伝説を継ぐ者達の軌跡 - アルビオンの姫と異端の騎士達の英雄譚
小鳥遊ちよび
プロローグ―世界と物語の始まり―
プロローグー神話の始まり
これから語るのは、この世界の数多くの神話・・・・・・と呼ばれるものである。
神話とは、単なる絵空事ではなく、人々が生み出した偉大なる歴史であり、物語である。
神話とはその名のとおり、神や英雄たちが活躍する物語である。
しかし、その真実性については、様々な意見に分かれるところだろう。
神話とは、たれかが大昔の出来事を伝えるために作り上げた者であるという説もあるし、あるいはただの作り話だという見方もある。
そのどちらも間違いであり、正解なのかもしれない。
私は、どちらも正しいのだと思う。神話が持つ謎めいた魅力と奥深さは人の心を掴んで離さない。
歴史とは、神話とは、常に変化していくものだ。それは、真実ではあるものの、それは複数の人間の手で歴史を重ねるごとに話は変化し、誰かにとって都合の良い物語へと変えられていくことも、十二分にありえることだ。
現在を生きる人々にとって歴史などは実体験できる話ではないのだ。現在に、その当時を語れる人も居ないだろう。
あくまで、現在の人々が「わかった」と思い込んでいる。
こうなのだと「理解した」つもりでいる。
そう、誰かが残した記録でしか知ることができないのだ。
未来という未知と同じである。
現在を生きている人々が未来を予想はできたとしても、未来で体験する事実を誰も知らないし、知ることができないであろう。
それもまた、あくまで予想と呼ばれるものでの憶測でしかないのだ。
こうして
歴史とは、冒険である。
私たちは歴史をしり、神話を知り、それを理解しようとし、間違ったものを知り、それを理解したと錯覚している。
しかし、歴史は常に真実が歪められ、物語が可能性が高い。だからこそ、私達は過去を、真実を知り、そして現在と未来のために冒険をする必要があるのだ。真実を追い求める冒険を。
私は未来に生きる人々に伝えようと思う。
私の冒険を。
未来のために、いつの日か語り継がれるように。
人々は知らなくてはいけないのだ。この世界のことを。
自分たちが生きているこの世界がどの様なもので、どうやって今へと至るのか。
深淵のように深く暗く沈み、花弁の様に美しく、残酷に、儚く揺らめく幻影の様に、煌めく魂と心に、悲しみと別れのきに現れる暖かい雫の様に――愛すべき全ての為に、綴ろう。
かつて、世界にはただ大地のみがあり、無数の世界と星々が宙を漂っていた。しかし、その世界に一人の女神、ヴィアラトが現れた。
彼女は原初の神であり、その美しさは誰もが目を奪われるであろう大層美しい女神であった。
その瞬間から、全ての神の母とされるヴィアラトから――この世界は始まる。
ヴィアラトは多くの神を生み出し、彼らを愛し、育てた。
彼女は、神々の母であり、権威であり、王であった。
ヴィアラトは、世界を支配する神々の中で最も強力であり、知恵と力を兼ね備えた偉大なる存在だった。彼女は神々を導き、世界に平和と秩序と創造をもたらし、世界に繁栄をもたらした。
時にはその力を残酷に振るい、乱し反逆する神々を容赦なく討ち破った。その力は誰もが敬い、そして誰もが恐れた。
だが、彼女を慕う子供たちは彼女の権威に対する恐怖心から、一人の神を使いの者として選び、彼女の退位を求めた。
彼女は、使いの神の言葉に、ヴィアラトは激怒し、使いの神を殺したのだ。
使いを殺した程度ではヴィアラトの怒りを静めることはできず、子供たちはヴィアラトの怒りから戦争に巻き込まれることとなる。
――永い、神々の戦争が始まった。
ヴィアラトの怒りは収まらず、世界に恐怖が広がった。
神々は次々とヴィアラトの前に敗れ去り、彼女の怒りによって世界は混沌とした状態に陥った。
