100年後も受からないバイト

ニート

第1話 歯科器具のピッキング等

 人生で初めて応募したアルバイトは歯科器具メーカーの工場だった。仕事は歯科器具の在庫管理だとか品出しだとか梱包だとか検品作業の手伝いなどをするというものだと記載されていた。表計算ソフトの入力業務があるとかでパソコンにある程度なれていることと器具の運搬などに使うためフォークリフト技能講習終了資格が必要だとも書かれてあった。一応自分は両方の資格を有していると思っていたので応募サイトのボタンを押した。場所は自宅から歩いて20分前後、時給はその都市の最低賃金そのままであった。


応募から一週間ほどで連絡があった。面接をしたいというのでその際、履歴書と職務経歴書を持って来てほしいと……だがここで問題が発生した。自分には履歴書はかけても(といってもついこのあいだまでいせかいにいたのだから当然まともなものは書けないけれど)職務経歴書はさすがに書けなかった……職務経歴が全くないからである。さらに職務経歴書というものは当時持っていなかった。近所にある文房具店にも売ってないと言われてしまったた。(後程知ったことなのだが100均の履歴書セットに職務経歴書も数枚付いてるものが売られていたようだ、というかよく見たらネットで買った履歴書についていた職務経歴書も実は何枚か残っていたことにあとから気付いのだったた……)

仕方なく履歴書だけではダメかとメールで問い合わせたのだがその企業はどうしても少しでも簡素なものでも良いから職務経歴書を別にしてもってこいの一点張りであった。そのため辞退することにした。それなら落ちてないじゃないか! と突っ込まれるかもしれないが、ちゃんとその後に実はまたその会社でバイト募集した際には職務経歴書も用意した上で応募したのだが、すぐ不採用のメールが返ってきた。これが自分にとっての人生で記念すべきバイト初応募の記憶である。そんな中、アルバイト募集要項の中にバイトを始めるにあたっての簡単なレクチャー会があるというのを発見。行ってみたのだが……何のことはない、会社にあるホワイトボードと机を使って『この会社の商品について』という講義を30分ほど受けさせられた。

「以上で終わりです。何か質問は?」

「はい」

「はい、そこのあなた」

「あの……この商品ってどういうものなんですか? その……」

「ああ、これね」

そう言ってその社員はホワイトボードに商品の絵を描く……

「ふむ、これでいいですか?」

「あの、どういう風に良いのかちょっとよく分からないんですけど……」

「はぁ? どういうことですか?」

「だから『どういう風』ってどういう意味なのかさっぱりわからないんです。こんな説明では」

「…………」

さすがにこれには他の社員達も苦笑い。そして……

「はい! はい! 質問です!」

「はいどうぞ」

「この商品ってどんな物なんですか? 具体的に教えて下さい」

「はい……この商品は……」

「はい! ちょっと待って下さい!」

「……なんですか?」

「こんな説明じゃさっぱり分かりませんよ」

「……」

とうとうその社員も怒りだしてしまった。そして……

「それでは皆さん、これで終了です。後は頑張ってください」

そう言って会議室を出ていった。周りはざわついているが自分は特に何とも思わなかった。それから1時間後、自分の番となり面接官の前に座ったのだが……第一声は『君、不合格ね』だった。

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