第3話
「キャン、キャン」
私が羞恥心でいっぱいになっている中、可愛らしい声が聞こえてまいりました。
ゆっくりと顔から手をどけますと、ケルベルちゃんが私の足の周りで嬉しそうに飛び跳ねておりました。
「ケルベルちゃん」
私はしゃがみ込み、ケルベルちゃんを抱えます。
「あっ、ちょっとやめ、やめなさいって」
ケルベルちゃんが私の顔を舐めてきます。愛情表現だと分かるのですが、少し恥ずかしいです。でも、嬉しいから私もケルベルちゃんの頭と喉を撫でてあげます。
「くぅーーーんっ」
舐めるのを止めて、私の成すがままになるケルベルちゃん。
私はゆっくりと降ろしていいことを思いつきました。
(じゃーんっ、今日は持ってますの。ハンカチっ!!)
びしょびしょになった頬をふきふきします。
ふと、周りを見ると、みんな私のことを好意的な目、微笑ましい顔で見ています。
うーん、恥ずかしいですけれど、満足です。
「くっ・・・」
悔しがるローカス王子。
リリスも悔しがっているみたいですが、声を出しません。
(うーん、これは・・・)
「ねぇ、ローカス王子?」
「なんだっ?」
(そんなに睨まなくても・・・)
私はローカス王子の警戒心を解くために微笑みました。敵意がないアピールで、動物だと理解してくれるのですが、ローカス王子はそれすら理解してくれないようです。逆に、私に対して恨みを抱いているようです。
(うーん、恨む相手は、嘘の情報を貴方様にお伝えした方だとご理解いただければ・・・)
どうしても、ローカス王子は目先のこと、断片的な記憶しかないようで困ってしまうところです。
けれど、一国の王子。
これ以上、彼に恥をかかせるのはいけません。
「場所を変えて、お話をしましょうか」
私はローカス王子に頭を冷やしてもらうために、そう提案しました。ローカス王子も懇切丁寧にお伝えすればわかってくださる方です。あぁ、そうそう。誤解なさらないように。
ローカス王子が無能なダメ王子のように伝わっていたら、それは私の至らぬところです。
ローカス王子にも当然良いところがあります。
まず、お金払いがいいです。なので、商人の皆さんからとても喜ばれています。
次に、ポジティブです。切り替えが早いです。凹むことはその場限りですぐに自分を肯定して前を向けます。
あとは、戦が上手らしいです。
以上です。
なので、まだやり直せます。
私は「大丈夫ですよ」という目をしながら、ローカス王子の目を見つめる。すると、次第にローカス王子の呼吸も落ち着いてきて、ボルテージが下がっていくのが分かった。
だけど・・・
くいくいっ
リリスが彼の足のあたりの服を引っ張った。
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