ランス王国 編

第14話 ランス王国へ

「なんでもこのメディ姉にまかせなさい。みんな、治してやるんだから!」


「無理しないで、メディねえさん。ぼくは貴女が心配だよ」


「なーにいっちゃってるかな、この坊っちゃんは?わたしが心配?ませた子ね」


「坊っちゃんじゃない!もうぼくは十五歳、立派な大人だ、だから」


「あら、早いものね。そうか、成人したの。じゃ、認めてあげる、ブラックジュニア皇子?」


「だからもう力を使わないで!それ以上は倒れるから、ぼくのかあさまみたいに!」


「大丈夫よ、イザとなったらヤーマダが運んでくれるもの。そういえば、貴方のかあさまには随分会ってないわ、変わってないのよね?」


「うん、ほとんど変わらないかな?もう、かあさまの方が子供に見えるけど」


「そう、あの人には若い頃にお世話になったから、また会いに行きたいわ。ヤーマダも会いたいだろうし」


「何時も父様達から逃げ回っているから、難しいかな?でもメディねえさんが会いたいっていえば待っててくれるかも?」


「じゃあ、ちゃっちゃっと皆を助けて会いにいくよ!じゃあね」


「待ってよ、だから無理しないでって、ぼくは貴女の事が………………………」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ガバッ


「……な、に、今の?って、メディ姉って第三部のヒロインのサポートキャラ?!てっ?」


あれ?僕はどうしたっけ、んん??仮面が机に置いてある。

その横に僕のロープと長袖、長ズボンが畳んである。

じゃあ、僕が今着ているのは何?


恐る恐る下を見る。

スケスケで下着がまる見えのネグリジェ………


バタンッ、突然、部屋のドアが開いてスキンヘッドが光る。


ラル「おい、聖女さま、起きた………か?!」


「ギャーッ?!入ってくんな!あっちいけー!」


ガン、カン、コン、パン


ラル「あ?い……や、その、見て悪かったって!うわ、物、投げんな!わかった、出る、出てく!」


バタンッ、ラルが頭を隠しながら部屋から出て行った。


ノックもしないなんて、筋肉野蛮人め。


とにかくメディちゃんを助けないと、あれ?なんか他にも重大な事を思い出したような?あれ?なんだっけ??


ま、いいか、思い出せないのは大したことじゃないって事で。


「そうだ、男爵とカリスさんは?」


僕があわてて着替えていると、


コンッコンッ「聖女さま、カリスです」


「あ、はい、どうぞ」


カチャッ


そこにはすこしやつれた涙目のカリスさんと、髪の毛がやや焦げたケプラさんがいた。


「あ、あの?!」


ギュッ


「!……………」

「…………………」


僕は今、カリスさんに抱きしめられている。

温かいけど、震えてる。


二人とも助かったけど、それと同時に誘拐されたメディちゃんへの心配と悔しさ、いろんな感情が入り交じった、そんな。


「夫を、私を、助けてくれてありがとうございました」


「いえ、まだまだです」


「娘の事は国にお願いするつもりです」


「!?それはどういう?」


カリスさんが後ろのケプラ男爵を確認する。

無言で頷いた男爵が口を開く。


「領兵が追跡したところ、盗賊は魔の森の端を東周りに抜け隣国ランス王国に入った事がわかりました。これ以上領兵を差し向ける事は越権行為になります。あとは国を通じランス王国に娘の救出をお願いするしかありません」


「そんな、だって自分の娘ですよ?!なんっ?!」


男爵が、カリスさんが俯く、カリスさんが下口唇をギュッと噛んだ。

ああ、貴族としての矜持と領主の責務か、なら!


僕は仮面を着けて二人に言った。


「正義の仮面マンの出番です」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



◆ギガール帝国/ブラック執務室


「まさか、マリンが俺のところを訪問するなんてな、婚前旅行にしてはシンの姿が見えないが?」


「なにを馬鹿な事を、女神神殿から直で来たのよ」


「ああ、公国は女神が国教だったな」


マリンは女神神殿での手掛かりを求めて、ブラックのところを訪れていた。

ソファに座る二人の後ろには、それぞれの従者が立つ。


マデリン「………………」


ベクター「………………」


「それで?皇太子さま、グリンの手紙の事はどうするの?」


「?何の事だ?!」


「だから、リンちゃんが」


マデリン「姫さま」


「?どうしたの」


マデリンはベクターを睨んだ。


ベクター「?!」


「なんだ?」


次の瞬間、マデリンが消えた。


「「「?!」」」



ドサッ


突然、気を失なった黒ずくめな男とマデリンが現れる。


「「「!!」」」


ベクター「こ、これは帝国の影?!」


マデリン「これが帝国の持て成しか?」


マデリンがベクターの襟首をつかむ。


ベクター「うっぐ!」


「止めなさい、マデリン」


マデリン「はい、姫さま」


マデリンは元の位置に瞬時に戻る。


「宰相か」


ブラックは忌々しげに言った。


「どういうこと?」


ベクター「我々は帝国宰相に監視されていたようです」


ベクターが襟首を押さえながら立ち上がった。


「すまん、帝国内の事だ、今はまだ言えない」


「相変わらず秘密が多いわね、皇太子殿下?」


マリンは髪をかきあげながら言う。


「フンッ、それで?何があった?」


「グリンから魔道レターが届いた、これよ」


手渡された手紙を険しい顔で読んでいたブラックだったが、途中から優しい顔に変わっていた。


「貴方も彼女の事になると、そんな顔が出来るのね」


「リンが生きている」


ブラックは、手紙を愛おしそうに握りしめた。


「ごめんなさい、浸ってるとこ悪いけど調べてほしい事があるのよ」


「なんだ」


「女神神殿の副神殿長が帝国を訪問した前後の状況と辺境の帝国貴族ケプラ▪フォン▪レブンに面談したい」


コンッコンッ、ドアをノックする音がする。


ベクター「なにか!」


衛兵「さきほどレブン男爵から連絡があり、娘がランス王国方面に誘拐されたので助けてほしいとの事です」


マリンはおもわず立ち上がった。


「なんですって!」













































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