神々の神の母であるヴィアラトの大いなる力の前に子供たちは無力であった……。
しかし、そんな中、
名を、アルグム。
彼はヴィアラトに匹敵する大いなる力をもち、聖なる炎と勇気の神として讃えられた。
勇敢なるアルグムは神々を率いてヴィアラトに戦いを挑み、見事ヴィアラトを討ち取った。
アルグムはヴィアラトの体を二つに切り裂くと、一方を天に、一方を地に変えた。
彼女の乳房は山となり、その側には泉が作られ、その眼からは涙の川が生まれた。
こうして、神々の王であり、偉大な母である神ヴィアラトは、世界の大地となったのだ。
天はエリュシオンと呼ばれ神々の住む場所となり、大地には、ヴィアラトの命のカケラから生まれた生き物達が住まうようになった。
やがて神々はその数を増やし、その中でも、人は最も小さい神の一つだった。
だが、小さき神であった人は大いなる力を持つ他の神の前では弱く、神同士の争いに巻き込まれることもあった。
そこで、人々は
その後も、神々の間では争いが絶えなかった。新たな神々の王となるべきだったアルグムが倒れ、神々たちは神々の王の座を巡って一層激しい争いをはじめ、新たな永き戦争が続いた。
神々の争いが続く中、多くの神々が追放され、地底・・・・・・イラと呼ばれる場所に逃げ込むようになった。
他二つの世界の輪から外れた場所。
創世には残されていない偉大なる神々ですら踏み入れたことのない未知の世界。
大地にはすでに多くの生命と人が住んでおり、神々によって支配されているからこそ、イラにしか居場所がなかった。
イラとは、 闇が集う場所。魔境。魔界と呼ばれており、またはアースに住む人々からは地獄とも呼ばれているほどに恐れられていた場所だ。
イラには神々が追放される前から、大地では暮らせなかった生命・魔物達が集まっていた。神からは嫌われ、人からは恐れられる存在。しかし、多くの神々が魔界へと逃げ込むと、彼らはイラで力を持ち、イラを支配するようになる。
新たな支配者が現れたのだ。
それは、魔界の地の神――
彼らは、神々の争いに巻き込まれることを避けるため、イラという勢力圏での支配を徹底した。魔神たちは、イラに住むすべての者達が自分たちに従うことを脅威し、暴力と脅迫をもって支配を敷いた。まさに地獄。
こうして、ヴィアラトの死後。
神々が住む天上世界・エリュシオン。
人とさまざまな生命が住む広大な大地世界・アース。
闇の者達が住む底の世界・イラ。
この三つに世界は分かたれたのだ。
エリュシオンの神々は王の座をめぐって争い続け。
アースに住む人間たちは神になかった文明を築き、そしてまた彼らも、同族で争っていた。
イラに住む闇の者たちも魔神の王の座、魔皇帝の座を狙い、君主同士が争いを続けていた。
世界は混沌とした争いの中にあった……そんな中で争いを嫌うエリュシオンの女神イドルナードとイラの魔神アザフィリスが運命的に出会った。
エリュシオンの女神イドルナードは、美しくも優雅であり、彼女が居る場所はいつも静かで平和だった。彼女が生きる世界は、神々の争いに巻き込まれない穏やかな場所だった。彼女は争いを嫌い、人々を幸せにすることを信条としていた。
一方、イラの魔神アザフィリスは、冷酷な性格で強大な力を持っていた。彼は常に自分の力を誇示し、他者を支配することを望んでいた。彼の支配する地獄のような世界では、誰もが恐れ、彼を畏れていた。
しかし、二人が出会ってからは、彼らの心は変わった。アザフィリスはイドルナードの優しさに触れ、心の奥底にある温かさを感じた。彼女が生み出す平和に触れ、争いに苦しむことがない場所の価値を理解したのだ。
二人は愛を
名をフェリグリフ。
眩い光と底知れぬ闇に愛された神。世界に平和を齎す存在。
背は他の神よりも、魔神よりも高く、そしてどの神よりも、どの魔神よりも強い力を持ち、聡明で、勇敢であり、優しかった。
