ep.31
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
「あっ、おかえりなさい!沙奈さんもようこそ!」
扉を開けて家に入るとリビングでテレビを見ていた桃華が出てくる。
沙奈にソファに座るように勧め、沙奈と桃華に紅茶を淹れて持っていく。
「ありがとう、宇津くん」
「別にいいよ。…それより、沙奈はどこで寝るんだ?」
「私の部屋で一緒に寝ることになってます!」
この短期間で一緒にお泊り会を企画するほどまで仲良くなっていたとは驚きだ。二人が仲睦まじそうに話しているのを見ていると微笑ましくなる。
「それじゃ、先風呂入らせてもらうわ」
「はーい」
ふたりきりの時間をこれ以上邪魔するのも悪いため先に風呂に入って自室へ向かう。風呂から上がった後少し様子を見てみたが、テレビを見ながら仲良さそうに喋っていた。あの調子だと今晩は夜遅くまで起きているだろう。
ベッドに腰をかけ小説を読んでいると、今日出かけた疲れた溜まっていたらしく一気に眠気が襲ってくる。小説を読むのを止め、電気を消しベッドに入るとすぐに意識は落ちて行った。
──────────────────
「どうやら、宇津さんは寝たみたいですね」
「そうみたいね」
宇津さんの部屋を覗きながらそうつぶやく私と沙奈さん。傍から見ればおかしい人と見られそうです。
「それじゃ、始めるよ!」
「待ってました!」
「「第一回宇津さん(くん)攻略会議!」」
宇津さんが眠ったのを確認して部屋へ戻って開会の宣言をします。ちなみにこれをするためだけのために沙奈さんはうちに来たと言っても過言ではありません。
「…本日の議題ですが初回なので、沙奈さんが宇津さんとどれだけ距離が縮まったか、一つとなります!」
静かな部屋にパチパチと拍手の音が響きます。
「それで、どうなったんですか?結果は?」
「…名前呼びと、手を…繋いでもらえました…!」
「おぉ…!」
名前呼びに手を繋ぐとは一日で物凄い進歩です。この攻略会議の目的は、宇津さんを振り向かせるために、私と沙奈さんが互いに協力し合うことです。
「…それと、何か今日の宇津くんめっちゃカッコ良かったんだけど、桃華ちゃんが髪の毛セットしたの?」
「…ふふ、そうなんです! でも、あそこまでカッコよくなるとは私も意外でした」
しかし、逆ナンパをされてしまったようです。宇津さんの自己評価が低かったおかげでなびくことは無かったようですが、カッコ良すぎるのも考えものです。
「それで、もう宇津さん攻略会議の議題が無くなったんですが…… 沙奈さんは他にありますか?」
「んー、私も特にないかな。…あと少し眠くなってきちゃって…」
私としたことが、買い物に行って疲れている沙奈さんのことを考えてませんでした。時間も時間ですしそろそろ寝るとしましょうか。
「それじゃあ、電気消しますね。」
「……はーい……おやすみ…」
眠そうな沙奈さんを見ているとなんだか微笑ましいです。こんなに可愛い人から言い寄られてるのに、宇津さんはなんであんなに平然としていられるんでしょうか。
宇津さんの七不思議の一つですね。
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