5.異世界的身体測定しました
こうなったら、考え方を切り換えよう。起きてしまったことは仕方がない。おお勇者様、とはならなかった展開だけど一応流行りの異世界転移だ。楽しまなくちゃ勿体ない。
転移の特典的に何かチートな能力を神様からもらってるとか、ないかな。今のところ、自覚的に今までと変わったところは無さそうだけど。
「もしかしたら御伽噺的な事を聞くかもしれないんですが、聞いて良いですか?」
「うん。世界が違うと常識も違うだろうしね。どうぞ」
「この世界って、神様が実在するとか、魔王がいるとか、身体能力が数値で見えるとか、持っているスキルが分かるとか、何かありますか?」
「あー、なるほど、御伽噺的ってそういうことか。うーん、今挙がった例は全部無いね」
やっぱり無いですか。違和感なさすぎる現代風医務室にいる時点で期待はしてなかったけどさ。残念。
けど、キャレ先生は言葉を続けた。
「ただ、魔術に馴染みのない世界なら多分リツシ君には未経験だろう身体測定項目がある。せっかくここは医務室だし、基礎検査もついでにやってみようか」
「基礎検査?」
「身長体重や体内魔素量の測定に、疾患有無の検査をするんだ。学院生は毎年年度始めに実施している定期的なものだよ」
「あ、健康診断」
「そちらの世界にもあるんだね。多分同じものかな」
定期検診に含まれる内容なのか、体内魔素量測定。ってことは、増減するし健康に影響するんだな。
ちょうど迎え待ちで暇だし、お願いしよう。
「今ちょうどベッドの上だし、疾患検査からしようか。もう一度そこにうつ伏せに寝てね」
言われた通り、ゴロンと横になる。
そういえば、今は湿布と氷枕で痛みが引いてるけど、これはしばらく仰向けに寝られないかな。地味に辛い怪我したかも。
何してるのかと気になって後ろを振り返ると、キャレ先生はまたもやハンディスキャナを持って頭の天辺からゆっくり走査中だった。全身スキャンを定期検診でやるのか。これ、日本なら人間ドックとかの規模じゃないかな。簡易ツールありがたや。
「左腕と右肋骨3番目に骨折跡があるね。キレイに治ってるから問題無さそう。あと、もしかして呼吸器に持病ある? 炎症が数カ所見えるよ」
「あぁ、あります。小児喘息。しばらく発作は起きてないですけど」
「ゼンソク? 気管支の炎症による呼吸困難症かな。炎症を起こしやすいのは体質だったりするから根治が難しいんだよね。持病診断証明出すから役所の認定証受領手続きが必要って覚えておいてね。市民登録されている対象者は行政から医療費補助が出るよ」
それは何と手厚いサービス。ありがたい。医療保険に替わる制度かな。この世界で暮らすならその辺の社会制度も教わらなくちゃな。
「よし、こんなもんだね。うん、そこそこ健康。次は身長と体重を測るよ」
そんな掛け声で立ち上がって、部屋のアチコチに仕舞われていた、地球と大体仕組みが同じな医療器具を使いまくる。身長変わりなし、体重ちょっと減った、視力この世界基準だと少し悪い、聴力正常、握力もこの世界基準だと弱め、背筋力普通。
記録している紙は地球と同じ植物紙らしく、覗き込めば見慣れない文字で計測結果が書き込まれている。印刷する技術も変わりないし、表形式で管理する文化も変わりない。ただ、知らない文字が読める不思議。読めないよりは断然便利だから今は気にしないでおこう。
そして最後にお待ちかね。
「はい、これで最後。体内魔素量測定だよ。ここに座って、ここの口に大きく息を吐いてね。風船を膨らます感じで」
それは、ラッパみたいな口が付いた笛のような機械だった。
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