彼は、母イドルナードとともに天上世界であるエリュシオンの隅でほそぼそと暮らしていた。
だが、フェリグリフが生まれてからしばらくと立たたないうちに、エリュシオンでは、また新たな神を「王の座」に迎えようとしていた。
そう、今の神の子供たちが親を殺す神々の戦争が、また始まったのだ。
女神イドルナードは
もちろんイドルナードの子であったフェリグリフも狙われた。
アザフィリスがイラに連れて帰り守ろうとするが、神についた君主達の裏切りによりアザフィリスは殺され、フェリグリフは神に差し出された。
彼は、自分が世界に平和をもたらすために生まれたことを思い出し、戦いに身を投じた。神々の王座を争う戦いに立ち向かい、自分の力をもって世界を救うことを決意した。彼の力は強大であり、戦場で彼を目にした者たちは恐れをなし、味方となった。
だが、争いを嫌う両親に育てられた彼はあまりに優しすぎた。結局、彼は仲間であった神々にその力を恐れられたがゆえに裏切られ、最後にはエリュシオンでもなく、またイラでもないアースに封印されることになった。
エリュシオンに近づくことを許されず、イラに近寄ることも許されず、彼は大地世界アースの天と地の間たる空に浮かべられた島へ封印された。
その呪われた島は、後にアルビオンと呼ばれるようになる。
その力を振るえば、彼の前では神も魔神もすべてが無力であるのに。
彼はそれをわかっていたのかもしれない。
それか、自分の力を恐れていたのかもしれないし、彼はどこか壊れていたのかもしれない・・・・・・。
だから、彼は封印を自分から受け入れたのかもしれない。
彼のみぞ知ることだろう。
時は流れ、フェリグリフは空島に封印されたまま永い時間を過ごしていた。彼は自分が持つ強大な力をもってしても、封印をとくことは決して考え付かなかった。
彼が感じるのは、ただ退屈だけだった。
そんなある日、彼は空を見上げ。遥か上の天を
彼が見たのは、恐ろしいまでに進化した人々だった。文明を気づき、芸術に建造物まで、彼らは他の神が知らないものを生み出し続けていた。
フェリグリフは彼らの成長を見守ることで退屈を紛らわせた。何百年もの間、彼らは彼らを観察し続けた。
そして、彼が得たのは、まるで自分のこと共の様に愛おしく思う心だった。
彼が感じるこの愛情は、神々が持つ力や聡明さとは異なるものだった。彼は自分が何をしても、この愛情を失うことはなかった。
更に時は流れ、神々は何度も新たな王を迎え、世界は平和を保っていた。しかし、ある時、神々の間に何かが起こった。彼らは、自分たち以外の存在に興味を持ち始めた。
最初は、ただの好奇心だった。彼らは、人間たちがどのように暮らしているのか、どのように生きているのかを知りたがっていた。しかし、その好奇心はやがて、強い興味へと変わっていった。
そして、その時、何かが動き出した。
神々と人間たちの間に、緊張感が生まれたのだ。神々が人間たちに関心を寄せ始めたことで、人間たちもまた、神々に対する興味を持つようになった。
神々と人間たちの関係が変化し、世界は再び動き出した。
それが全ての
**************
エリュシオンの神々。
世界を創りしもの。
世界を管理するもの。
世界を守りしもの。
限りなく無限に等しい寿命を持つ存在。
不老不死ではない。
**************
ありがとうございます!
この文章を読んでワクワクしたり、面白いと思っていただけてとても嬉しいです。
もし、続きが気になるようでしたら、ぜひ次の展開もお楽しみにしていただけると嬉しいです。また、応援していただけると更に励みになりますので、よろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます