。


「裏切り者め、精々藻掻いて死ぬといい…… 」


 男の声には覚えがある。

 魔女のお気に入りの精鋭部隊のリーダーとかだったような。


ーーーキンッ!


 投げつけてきたナイフを剣で払い落とす。

 と同時に男が踏み込んでくる。

 想定内。

 と言うか、基本的な攻撃。

 しかも、こんなエリートがこんな稚拙な攻撃をする?


ーーーウガアッ!


 斜め後方から犬が来ていた。

 私は大きく飛んで退く。

 建物の屋根に逃げる。

 犬を操作してる?

 

 とにかく、広い場所で良かった。

 逃げ道が限られる場所だったら、狙い撃ちされていただろう。

 

ーーーヒュン


 背後に人の気配がする。

 脇に転がり逃げると同時に空を切る音て人影が。

 一体何人で来てる?

 2人か3人か、それとももっと?

 隣りの屋根に飛び退る。

 当然、人影は追ってきた。

 剣が月光を反射する。

 地上からもさっきのエリートが、犬はさらに先に回り込む位置へ。


「むっ! 」


「させんっ!」


 ラッセルだ。

 地上のエリートへ斬りかかる。

 私は、身体強化で、大きく飛ぶ。

 ラッセルと、エリートの向こう側へ逃げる。

 犬が来た。

 臭い。

 腐った肉が跳ねる。

 剥がれた皮が鞭のようにしなる。

 血の混じったヨダレを撒き散らしながら突進してくる。


ーーーザブッ!


 犬の顔に何かが、突き刺さった。

 勢を殺して後ろへと犬が弾かれる。


「姫様、 後は御任せあれ! 」


 白薔薇騎士団長だ。

 槍の直撃を受け犬は再起不能らしい。

 地に突き刺さった槍が震えていた。


「ふん、教国のアマ騎士の分際で! 」


 剣を振り下ろしてくる影の男。

 団長の、剣がそれを受ける。

 私は難を逃れたらしい……


「うわっ! 」


 足元に矢が打ち込まれた。

 見ると、弓士が屋根の上に。

 本当に一体何人来てるのか。

 "団長、助太刀します!" 後から現れた騎士が影の相手をしてくれるらしい。

 私は、弓士をどうにかしないと。

 ラッセルと、エリートの方へ弓を構えるのが見えた。

 今から行っても間に合わない。


 片手を挙げ、魔法の矢を出す。

 弓が、手を離れる前に間に合うか。


「がっ! 」


 魔法は弓士に命中。

 矢は放たれるも、ヘッポコ軌道であらぬ方向へと逸れた。


 ラッセルの他にも軍国の護衛が数人で相手をしている。

 これなら、殺られる事はない。

 まだ姿を現してない残党が潜んでいるかもしれない。

 私は注意深く周りを見回す。


「あ、……… 」


 いた。

 魔女だ。

 魔女がいた。

 魔女が来てる!

 馬車の上に忘れもしない老婆の姿があった。

 何か念仏を唱えてるに違いない。

 魔法の槍を放つ。

 魔女の手前で何かに弾かれ、槍は消滅する。


「魔女よ! 魔女だあ!」


 指をさして大声で叫ぶ。

 その頃、大きな火の球が魔女の頭上高くに現れはじめた。


「まぁ! じょお! めぇ!! ここで遭ったが百年目!! 思い知れ! 女神の怒り!!! 」


 中央区第三位のシスターエレノーラ・ブレイアが叫ぶ。


「光柱! 」


 魔女の居た所に暗い空から光の注ぎ柱になった。

 ひょいと避ける魔女。

 意外と身のこなしは軽い。


「くらいな…… 」


 魔女の手の動きに反応して火の球がこちらに向けて飛んでくる。


「結界! 」


 シスターば防御魔法を展開した。

 壁に押し潰すように粉々になる火の球。

 シスターの魔法は強力だ。


「小便臭い小娘が、調子にのるんじないよ! 」


ーーーがあああっ!

ーーーごお"お"お"お"っ"!!


 地面が盛り上がる。

 2体の魔が、姿を現した。

 魔物ではなくて、人の形をしている。

 しかし、人じゃない。

 動く骸骨だ。

 しかもサイズが巨人なみの。

 剣を振り上げ、盾を構える。

 巨人騎士の骸骨だ。

 それが2体も。


 ゴチン、ゴチンと骨を、打ち合うような音をさせて歩く巨大骸骨。


「シスター加護を…… 」


 進み出るは団長以下3名の騎士。

 シスターの呪文は離れていて聞こえないが、騎士の数の光柱が空から降りる。

 騎士はその光に包まれた。

 これが加護なのだろうか。


「いくぞ、 続け! 」


「応! 」


 4人の騎士が、駆け出した。

 討ち負かした影と、エリートの亡骸を越えていく。

 何か体がキラキラを纏ってて、光の尾を引きながら走っていく。

 教国は頼もしいが、逆に恐ろしい。

 私はそう感じた。

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