役目を終えた転生ヒロインは元男♂につき、隠遁してスローライフ を目指します。世界を救うヒーロー 達には絶対近づかない!逆ハーレムはお断りです!!(改訂版)
無限飛行
戦いの後 編
第1話 役目を終えました。
❪ファイブスターブレイカーズ❫
これは世界を破壊し新世界をつくろうとする悪の魔術師を倒すべく、立ち上がった星の力を持つ五人の英雄達の物語である。
シリーズ三部作があり、それぞれにヒロインがいる。
シリーズ最終三部作目は、ヒーロー、ヒロイン共に一部、二部作の英雄達の子供が主役になる。
基本、各作品ともハッピーエンドなのだが、一作目については多くのファンから異論がある。
なぜなら、第一部目の後半から二部ヒロインが合流しダブルヒロインとなり、終盤に二部ヒロインがメインヒロインに昇格して第二部に繋がるのだが、一部ヒロインが皆を救う為に自分の命の力を使うのだ。
一部ヒロインは悪の魔術師の亡き師匠の娘だったが、実は師匠が作った人造生命ホムンクルスだっだ。
そして、その心臓が悪の魔術師が世界破壊の為に必要な(賢者の石)といわれるエネルギー鉱石であり、英雄達の星の力を増幅▪解放するものでもあったのだ。
星の力を解放した英雄達は悪の魔術師を倒すまでは至らなかったが見事その野望を打ち砕き、魔術師を撃退する事に成功する。
だが、それは一部ヒロインの死によって成されたものであり、あまりに大きい犠牲だった。
深い悲しみの中、英雄達は一部ヒロインに必ず悪の魔術師を倒す事を誓い、第二部に続くのだ。
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ここはとある隠し洞窟、突き当たりに祭壇があり、祭壇前には一つの棺がある。
突然に棺のフタがパーンッと勢いよくはねあがる。
中から一人の人物が起き上がった。
艶のある流れるような黒髪は腰下まであり、その大きめの瞳は空のように青く愛らしい。
そして、透き通るような白い肌にまだ幼さを感じつつそれでいて凛とした佇まいをみせる非の打ち所がない美少女がそこにいた。
少女は、は~っと大きくため息を吐いたあと、モソモソと棺から出てきた。
長めのロングスカートのドレスの為、棺から出るには少々時間がかかったようだ。
「…やっと解放された」
少女はボソッと呟いた後、棺の中を物色する。
ガサ、ゴソ、と暫く探してお目当てが見つかった。
「あった、最後に着ていた服とロープ、お!宝石も幾つかある、ラッキー!換金して生活費だね。ん、金貨もある?!こっちも地獄の沙汰もなんとかって言葉、あったっけ?」
間もなく、長袖、長ズボンにブーツに着替えて金貨や宝石をいれたリュックを背負う。
「しかし、大の男が四人も揃ってわんわん泣くってヤバイワー、あんなに見苦しいんだ。涙、顔にかけないでほしい。マリンちゃんの泣き顔はさすがにこたえたな、でもかわいかったからつい起き上がって抱きしめたくなりそうだった」
少女はロープを着込むと、ゆっくり洞窟の出口に歩き始める。
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僕の名前はリンレイ、前世は 佐藤 麟太郎 という二十六歳、建材メーカー営業部係長の日本人男性だった。
前世の記憶を思い出したのは六歳の時。
師匠から自分がホムンクルスで、師匠と血の繋がりがない事を知らされたショックで倒れ、途端に大量の佐藤麟太郎の記憶が頭の中を駆け巡った。
その時、完全に自我も佐藤麟太郎に代わってしまい、六歳まで生きたリンレイの記憶も全く思い出せなくなっていた。
そして自分の名前や住んでいた国名がランス王国、その第二王子にしてファイブスターの一人レッド▪フォン▪ランスの名前を聞いた時、ここが自分が好きだった人気小説❪ファイブスターブレイカーズ❫の世界であることを悟った。
