休日出勤
岸亜里沙
休日出勤
土曜の気だるい午後、佐々木は車で仕事へ向かっていた。
突然の休日出勤なんて本当についてない。この分の休みはしっかり貰わないといけないな。
憂鬱な佐々木の気分とは裏腹に、ラジオからは陽気なリポーターの声が響いてくる。
「えー、今日私はここ横浜で人気のお店、○○○さんに来ております!やはり人気店だけあって、お店の前にはたくさんのお客さんが並んでおります。ちょっとインタビューしてみましょう!」
ああ、この先の店が今ちょうどラジオの取材を受けているのか。
仕事へ向かう佐々木にはお馴染みの店だった。
一度も入った事はなかったが、出勤時に店の前に出来ていた行列をいつも横目に眺めながら、目の前の道を車で通っていたからだ。
「今日はどちらからお越しになったのですか?」
「静岡から来ました。一度でいいから来てみたかったので」
ちっ!
こっちはこれから休日出勤だってのに、いい気なもんだ。
佐々木は舌打ちしながら聞いていたが、突然ラジオから轟音と悲鳴が聞こえてきた。
ガッシャン!!!
「きゃあああああああ」
「服部さん、どうしたんですか?」
番組の女性DJがリポーターに慌てて尋ねる。
「今、我々の所に、車が突っ込んで来て、何人かの方が、轢かれました」
何だって?事故?
あの店に車が突っ込んだのか?こんな昼間に?あんな見通しの良い所で?
佐々木は不思議に思う。
あと数百メートルで、ちょうどその店が見えてくる場所だった。
おかしい。
佐々木は辺りを見回したが、そんな雰囲気は微塵もなかった。
別の店だったのか?
いや、確かにこの先の店だと紹介されていたはずだ。
あっ!!しまった!!
ガッシャン!!!
前方の車がブレーキを掛けた事に気づかず、佐々木は思いきり追突してしまった。
その反動で歩道に乗り上げ、そのまま店の前の行列に突っ込んだのだ。
「きゃあああああああ」
「服部さん、どうしたんですか?」
「今、我々の所に、車が突っ込んで来て、何人かの方が、轢かれました」
休日出勤 岸亜里沙 @kishiarisa
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