ep.15

「……えーと、実はそのイラスト私が描いていて、……A.K.Sは私です… 」


 え?と呆然とする。静さんがA.K.Sさん?何気なく聞いた質問にまさか、こんな答えが返ってくるなんて思いもしなかった。


「昔から絵が好きで描いてて……いつの間にか、イラストレーターになってたんですよね…」


 少し照れるように言う静さん。まさか、静さんがイラストを描いてるなんて思いもしなかった。ただのカフェの店員さんとしか思っていなかったがこんな一面があるなんて・・・


「すごいですね!まさか静さんだとは思いませんでした…… でも、いつからイラストレーターとして仕事してたんですか?今はカフェの店員さんもしてますし…」


「高校生の初めの頃…ですかね。カフェの方は余裕があるときは開店して、忙しいときはイラストの方に集中しています」


 まさか、高校一年からイラストレーターとして活躍していたとは…… 身近の人がこんなに凄い人だっただなんて。

 

 しばらくの間、静さんと身の回りのことについてカフェラテを飲みながら話す。何でイラストを描き始めたのかなど、静さんは自分のことについて教えてくれた。俺も最近桃華と暮らし始めたことなどを話す。


 時計を見る。針は昼前を差している。そろそろ家に帰らないと桃華に何か言われるなと思いそろそろお暇しますね、と一声かける。

 荷物をもって一階に降りる。お邪魔しました、とカフェから出ようとすると声をかけられた。


「 待って下さい!…あの、今日は久しぶりに楽しく話せて… で、その、連絡先交換してくれませんか…」


 顔を赤くし、少し俯いて静さんが言う。正直、逆にこちらからお願いしたいくらいだ。


「いいですよ、逆に静さんみたいな美人な方と連絡先を交換できて嬉しいくらいですよ 」


 俺がそういうと、照れたように顔を真っ赤にさせる。俺も特に意図せずに言った言葉なのだが照れられるとこっちも照れる。


 連絡先を交換して、家へと帰る。最後に静さんにまた来てくださいね、と言われて送り出された。

 昼食に間に合わせるために、早足で帰る。洗剤を買うだけで数時間かかってしまったので桃華に何か言われそうだな… なんて考え、憂鬱になる。



 家に着き、ただいまーと言って家に入る。玄関まで昼食の匂いが漂っており、リビングに入ると桃華が仁王立ちをしている。


「宇津さん。洗剤を買うだけでなんでこんなに遅くなるんですか」


 圧が凄い。桃華の後ろからゴゴゴゴ…という言葉が見えそうだ。とりあえず、謝るしかない、と思い誠心誠意を尽くして謝る。


「本当にごめん。途中で知り合いとあって、話し込んでたらいつの間にか昼前になってて…」


「今度からは連絡してください!私もスマホ貰ったんですから」


 そう言うと、食器の準備を始める。案外、あっけなく終わった事に驚き聞いてみる。


「え… それだけですか?〉


「なんですか。宇津さんはもっと怒って欲しかったんですか?」


 桃華の問にぶんぶんと頭を振ると、それを見て少し微笑むとそれなら、次から気を付けてくださいね、と言って準備を再開する。


 椅子に座り、少し遅めの昼食を桃華と食べる。


「そういえば、宇津さんから前の女性の方とは違う女性の匂いがしたんですが、彼女さんですか?」


 突然そんな事を聞いてきて、吹き出しそうになる。食べ物を飲み込んでから、彼女について弁明する。

 必死に静さんはただのカフェで知り合った人で、断じて彼女ではないと言う。すると、じゃあ、前の女性の方が…と橘さんが彼女になりそうだったのでただの友達だ、と説明する。


 すると、桃華は何故か少しほっとしたような表情を浮かべると男性の方より女性の知り合いの方が多いんですね、なんてからかってくる。


 別に、意図して女の人の知り合いを多くしてるわけじゃない、と必死に言う俺。笑いながら、からかってくる桃華を見て桃華には勝てなさそうだと思った。











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