ep.14


 俺は今昨日行ったばかりのスーパーに向かっている。何故かって?それは、俺が洗剤を買い忘れてしまったからだ。


(完全に見落としていた…… 裏面にあったのかぁ)

 

 五月も始め暖かい日差しが降り注ぐ中、とぼとぼとスーパーまでの道を歩いて、スーパーに入り、目的のものを探していく。

 

 洗剤を見つけて、桃華に何か買っていくかとお菓子コーナーへ向かう。桃華の好きそうなお菓子を探していると、周りを見ていなかったせいで人とぶつかってしまった。


「すみません」


「あ、いえ、こちらも周りを見ていませんでしたから」


 咄嗟に謝る。女性の方だったようで、よくよく見ると見覚えのある顔だった。相手もこちらを見て気づいた様であっと声を漏らしている。

 

 店員さん、と言いかけると、今は仕事をしていないので店員ではないです、とからかうように言ってくる。


「私、赤倉静あかくらしずかって言います。名前呼びでも、名字呼びでも好きなように呼んでくださいね」


 何と呼べばいいのか困っている俺を見て、自分の名前を教えてくれる静さん。


「俺の名前は瀬見矢宇津です。呼び方は…任せます」


 俺もそう返すと、分かりました。宇津くんと気さくに名前で呼んでくれる。


 会計を済ませ店を出る。静さんは結構な量を買ったようで、重そうにしていた。

 持つの手伝いますよ、と言って買ったものを持ち上げる。俺が荷物を軽々と持ち上げるのを見て、静さんは流石、男の子ですね!とおだてている。

 

 何気ない会話をしながら、カフェまで荷物を運ぶ。どうやら、静さんはうちの高校に通っていたらしく、当時は勉強の成績が学年1位だったんですよ、と得意げに言っている。流石ですね先輩と言ってみると、勉強教えましょうか後輩くんとからかうように言ってくる。


 カフェに入ると二階まで運んでほしいとのことで、カフェの奥に入って二階に上がる。二階は生活スペースになっているようで、キッチン、リビングなど必要な部屋がそろっている。

 キッチンに荷物を置くと、ここまでありがとうございます、と言って静さんがカフェラテを入れてくれる。


 ありがとうございます、と言ってリビングで少しゆっくりする。リビングには本棚があり、中には俺でも知っている有名なラノベが並んでいる。

 

「ラノベ、好きなんですか?」


「はい、好きですね。…どっちかと言うと、文章よりもイラスト目的で読んでいるんですけど……」


 どうやら、静さんはイラストが好きらしい。確かに本棚にはイラストの画集や書き方の本も入っている。よく見ると、どのラノベも画集もA.K.Sという方がイラストを描いている。


「この、A.K.Sって方のイラストが好きなんですね」


 俺が何気なしに聞いた質問に、少し照れて静さんが言う。


「……えーと、実はそのイラスト私が描いていて、……A.K.Sは私です… 」










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