第2話 世界を救えて彼女を救えなかった日

ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン



天空に巨大な魔法陣が拡がり、中からさらに巨大な砂時計が現れた。


眼下にランス王国王都が見えるここ、リーゼの丘にその砂時計を背に灰色なロープを身に纏い、高笑いを上げる眼鏡のボサボサ頭の中年男。


名はボルテック、大陸一の魔力を持ちながら悪に落ちた魔術師だ。


「カーッカーッカーッカーッ、この❪人造賢者の石❫のパワーですでに究極破壊魔法は発動した!この砂が全て下に落ちた時、ここから世界破壊が始まる。砂が落ちる前に砂時計を破壊すれば魔法は止められるが、砂時計は敵意ある者は近づいた瞬間、破壊波動で粉微塵だ!どうするね?英雄達よ、カーッカーッカーッカーッ」



そして対峙するのは、オリポス神に選ばれた❪星の力❫を持つ五人の英雄と従者が一人。


世界に危機が訪れる時、星霊の加護の印を身体に持つ五人の英雄が現れる。


それがファイブスターブレイカーズといわれる者達だ。


だが、そんな英雄達の命運は砂時計の破壊波動の前に風前の灯火だった。


英雄の一人、エンポリア公国ピンクマリン第一王女がその美貌を歪ませ、輝くピンクの髪を振り乱しながら周りの木々が砂に変わっていくのを見て叫ぶ。


「きゃぁ、圧されてる!このままじゃ結界が破られる、砂にされちゃう?!」


英雄が一人、真っ赤な赤髪、青い瞳のイケメンのランス王国レッド第二王子が持つ金の槍の刃がねが赤く燃えだす。


「マリン、俺の星魔法レッドランスであれを燃やしてやる!俺に結界を付与してくれ!ブラック、あそこまでの橋渡しをたのむ!」


「まて、よし、いいぞ、今、橋を掛ける!」


黒髪、グリーンの瞳な浅黒い肌のイケメンの隣国ギガール帝国ブラック皇太子が手を翳すと、黒い霧が橋の形になって砂時計に繋がっていく。


「ムリよ!もう、そんな余力無いわ!」


マリンは呼吸が荒くなっており、片膝をついた。


緑髪、青い瞳なイケメンのグリン第三王子が手を翳すと皆の前に大きい木々が現れるが、どんどん砂になっていく。


「気休めかもしれないけど、これでどう?」


「あ、圧が、いいわ!レッド、付与した、今よ!」


グリンのお陰で破壊波動に直接さらされていたマリンの結界に余力が生じ、レッドに結界を付与する事が出来た。


「よし、行く!」


レッドが走りだし、ブラックが作った黒い橋を渡っていく。


「カーッカーッカーッカーッ、私が黙って見送ると?!」


「それはこっちのセリフだ!」


金髪な青い瞳のイケメンなイエル第四王子が魔法剣を振るって雷撃を放つ。


あわてて避けるボルテック。


「カーッ、不意打ちとは卑怯なり。」


その間に、レッドが砂時計に攻撃をする。


ガギィンッ、が、砂時計に届く前に何かにあたって弾かれてしまう。


「ぐっ?!」


「「「「レッド!」」」」


「レッド様!」


レッドは、四人の英雄と従者シンがいる所まで飛ばされてしまった。


「カーッカーッカーッカーッ、結界魔法が英雄だけの魔法なわけ無いでしょう?さあ、世界の最後です。そのまま世界と共に逝きなさい。世界が滅んだら私が美しい新世界を作って上げますね、カーッカーッカーッカーッ、ん?」


ボルテックが勝利を確信し、英雄達が膝をついた時、英雄達の後ろに黒髪の美少女が立っていた。



「みんな、大丈夫だよ、僕の力をあげるから」



少女はそう言って左胸に手をあてた。


「「「「リン??!」」」」


「リンちゃん!」


「リン様?!」


途端、少女が虹色に輝き英雄達を包んでいく。


「ば、ばかな、そんなばかな、その輝きは真の賢者の石の輝き、そしてお前のその顔は?!」


動揺するボルテックの前で英雄達が立ち上がる。


レッド「力が漲る?何をすればいいか分かる!」


ブラック「リン、くそ、危険だから王都を出ろって言っておいたのに」


グリン「この力が何なのか、後で教えて貰いますよ、リン!」


イエル「リン」


マリン「リンちゃんがくれたこの力を無駄にしないで!みんな、砂時計に手を向けて!」


四人の英雄が全員、その手を砂時計に向けた。


その瞬間、全員の星魔法の輝きが手から迸り、白い一つの光線となって砂時計に吸い込まれていく。


ガッガッガッドカンッ


鋭い閃光、激しい破壊音、あたりは濃い煙に包まれた。


間もなく煙が晴れた後には、砂時計は無く、ボルテックも居なかった。


レッド「やった、やったぞ、破壊魔法を食い止めた、リン!全ては君のおかげ」



ゴフッ



喜びを震わせて最愛の少女に振り向いたレッドが見たものは、口から大量の吐血をして崩れ落ちる少女の姿だった。


「「「「リン?!!!」」」」


「いやぁっ?!、リンちゃん!!」


「リン様!」




その日、五人の英雄達は世界を救った。

その日、五人の英雄達は最愛の少女を救えなかった。


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