サハラ島 編

第19話 獣人

エンペリア大陸、その北西部は獣人と呼ばれる獣に変われる人々の国家がある。


国名はハン国。


国家としてはギガール帝国の半分以下だが、国民一人、一人の戦闘力は人間より強い。


また、伴侶の絆は番という本能な繋がりがあり、一度結ばれた絆は一生壊れない。


獣人の王は獣王と呼ばれ、もっとも力がある部族から選ばれる。


現在、いまの獣王は銀狼族から選ばれた王である。


◇◇◇


「まだ見つからんか?我が息子たちは!」


王宮にて頬杖をついているのは獣王エンケル、重厚な金細工が施されたマントを纏い、だが上半身は裸、しかし、その筋骨隆々な体躯は絶対の王者の風格である。


「はは、草の者に探させすでに、ランス王国内の何処かに捕らわれているところまでわかっております。まもなく、絞り込みが済むかと」


ネズミ獣人のミケル宰相は、額の汗をハンカチで拭きながら答えた。


「人間国め、我が国民への不当な差別に飽き足らず、誘拐、搾取まで始めた挙げ句、我が愛する息子達まで拐うとは!戦争だ!」


「お待ち下さい。世界の危機にあたり、オリポス神殿からの神託によりエンペリア大陸内の国家間戦争はオリポス盟約により、禁じられております。これを破ることは、大陸全てを敵に廻す事になります。どうか、ご自重を」


「ぐぬぬ」



「あなた」


そこには、銀髪と銀狼の耳と尻尾、豪華なドレスを着た美しい貴婦人がいた。


「おお、妃よ、すまぬ、我が不甲斐ないばかりに」


「いいえ、貴方はよくやってくれています。皆も。大丈夫。子供達は皆、強い。信じましょう、必ず皆、無事に帰ると」


「うむ、うむ、そなたと我の子供達、必ず帰ると信じて待とうぞ!」




「はたして、待っているだけで子供達が戻ってきますかな?」


「「!」」

「何奴?!」


そこには、眼鏡のボサボサ頭の中年男。


「オリポス盟約など気にする必要のないほど、大陸一の強国を目指せばよいのです!その為の戦力を差し上げましょう」


ゴゴゴゴゴッ


男の後ろに巨大な影がせり上がり、赤い光が輝く。


「カーッカッカッカッ、カーッカッカッカッ、」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ようこそ我がゴーテン号へ、私が船長のマデリンだ」


うわ、ツバ広の羽根付き帽子、ジュストコール、ジレ、ボンタン、ブーツ、しかも女性船長、カッコいい!


結局、あの目に痛いショッキングピンク海賊船が本当に目的地な島、[サハラ島]に行ってくれる事になり、僕らは乗船した。


ちなみに海賊船は、ただのファッションだって。


「カル君、リム君、似合うよ」


カル「勘弁して」

リム「なんでこんな」

赤髪仮面「………………」


ええっと、それで僕とタンちゃん(獣化)を除く三人は船員が不足してるって事で船員服に着替えたんだけど、ショッキングピンクの横ジマシャツってなんか可笑しい。


あれ!?船員の一人が赤髪仮面に寄って話してる。

なんだ、知り合いか?ん?あの男の人、僕、スッゴク知ってる気がするけど、ん~、見なかった事にしておこう、うん。


それで僕とタンちゃん(獣化して付いてきた)だけ船長室に案内され、待つように言われた。


カチャッ「いらっしゃい、待たせたわね」


「いえ、大丈夫でっ?!」


後ろのドアが開いたので振り向こうとしたら、いきなり抱きつかれた。


ワウッ


タンちゃんが吠えたけど、いやな感じはない。


柔らかい、胸が背中に当たってる、Cカップ、いやDカップ、また、大きくなったんだ、あ、涙が


「………………」

「………………」


しばらくされるがままにしていた僕、ようやく解放されて振り向いたら、仮面?!


「本当に久しぶり、ずっと会いたかった。仮面ガール三号よ、これから宜しくね」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はいよ、嬢ちゃん、三頭身マリンちゃん、これで最後だ。嬢ちゃんは運がいい」


ミン「ありがと」


ロープ男「こっちだ、奥の食堂だ」


ロープ男達は市場街を通り、先にある路地にある食堂に入っていく。


メイサ達もそのままついていく。


かっぷくがいい店の女将が応対する。


「いらっしゃい」


ロープ男「日替わりA定食だ」


女将「あんた、日替わりって、うちは一種類だけだよ」


ロープ男「なら日替わりB定食だ」


女将「!あんた」


女将が亭主に振り返る。


亭主「おう、日替わりB五つな、奥にいきな!」


剥げた店主が、奥から顔を出して返事する。


私達は、ほどほどに満席な店内から奥の部屋に向かう。

地下に向かう階段があり、降りると比較的大きな部屋に入る。


そこでロープ男達はロープを取った。

現れたのは、頭から生える耳。


メイサ「獣人……!」


男達はその場でミンに対して跪く、ミンもロープを取った。


獣人男A「やはり!ミン王女さま、よくご無事で」


メイサ「?!王女?ミン、あなた王女さまなの?!」


ミン「ごめんなさい、メイサさん、隠していました。」


獣人男C「貴様、たかが人間の分際でミン様に対して無礼であろう、そこに跪け!」


獣人男達がメイサに殺気を放つ。

メイサ「ひっ?!」、後退るメイサ。


ミン「やめなさい!この人は私を助けてくれた人達の仲間なの」


獣人男A「そうだったんですか、てっきりミン様を奴隷として扱う人間かと」


獣人男B「どちらにしても人間は信用ならん、このままここで殺」


バンッ、ミンが机を叩き、男達を睨む。


ミン「もし、この方に何かあれば私はお前達を許さない!」


男達はたじろぎ、伏した。


「我ら三名、決してこの方に手出しは致しません」


ミン「ごめんなさい、メイサさん」


メイサ「だ、大丈夫よ、驚いただけよ」


ミンは、男達に向き直る。


ミン「それで、ダンケ兄さんの行方はわかる?」


男達「我らもまだ、捜索中で、?そういえばタン王子はご一緒では?」


ミン「番と一緒よ」


おお!、男達からどよめきがでる。


メイサはなんの事か?分からない。


獣人男A「それで、番様はどのような方なのです?」


ミンは一呼吸置いてから言った。




「聖女さまなの」

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