「ネット小説流行りの異世界転生とか?あれ?!、残務整理後に終電でアパートに帰ってから頭が痛くなって頭痛薬を飲んで、ん、その後の記憶がないや。あの時、僕は死んだのか……」
じっと手を見つめる、白くて小さい、周りの家具がやたら大きく感じる。
「手、ちっちゃ!背が低い、髪が長、声が高い?ワンピース!恥ずかしい、女の子、しかも、子ども?!」
ふと、奥の部屋から音がする、さっき話しをした師匠という真っ白な長いひげの爺さんだろう。
「は?!そうだ、居なくなるなら得意先案件の引き継ぎを、会社連中に迷惑かけるなぁ。親孝行できなかったな、兄貴、頼んだ。いや、家族はもう、居なかったな。あ、彼女?仕事忙しくて居なかったわ。息子は未使用のまま逝ったのか、すまん、げ、秘蔵のDVDがヤバい!今からアパートに戻れば間に合うか?大家に見られ、いや、先に警察関係者に見られる。くそ、とりあえず連絡を。あれ!?ス、スマホが無い、いつ落とし」
「さっきからなにをやっとるんじゃ」
「へっ?」
いつのまにか部屋の入り口に師匠が呆れ顔で立っていた。
まあ、独り言を言いながら一人、部屋の中でアワアワしている幼女、ないな。
「ちょーと、お花を摘みに行きたく、オホホホッどちらにいけば?」
「お花?廁のこのことか?その場所まで忘れてしまったのかの、その廊下の突き当たりじゃ」
「ありがとーございます」
ちなみに師匠には六歳以前の記憶喪失と転生前の記憶があることを伝えてある。
こうなった以上、保護者である師匠には信頼できる味方になってもらう必要があるからだ。
まあ、初回トイレもヤバいことで悲鳴を上げたが。
そんなことで師匠には小説のあらすじと、八年後に自分が死ぬ運命にあることなど、前世の記憶と合わせて伝えた。
最初は半信半疑だった師匠だが、仲違いして別れた悪の魔術師こと、ボルテックの事を自分が知っていたことで未来予知の能力では?とかってな解釈で理解した様子だった。
そして、なんと僕が死なないようにと賢者の石をもう一つ、右胸に手術施行をしてくれた。
よって僕は賢者の石が二つあり、一つは訓練が必要だが任意にその力を解放できるようになったのだ。
その後、師匠の寿命は分かっていたが自分は最後まで伝えられなかった。
本人は察して聞いてこず、ただひたすら僕が一人で生きていけるようにと、あらゆる知識と生き残る術を教えてくれた。
そして、小説の通りに僕が前世の記憶があることを伝えた日から丁度、五年後、師匠は息を引き取った。
老衰である。
享年二百三十歳、よくわからない年齢だがファンタジーな世界らしくエルフのクオーターだったらしい。
自分は成人(この世界の成人は十五歳)年齢で不老になるらしい。
寿命はわからないそうだ、賢者の石の力が有る限り死ねないということなんだとか。
ちなみに子どもは産めるらしい、産まないがな、絶対!
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その後、世界が破壊されたら念願のスローライフが出来なくなるので師匠からもらったあらゆる知識や情報を使い、四人の英雄達と次期ヒロインのマリンちゃんにいろいろあって協力し、悪の魔術師ボルテックを追い詰め、世界の破壊を阻止したのだ。
もちろん、英雄達とは適度な距離感(ここ重要)を保ってのこと、時々、やたらしつこく密着されたりしたがなんとか回避できた。
そして冒頭の洞窟を出た日から数日を費やし、かつて師匠が隠遁暮らしをしていた魔の森の最奥に到着した。
この地は狂暴な魔獣が多く、屈強な冒険者もそうは入って来られない。
さらに、この地には強力な魔獣避けが施されており安心安全だ。
さあ、世界の危機はみんなに任せてスローライフを満喫するぞぅ、ヒャッホゥーッ!
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